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庶民勇者は廃棄されました  作者: ぎあまん


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206 狂戦士と吸血鬼の狩り場 9


「……で、お前さんは誰だよ?」


 テンション高い筋肉ダルマに俺は顔をしかめる。


「我が名はイルダオラ。ランザーラ王国初代王にして死の勇者よ」

「死の勇者とは……またご大層な聖霊に好かれたもんだな」


 というか死にまで聖霊がいるとか、なんでもありだな聖霊。


「はっは! なにに選ばれるかを決めることはできぬからな。貴様とて望んで雷の聖霊に選ばれたわけではあるまい」

「そうだけどな」


 豪快に笑うイルダオラの青白い顔を見ながら、俺は「いや、そういうのはいいんだよ」と考える。

 問題なのはランザーラ王国初代王というところだ。

 あいにくと建国から何年が過ぎているのか知らないが、建国の祖がこんなところでゴリゴリマッチョマンできる程度の歴史ではないことぐらいはわかっている。


 まっ、それ以前にこのクソ寒い場所で上半身裸なところとか、ツッコミどころは満載なのでこれはもう決まりだろう。


「吸血鬼か」

「もっと高貴な呼び方はできんか? 蒼血の一族とか」

「うるせぇ、蚊の親分で十分だ」

「くはっ! はははは…………まったく…………」


 その瞬間、イルダオラの姿が消えた。

 次に現われたのは俺の前。


【飛神盾】


 立ちふさがる魔法の盾に俺の顔ぐらいある拳を叩きつけていた。

 その衝撃を受け止めて【飛神盾】が破裂した砂山のように散っていく。


 なかなか……。


「無礼であろう?」

「それならお貴族様がわざわざど庶民様の前にやってくるんじゃねぇよ。一等高いところでふんぞり返ってろ」


 おっと……。

 俺ももういまでは庶民ではないのか。

 失敗失敗。


「ふっ、おもしろい奴だ」

「俺はなんにも面白くないんだがな?」

「では、面白くなるように遊戯をするか?」

「あん?」


 謁見の間の端は光が届かず闇に沈んでいる。

 イルダオラが視線を動かすと、その闇の中から大きな壁掛けの鏡とそれを運ぶ下僕が現れた。

 腰巻きだけの老人が二人かと思ったが、干からびているだけで実は若いのではないか。血を吸われすぎて水分が足りていないのだろう。

 そんな状態でもなおこれほどに大きな鏡を抱えられるのだ。すでに普通の人間ではないのだろう。

 苦しげにこちらを見るが、そんな目で訴えられても俺としてもできることはない。掴まえられたのだとしたら不憫だが、吸血鬼に憧れる人間というのもいるもので、はたしてこいつらはどちらなのか。

 とりあえず、いまの主役はこの枯れた若者ではなく鏡の方だ。


「鏡に映像を出すとか古典的クラシックだな」

「古典の良さとは長い時間をかけて磨かれた様式美にこそあるものよ」


 そんなことを話していると鏡に映像が映し出された。


「リンザたちか……」


 鏡に映っているのはリンザと狂戦士団ども、そしてラランシアだ。


「ばらけなかったか」


 各個撃破でもされるのかと思ったが、そういうつもりはなかったようだ。

 で、その場所はというと。


「これぞ我が迷宮城よ」

「なるほど」


 リンザたちのいる場所は灰色の通路というだけしか情報は無かった。

 なかなかに広い。

 総勢で三十人以上いるというのに、幅にはまだ余裕がある。

 そして、その余裕のある空間を埋め尽くすのはゾンビどもだ。


 敵を前にして狂戦士どもが大人しくしているはずもない。

「ひゃっはー」とでも叫んでいそうな顔でゾンビたちを薙ぎ払う狂戦士たちの姿が鏡に映し出されている。


「で?」


 見せられたのは楽しそうに戦う狂戦士たちだ。


「これでなんの遊戯をするんだ?」

「奴らがいつまで生き残るか、賭けないかね?」

「あん?」


 どういう意図だ?


「我らが戦ったところで時間もかかるし被害も甚大だ。ならば代理の争いで決着を付けるのがよかろう」

「……たいした自信だな」

「自信家はそちらも同じであろう?」


 ゆるゆると言葉をやりあいながら相手の意図がどこにあるのかを考える。

 あそこにいたゾンビどもははたして本物なのか。


 本物というのは、あれだ。

 迷宮の外に出られる存在かって事だ。

 リンザたちにとって見ればそれはどっちでもいいことだろうが、イルダオラを見極めるには重要なことだ。

 堀に落ちていったゾンビどもがあそこにいるのだとしたら?


「あそこにいるのは歴とした迷宮産だ。外から集めたものには別の用があるのでな」

「……ほう」


 鏡を見る俺の意図を読みイルダオラが笑う。


「いまだ疑われているとは甚だ心外だな。それとも、己のような超人は北のダークエルフ以外はいないとでも思っていたのか?」

「思っているね」


 大山脈で会った竜は俺のことを天の階梯へ至る者とか近い者とか言った。

 つまり俺は……あるいは《天孫》あるいは《天》位を持つ者とはいずれどこかへ行く……あるいはなにかになる存在だということだ。


 ラーナのことを知っているのは気になるが、しかしそれだけだ。

 同類とは思えないな。


「北のダークエルフもいつまでもここに留まっている。我がここにいることになんの疑問がある?」

「……ふん。まぁいい。それで、なにを賭けるってんだ?」

「そうだな。では……」


 すでに決まっているだろうにイルダオラはもったいぶる。


「魂をかけるのはどうだ?」



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この後は短編を数編の後、書きため期間に入ります。

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