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庶民勇者は廃棄されました  作者: ぎあまん


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256 新米伯爵はやり放題 16


「なんでミリーナリナがいる?」

「物資を運んで来ましたから」

「だから、なんで?」


 ミリーナリナは軍人ではない。

 ここにいる必要はない人物だ。


「これ、祖父からの手紙です」


 後ろで誰かがうるさいがさらりと無視し俺はミリーナリナの祖父、アーゲンティル・ランダルス公爵の手紙を読む。


「……ふむ」


 読んですぐに焼却し、俺はミリーナリナを見る。


「内容は知ってるのか?」

「はい」

「じゃあ、腹は決まってるんだな」

「はい」

「そうか」

「何を話しているのですか⁉」


 無視されていたシアンリーがついに爆発する。


「商売の話だよ」

「商売……ああ」


 俺がここにいる経緯は知っているようだ。


「で? 後どれぐらいだ?」

「ひと月ほどです」

「かかるなぁ」

「仕方ありません。こんなご時世だから」


 にこりと笑うミリーナリナの意外な腹の黒さに舌を巻きつつ、俺は届いた物資に目をやる。

 その多くは糧食やこの砦で生活できるようにする物資などだ。

 兵士たちがほっとした声で物資の中にあったテントを設営している。

 いままで地面の上で雑魚寝だったからな。一撃離脱戦法を想定した部隊編成だったから携行していたのは簡単な野営具とわずかな携行食だけだったのだ。

 この砦も壁と屋根があるだけみたいな作りで個人の空間というものはない。俺やシアンリーが寝る場所だって用意していない。作ろうと思えば作れたが、作らなかった。

 垂れ流しにされるのは嫌だからトイレだけは作ったが。


「それにしても、さっきのはなんだったんですか?」

「それよ! さっきのはなに⁉」


 ミリーナリナの暢気な質問にシアンリーが飛びつく。


「まぁ……魔法?」


 創世級武器です、なんて言ったらどんな反応をされるかわからない。

 かといってこの反応だと魔法だといっても驚かれる。


「《勇者》だからな」

「嘘よそんなの、兄さんはそんなに……」


 ああ、そういえばシアンリーはザルドゥルの妹か。


「ばっかお前、兄を信じろよ」

「そんなの信じたら、国の危機がもっと深刻になるじゃない!」


 それは一理ある。


「まぁでも、向こうには《王》も二人いるぞ?」

「言わないで!?」

「ルナーク様、あまり士気を下げるようなことは」


 耳を塞いで悲鳴を上げるシアンリーを同情したのか、ミリーナリナに諫められてしまった。


「へいへい」


 それなら、少しは景気のいい話をしようか。


「さて、こっちの準備は済んだぞ」


 そう伝えるとミリーナリナは花のような笑顔を浮かべた。それを見ていた兵士たちが和んでいる。


「わかりました。では外の部隊への伝令はこちらで」

「ああ、頼む」

「あっ、ミリーナリナ、送るよ」


 話しかける機を伺っていたシビリスがミリーナリナを追いかける。

 それをシアンリーが面白くない顔で睨んだ。


「なぁ、姫さん」

「なによ?」

「あれのどこがいいんだ?」

「顔」


 まさかの即答だった。

 顔が良いのは否定しない。その顔でいろいろとやらかしているからな。


「それに、タラリリカ王国でなにをやってここに来ることになったかは聞いたわ」

「へぇ……」

「彼は最低な人間だったかもしれない。だけどいまは心を入れ替えてがんばっているわ。それは、がんばらない人間よりはるかにマシでしょ?」

「なるほど」


 そう言われればそうかもしれない。


「顔と中身が伴っているんだから好きにならない理由はないわ」

「まっ、両想いとならないのが悲しいとこだな」

「うるさい!」


 脛を蹴られた。

 そしてどうもあちらも片思いのようで、シビリスがしょんぼりと帰ってきた。

 そんな姿が気に入らず、シアンリーはイライラと去っていく。

 そしてなぜかシビリスが俺の前に残った。


「兄貴」

「うん?」


 なんでこいつが兄貴と言うのかも謎だが。


「ミリーナリナのこと、どう思ってます?」

「うん?」

「いや、異性として」

「ふむ……」


 これは、なんか言われたんだろうな。


「どうっすか? やっぱ美人ですよね? 好きですか? どうなんですか?」

「まぁ、美人だな」

「ぐふぅっ!」

「やらしてくれるならやりたいな」

「ほぐふっ!」

「だが、俺から口説く気もあんまりないな」

「えっ⁉」


 地面の下にまで落ち込みそうだったシビリスがぱっと顔を上げる。

 なにかを期待しているが、こいつの期待なんて知らん。


「そ、それはなぜ?」

「うーん……」


 乳……がな。

 清楚なお嬢様って感じの乳がな。


「それに俺、一人に決める気がないからな。相手が遊びを受け入れる気がないとやらないぞ」

「なっ!」

「満足したか?」

「う……うっす!」


 なにを納得したのかシビリスはぱあっと表情を明るくして去っていく。

 なんでそれを聞いてきたのか……まぁ察することはできるのだが、ミリーナリナが「遊びでもいい」とか「たくさんいる中の一人でもいい」とか言うなら俺はぜんぜん構わないんだが、そのときはあいつ、どうする気なのか?


「我がマスターながら、どうしてモテるのか実は理解できません」

「なーんか、お前ってどんどん生意気になってく気がするな」


 そんなやり取りをしながら、俺は帝国軍の動きを見るために砦の屋根に戻った。


『庶民勇者は廃棄されました2』の発売日がオーバーラップ文庫のサイトにて発表されました。

10月25日発売です。

EXエピソード他、色々と加筆修正していますのでお楽しみに。

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