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パーティーどころかギルドを追放されたので、次の仕事は魔法嫌いな四姉妹の魔法の先生をすることにしました。  作者: 春野
第五章 学院都市と夏期講習

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158.冒険者と教授

「……で、私はどこに連れていかれるの?」


 私とサクラ、ウタさんを乗せた馬車は、学院都市を出発して北へ北へと進んでいた。


 そもそも学院都市が王国でもかなり北側に位置しているので、これ以上北へ行っても観光地や賑わっている街はない。

 国境付近まで行けば城砦があるけれど、それ以外は街と呼べるようなところもない。

この辺りはほとんど人が住んでいないので、宿がある村があるかどうか、といったところである。


 実際のところ、窓の外に見えるのは山やら森やらといった自然だけだった。

 それだけに少し不安になる。


「あ~、やっぱり気になる?」

「そりゃあね」


 私に向き合うように正面の座席で足を組んでいるサクラが「ふふっ」と笑みを浮かべながら答える。


「クロエが今から行くのは~~…………」


 もったいぶるように語尾を伸ばして告げた。


「この先にある渓谷ですっ!☆」

「渓谷?」


 ベルさん救出作戦の際に訪れた「人喰いの森」のような鬱蒼した場所を思い描いていたので少し意外だった。


「そこの川を水飲み場にしている魔物がいてね。そいつが目当てなの」

「けっこう強いって言ってたやつだよね?」

「そそそ。でもクロエなら~、ちょちょいのちょいって感じだと思うから、期待してるぞ?☆」

「……その期待に応えられるかはわからないけど、頑張るよ」

 

 サクラのことだから、ちゃんと私の力量を理解したうえで頼ってくれているはず。

 

 とはいえ、サクラがわざわざ王都を訪れて私にお願いをするくらいなので、簡単な相手でないのは間違いない。そんな魔物なら、それこそサクラがちょちょいのちょいでやっつけている。


 今でこそ研究者のサクラだけど、以前は強い冒険者だった。

 ブランクがあるにしても、サクラなら大体の魔物は一人で倒せると思う。でも、そうしなかったということは、死ぬまではいかなくとも研究の進捗に支障が出る怪我を負ってしまう可能性があると考えたということだろう。

 

 そうなると、今から戦うことになる魔物は。ベルさん救出作戦の時にカタリナさんとアリエルさんが戦った人喰いくらいは覚悟しておいた方がいいかもしれない。


 ってことは……。

 呑気に眠っているシャルを叩き起こして少し本気をだすことになるやも……。


 寝起きのシャルは不機嫌だから、火力、魔力の調整が大変なんだよなぁ。

 周りは森だし、困ったなぁ……と考えてふと思う。


 そういえば、私はただただ魔物を倒すのを依頼されたんじゃなかった。

 研究に使いたいとサクラは言っていた。


「魔物を研究に使うんだったら火力は抑えたほうがいいよね?」

「うーん、どっちでもいいかな?」

「そうなの?」

「私が欲しいのはそいつの中にあるの。だから消し炭にさえならなきゃ、外側は黒焦げにしてもらっても大丈夫よん」


 右手でオッケーサインを出すサクラだけど、表情が苦笑に変わる。


「そもそも今、そいつがいるかわからないんだけど」

「え、わかんないの?」


 たしかに水飲み場と言われたときに少し違和感はあった。

 その魔物が水を飲む必要がなければ、水飲み場に現れることはないだろう。

 魔物の喉が渇くときなんて知らないし、それに水飲み場が今から行くところ一か所だけとも限らない。


 だけどサクラのことだから、何か確証があるのかと思っていたのだけど……。


「いるかどうかは魔物次第ね。まぁ、今日いなくても明日出直しましょう」

「サクラがそう言うなら、私はそれでもいいけど」


 きっとサクラなりの考えがあるのだろう。

 それに四姉妹が夏期講習を受けている間はどうせ暇なので、サクラの研究を手伝う時間はたっぷりある。

 講習の期間は一ヶ月くらいあるし、一度くらいはお目当ての魔物に出会うことはできるだろう。


 でも、どうせなら魔物の住処がわかっているのなら直接行くとか、どこにいるかわからなくても森の中を探すとか、もう少し出会う努力をしてもいいのに、と思う。


 と、サクラの横で話を聞いていたウタさんが「あの」と小さく手を上げて、


「先生。せっかくクロエさんに来ていただいているんですから、水飲み場にいなかったら森の奥まで行って今日のうちに見つけたほうがいいんじゃ……」

「それはダメよ、ウタちゃん」


 両手の人差し指でバツを作って、サクラが首を横に振る。


「ですがサクラ先生……」

「あなたの気持ちは嬉しいけど、前にも言ったでしょう? この辺りの森には、私たちの目的の魔物以外にもたくさん強い魔物がいるの。私は立場的に、あなたや御者さんを危険な目に合わせられないから、わかって?」

「……はい、すみません」

「謝らなくてもいいのよ。あなただけじゃなくて、私だって無茶をして怪我したくないし」


 ウタさんに笑顔を向けるサクラ。だが、短くため息を吐いと乾いた笑みに変わった。


「まぁ、私は死んだら、喜ぶ奴らは大勢いるでしょうけど」

「先生……そんなこと」

「残念ながらあるのよねぇ、これが。ね、クロエ」

「え、私に同意を求めるの!?」

「だってギルドでもあるでしょ?」


 たしかに……。

 学院都市のことは知らないけど、ギルドではないとはいえない。哀しいことに、それが現実だ。


「ない……とは言えないかも」

「そうよねそうよね! って、ごめんなさい、なんだか暗い話になっちゃって」

「いや、私はいいけど。学院都市にもあるのは、少し意外だったけど」

「まぁ、とにかく。そういう奴らを黙らせるためにも成果は必要。てことでクロエ。魔物退治をしくよろ~☆」

「いたら、の話だけどね」

「もうっ、クロエもウタちゃんも心配はノンノンよ☆」


 ちっちっちっとサクラは人差し指を顔の前でふりふりすると、口角を上げる。


「——私、こういうときの『引き』は強いほうなの」

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