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庶民勇者は廃棄されました  作者: ぎあまん


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213 蒼血の賭博場 01


 魂を賭けるとは、また大きく出たもんだ。


「その遊びは好みじゃないな。本気なんだとしたら、俺は別の遊びを提案したいところだ」

「ふっ、もちろん本気ではない」


 死の勇者イルダオラはごつ過ぎる表情筋を盛り上げて笑った。


「だが、魂と名の付くものには覚えがあるはずだ」

「さあて……」


 ひっかけか?

 確認か?

 もちろん、イルダオラが言いたいものが何か、予想はついている。

 偽魂石だ。

 死を身代わってくれる貴重な石。

 あちらではそれなりの頻度で手に入りはしたが、こちらでは噂を聞きもしない。

 効果を考えればかなりの貴重品だ。

 そんなものをイルダオラが知っているのだとすれば、こいつは本当にあの場所を経験したことの証明になる……かもしれない。

 とはいえしょせんは吸血鬼だ。長く生きた末にどこかでその情報だけを手に入れたという可能性もあるだろう。


「ふふ、疑っているな?」

「知っているように見せかけて相手の口から言わせる。それは詐欺師の手法だ」

「そうだな。ああ、わかっている偽魂石だ。我は偽魂石を欲する」

「なるほど。それを知っているとは、多少は物知りのようだな」

「で、乗るかね?」

「俺が勝ったら?」

「もちろん……」

「偽魂石はいらんよ。まだ余ってるし。……そもそも、お前は持っていない」

「…………どうしてそう思う?」

「持っているなら欲しがりはしない。人よりも多少は死ににくいお前ならそう使い潰しもしないだろう?」


 いや、もしかして……。


「そいつを使い潰すような凄いのとやりあったのか?」

「…………」


 やべぇなそれ、どんなのだ?

 底はまだ見抜いていないが【飛神盾】を砕いた実力は確かだ。


「なぁ、それ誰だ?」

「…………」

「まだ生きてんのか?」

「…………ならば、その情報がお前への報酬でどうだ?」

「ふん。生きてるか死んでるかだけははっきりさせろ」

「生きているさ」

「よし、いいだろう!」


 どうせ、狂戦士団の連中にはもっと戦闘経験を与えてそれだけで称号が昇華するかどうか試したかったしな。

 リンザたち狂戦士団にはラランシアもいる。

 そう簡単に崩れることもないだろう。


「貴様もほどほどに狂っているな」


 そんな俺の態度にイルダオラは少しばかり呆れているようだ。


「お前の望み通りだろう? もっと喜べよ」

「ふっ、そうだな」

「ああ、だが……一つ、こちらの願いもかなえてくれると嬉しいな」

「なんだ?」

「決闘したい奴が一人いるんだ」

「なるほど。ヤグオートの件だな?」


 理解が早いと助かる。

 俺たちの空気が緩んでいるのを感じ取ったからか、ここに案内するときにいた老執事の吸血鬼がティーセットを持ってやってきた。影を操る術にたけているらしい老執事は影人にソファやテーブルまで運ばせている。

 鏡の中で行われている戦いがよく見える配置にするあたり、状況をちゃんと理解している。

 無音の動作で勧めてくる老執事に従って俺とイルダオラは向き合って座り、紅茶を飲んだ。

 強めの酒が混ぜてある。

 気が利くなぁ。

 冷えた体を癒やす酒精に息を吐き、俺はうなずく。


「そうそう。お互いの配下同士の因縁の戦いって感じだな。どうだ?」

「ふむ……いいだろう」

「話が早いな」

「問題ない。これは吸血鬼の流儀の話だ」


 そう言ったイルダオラが視線を向けると、そこにさっきまではいなかった男が立っていた。

 ヤグオートだ。

 なんだ、結構ボロボロだな。

 ヤグオートの出現にあわせて、俺の影からイルヴァンが姿を現す。


「子が逆らうなら親はそれを受けて立たねばならぬ。それが我が血筋の者たちの流儀だ。よいな、ヤグオート」

「……は」


 なるほど。

 ということは前回イルヴァンと戦って逃げ出したことでヤグオートは折檻を受けたわけだ。

 それがボロボロの理由だろう。

 それに対し、イルヴァンの方は元気な姿でやる気満々だ。


「じゃ、イルヴァン、そういうわけだから」

「ええ。ありがとうございます。ルナーク様」


 イルヴァンの俺の呼び方は昔のままだ。

 アストとルナークという昔の名前をくっつけただけなので、面倒だから変えるも元のままも好きにするといいと言ってある。

 イルヴァンは元のままを選んだようだ。

 二人は少し離れた場所で対峙する。


「さて、前回は気張りすぎて少々重くしすぎました。今回は速度重視で行くとしましょう」

「ぬかせ、その血を残らず吸い尽くしミイラとなり果てて親に逆らったことを後悔するといい」


 そうして二人は戦いを始める。

 俺たちは老執事の手で酒が足され続ける紅茶を飲みながら、二つの戦いを観戦する。


「……あ奴も年を経てそれなりに成長をしたのだが、いまだ蒼血の神髄には気づいていないようだな」


 ヤグオートを見て、イルダオラは溜息を零した。


「それに比べて貴様の配下となったあの娘はよい成長をしている。血とはただ量を漁ればよいというものではない。珠玉の一滴があれば一万人の血にも勝る。百年の研鑽にも勝る」


 そう言って俺を見る目には、隠そうともしない飢えがある。

 男に色目使われるって、気分が良くないな。

 逆に老執事の方がよく抑えていると感心する。

 ああ、まったく……。

 そこら中の影に吸血鬼どもが潜んでいる。

 俺の血を狙って涎を垂らしている。

 いやまったく、この圧力を感じるのは久しぶりだな。


「ああ、ちょっと待った」

「うん」


 俺は一瞬その場から消え、無限管理庫に入ると偽魂石を取ってきた。

 それをテーブルの上に置く。

 無造作に置かれた赤い水晶製の心臓をイルダオラは一目見てそれと認めた。


「では、戦いを楽しむとしよう」

「そうだな」


 二つの戦いが起こる。

 いや、もしかしたら三つかな?



「庶民勇者は廃棄されました」第一巻 6月25日発売です。

Amazonで予約可能です。

よろしくお願いします。


アキバblog様にて「庶民勇者は廃棄されました」1巻の記事が掲載されました。

http://blog.livedoor.jp/geek/archives/51584668.html

第一巻発売に向けて6月中から発売日6月25日周辺まで不定期ながら更新していきたいと思います。


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