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庶民勇者は廃棄されました  作者: ぎあまん


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235 天の顕現 05

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 リストの顔色が変わった。

 トラウマに引きずり降ろされていた奴は現実の危機に気付いたのだ。


「さあ、どうする?」


《武聖》の俺は創世級武具……総じて八雷神宝はちらいのかんだからと名付けるとしよう……で武装してリストの前に立ちはだかっている。

 リストは死の聖霊と分離させられて《勇者》の力が使えなくなっている。紋章術の方はよくわからん。

 総力戦になれば俺の方が負けているのは確実。俺はあくまでもアストルナークの一部でしかないのだから。

 とはいえ創世級武具に守られているのだからそう簡単に負けるってこともない。

 このまま本体が作業を終えるまで時間を稼ぐこともできるだろう。


「だけど、それじゃあ面白くないよな?」

「ぐう……」

「もう死ねないお前にただの分身である俺が言うのもなんだが、お前だってここで負け確定になるのを待つのは嫌だろう?」


 俺は業滅槍黒雷と八象銃鳴雷を背中に回し、気体となって待機している天魔杖剣炎雷はそのままに聖剣大雷槌を構える。


「一発、スカッと決めないか?」

「…………」

「ああだこうだと術技をこねくり回して威力自慢をするのもいいが、しょせん俺たちは棒切れ振るって有頂天になってたクソガキの成れの果てなんだ。昔に戻るってのも悪いもんじゃないと思うぜ」


 リストは少しの間、茫然と俺を見ていた。

 だがやがて、苦笑を零す。

 乱れていた灰髪を縛り直し、聖霊刀綾衣を構える。

 そんなリストは、いままでで一番良い顔をしていた。


「お前と同列に私を語るな」

「カッ」


 そんなことを言いながらも勝負には応じるのだ。

 まったくどうしようもないクソガキだ。

 だが、勝つために死なないことを考えていた以前よりは良い顔だ。

 少なくとも俺にとっては。


「…………」

「…………」


 俺たちは大きめの瓦礫に着地し、距離を保ち、必殺の瞬間を狙って意識を研ぎ澄ませる。

 轟風の勢いはもうかなり弱まっている。瓦礫を吹き飛ばす力はすでになく、俺たちが乗っているそれも落下を始めていた。

 だが、逃げることはしない。

 それはただ隙を見せることでしかない。

 お互いに創世級武具で身を守っているのだ。速いだけの一撃では命に届かず、重いだけの一撃では間合いを超えられない。

 その両方を満たした一撃を放つには……。

 微細に変化する状況の中で空想の攻撃を千手万手と繰り出しながら、俺たちはじりじりと距離を詰め、位置をずらしていく。

 永遠に続くかに思われた落下は唐突に終わる。

 終着点に辿り着いた瓦礫は落下の衝撃で真っ二つに割れた。瓦礫の山の頂点にでも突き刺さったかのように分かれて落ちていく寸前、俺たちは動いた。


【雷迅剣】

【黒死風】


 超速で移動して刺突する剣聖技と周囲にあるもの全てを薙ぎ払う剣聖技がぶつかり合う。

 お互いの武器と状況を考えればこれが最適解だろう。

 向かっていく俺を迎撃する【黒死風】の斬撃をかわし切り、奴の首に向けて刺突を放つ。


「くおっ!」


 リストが無理やりに引き上げた大鎌の柄が刺突の軌道を反らす。

 くそっ、体が伸びた。

 大鎌の柄は次に俺のわき腹を突いて間合いを調整すると、大鎌で俺の首を薙ぎに来る。

 お互い、致死に至る一手となればそこしかない。


「ぐっ!」


 俺は賢盾土雷で聖霊刀綾衣の一撃を受け止める。腕に伝わる衝撃で半身が痺れる。体勢が崩れるのも構わず前に出て、肩でリストの体を押し、もろとも斜めに傾いだ瓦礫の上を転がっていく。

