第九十一話:三匹が斬る(斬るのは一人だけ)
三人組の男の運命やいかに!
迫り来る火炎球の数々! この家は燃えてしまうのか!? すいません。燃えないって分かってて言ってます。前も燃えなかったもんね。
「なっ、通じんだと!?」
向こうの司令の……ゲルデンハイムだっけ? とにかく司令が素っ頓狂な声を出していた。声が大きいというのもいい指揮官の条件らしい。指示が通りやすくなるからね。
「ゲーゲンハイト司令、前の時もこうだったと報告が入っております」
「むむ、何故それを言わなかった!」
「も、申し上げましたが「たかが家一軒」と言い放ったのは司令ではありませんか」
「なんだと? 貴様、私に責任を擦り付ける気か?」
なんか内輪もめが始まってるけど。よし、アリス、アスカ、懲らしめてやりなさい。
「はいはーい、じゃあいってきまーす!」
アリスがものすごいスピードで敵兵の中に突っ込んだ。そして、その中の一人の足を持って、「えいっ」とか言いながら振り回し始めた。ええと、つまり、人間ヌンチャク?
「たーのしー、おもしろーい」
ケダモノは居てもノケモノは居ない。みんな等しく吹っ飛ばされている。振り回されてるやつ、多分脳みそがいい感じにシェイクされててくたばってんだろうなあ。
「アリス姉様がやる気なら私も頑張る。火炎球じゃなくて本当の火炎魔法を教えてあげる」
そういうとアスカは口の端をニヤリとあげて詠唱を始めた。
「深淵より呼び覚まされし地獄の業火よ、我が力ある言葉に従い、その歪を顕現せよ、全てを破壊する炎よ、ここに!」
アスカの詠唱を止めようとした兵士たちが殺到してくるが、障壁に阻まれて辿り着けない。そうこうしてるうちに魔法が完成してしまった。
「爆裂火炎!」
凄まじい爆音がして、敵兵がすっ飛んだ。死体すら残らなかったというか森ごと消えたというか。
「アスカ?」
「あ、見てましたかご主人様」
「うるさい、森が消えた、地形が変わった。どうすんだ?」
「え? あ、そこはほら上手いこと」
「終わったら説教な。アインがそう言ってる」
「アイン姉様!?」
そのアインはスナイパーライフルで指揮官らしき人間を次々と狙撃している。撃たれて死んで次の指令系統に行く度にバトンを受け取った人間を殺しているのだ。えげつない。
「見えている敵全てを殲滅するのも後片付けが大変ですから」
いやもうとっくに大変になってんだけどな。
畑から攻めて来ようとした奴らもいた。そいつらはゴーレムを見ると逃げ出したり、立ち向かってきたものでもその拳で吹き飛ばしていた。
このまま終わるかなって思ってたら突如としてゴーレムの一体が動きを止めた。そして膝をついて動かなくなっている。な、何が起こったの?
「ちっ、硬ぇなあ」
「ボヤくな。動きは速くない。破壊するのは一苦労だが出来なくはない」
「全く、早く片付けてとっとと帰ろうぜ」
進み出て来たのは三人組の男。一人は大剣を持っている。身長はそこまで高くなさそう。いや、もしかしたら高い方なのかもしれない。低く感じるのはもう一人、巨躯の男と比較してしまうからだ。筋肉が凄まじい盛り上がりを見せており、かなり鍛え上げられている。
三人目の男は顔に仮面を着けた黒いローブの男。杖を持っているから魔法使いなのだろう。さっきのアスカの呪文見ても驚いていなかった様だ。
「パーシー、お前はあの小さいお嬢さんだ」
「あんなのが相手かよ。俺の筋肉が泣くぜ」
「見た目通りでは無い。振り回してるのは騎士だからな」
「それはそれは。なら構わんぜ」
「リーン、お前はあの爆発する魔法使ったあのお嬢さんだ」
「まあ、それしかないでしょう。やれやれとんだ貧乏くじだ」
「その間、俺があの家に攻め込む。それで終わりだ」
「了解ランス。任せたぜ」
そんな事を話していた三人が散開した。パーシーと呼ばれた男がアリスの前に来る。
「その騎士を放してやれ。俺が相手をしてやる」
「あなたも主様の敵? それなら容赦しないよ?」
「恨みとかはねえんだがこれも商売だからな。悪く思うなよ」
そこに魔法を打ち込もうとしたアスカをリーンと呼ばれた男が妨害した。
「おおっと、あなたの相手は私ですよ?」
「邪魔」
「ええ、その通り。邪魔をしているのです」
そして最後の一人がゆっくりと家に向かって歩みを進めて来た。まるで無人の野を行くかの如く。
「いけ、ゴーレム!」
「無駄だ」
ランスという男が剣を一閃すると、ゴーレムの首が飛んだ。EMETHの刻印が刻まれているのは頭部だ。削るでもなく、頭ごと削ぎ落とす。ゴーレムは活動を停止していく。
「さあ、これで守るものは無くなったな。今度はこっちの番だぜ!」
ランスは剣を大きく振りかぶった。