 転がりもつれ合いながらも俺たちは必殺の位置を求めて争い……そして滑落は止まった。

 そこですでに勝負は決まっていた。

 俺の賢盾土雷は奴の右腕を大鎌ごと抑えつけ、俺の聖剣大雷槌は奴の首に剣身を押し付けていた。

 運命が決まったリストは思った以上にすっきりとした顔で俺を見ていた。


「……私は強かったか?」

「ああ、お前は強かった」

「そうか」

「ああ」


 俺は剣を引き、リストはどこか満足気な顔のまま自分の首から溢れ出た血を受け止めた。



†††††



 どうやら勝負が付いたようだ。

 迷宮への侵食にも抵抗がなくなり、二つの気の和合への速度も上がった。

 もはや邪魔はなく、俺は和合して出来上がった気をまじまじと観察する。

 荒々しい雷気とも静謐な死気とも違う黄金の気。

 まるで太陽を抱えているかのような圧迫感とそこに溶け込んでしまいたくなる妖しい優しさに満ちた気。

 和合したままの雷聖霊と死聖霊をも含んだ超エネルギー。

 あるいはこれは……。

 これを俺の中に収めるのか。


「飲むか飲まれるか。本当の戦いはここからか」


 内から俺を呼ぶ声はまだ止まらず、むしろ強くなる一方だ。

 これこそが階段の一歩だ。

 天へ至る階梯の一段だ。

《天》位は鳴動し、心臓は破裂せんばかりに鼓動する。

 俺の中でなにかが大きく変わろうとしている。

 目覚めよと呼ぶ声がする。

 さあ受け入れろと。


「まったく……こわいねぇ……」


 呟き、俺はそれを受け入れた。

 おそらくは神気と呼ばれるだろうものを。

 神へと至るのだろう力を飲み込まんと。

 失敗したらおそらく俺は死ぬだろう。

 そんなものを俺はどうして飲み込む?

 そんなことをする必要がどこにあった?

 前に道があるから進むだけなのか?

 どこかで自分で進む道を選んでもよかったんじゃないのか?

 どうして俺は、こんな危険な真似をしているんだ?

 知るかわかるか知ったことか……。売られた喧嘩は買ってやる。忘れていたって知るものか。お前らが撒き散らした業を返してやるだけだ!

 そんなことをほざいたってやることは小さい。

 奴らに俺の力を見せつけるだけ。

 奴らよりも俺の方が強いのだと吠えるだけ。

 国一つ相手にしたって負ける気がないのに、皆殺しにした後の自分の境遇を考えて小さくあろうとする。

 しょせんは庶民。しょせんは田舎の悪ガキ。

 そんな精神性の奴が神の力を手に入れて、なにをする?

 なにをする?

 なにをする?

 なにをする?


「うるせぇぇ‼」


 止まらない自問に叫ぶ。


「行く道進んで何が悪い! 高尚な目的がなくて何が悪い。ていうか高尚だなんだとほざいたって、てめぇがやりたいことやってるだけだろうが! そんなもんに上も下もねえんだよ!」


 生きる目的なんざ関係ない。

 問題なのは生きる意思だ。

 膨大な力を腹に貯めこみながらそれでも当たり前に生きて見せるだけの意思だ。


「うまいもん食って、いい女を抱く。それが俺だ! それこそが俺だ! それに文句があるっていうなら、かかってきやがれ!」


 混濁しかけた意識はそれによって覚醒し……。

 そして…………。



特設サイトができました!

https://over-lap.co.jp/narou/865545098/


「庶民勇者は廃棄されました」第一巻 六月二十五日に発売されました。

特典SSのリストです。購入の参考にしていただければ幸いです。

■アニメイト

「冒険者的方向性の違い」


■ゲーマーズ

「初めての庶民勇者」


■とらのあな

「目覚めの吸血鬼」

+【有償特典】タペストリー


■メロンブックス

「ある朝の冒険者ギルド受付」


■特約店

「酒場で冒険者相手に語ること」


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