第八十七話:婚約今夜苦
護君は結婚には無頓着です。
「……これは一体どういう状況なのでしょうか?」
「あ、ヒルダ! ほら、あなたからも何とか言ってよ。私を妻に出来る事の素晴らしさについて」
「アーニャ様、その様な事実無根な事を私が口に出来るとでも?」
「それ酷くない?」
ヒルダさんが来てくれたのはありがたいがアーニャさんと仲がいい感じで二人で喋ってる。
「確かに私は護様に嫁ぐ事が出来たらジジイの後妻は免れられると言いましたが、護様との婚姻をサポートするなどとは口が裂けても言っておりません。言っておりませんとも。ですから、アリス様、その怒気をお鎮めいただけますと私としても命の危険を感じずに済むのですが」
何故かうちのパペットが全員集合している。外見だけで言えばいずれ劣らぬ美少女、美女揃いだ。
「こっ、この子達はあなたの妾なの?」
「そうです!」
「いえ、違います」
間髪入れずにアリスが肯定したが、妾じゃないぞ。というか妻でもないし愛人でもない。こういう時になんて説明したものか。家臣、従業員、おもちゃ……いや、おもちゃはダメだろう。なんか別の誤解を産む気がする。
「私たちはご主人様の仰せのままに動く人形のようなもの」
「そうそう、ご主人様に身も心も支配されてる」
「せやなあ、旦那はん居らんと生きていけんわなあ」
言ってる事は間違ってないけど盛大な誤解を産みそうだからやめろ!
「この子達はぼくの家族みたいなものです。恋愛感情などは持っておりません」
「えー、そんなー、主様のいけず」
アリスが絡んでくるが無視だ。
「それで話を戻しますが、ぼくと婚姻を結びたい、というのはそのおじいさんとの結婚が嫌だから、ということですか?」
「その通りです」
「わかりました。婚約で良ければしましょう」
「えええええええええええええええええ!?」
婚約するって言ったらみんながびっくりしたみたいだ。アリスがボロボロ泣いている。泣く機能もついてるとか無駄に性能高いな。
「結婚となると面倒ですけど、婚約だったら破棄も出来ますから、一時避難って形で協力してもいいですよ」
「ほ、本当ですか?」
「主様、結婚するなら私と」
「いや、アリスとは結婚できないだろうに」
「いーやーだー、私が主様のおよめさんなの!」
「あと、これは偽装結婚だからな」
そう、回避する手段としてぼくを利用するのだ。別にぼくの戸籍が汚れたって構わない。というか戸籍があるのかも分からんし、あったとしてもぼくは帝国民じゃないからなあ。
「その代わりと言っては何ですけど、お願いがあります」
「お願い、ですか?」
「はい、孤児院に十分な援助がいくように取り計らって貰えないかと」
「孤児院に? おかしいですね、孤児院にはそれなりの予算を計上していますけど」
あれ? 孤児院は金が無くてカツカツだったよね。実際に見に行ったぼくが言うんだから間違いない。というかフォルトゥーナさんも助けてあげてって言ってたから不正蓄財とかはしてないはず。
「皇帝陛下は弱者は死ねみたいなお考えだと」
「孤児の中に将来大器になるものがいるかもしれないとも言っております」
なるほど。子どもたちには可能性があると思ってんだな。弱者は死ね、だが子どもは判別出来てないから頑張れと。
「それだとますます孤児院がカツカツの理由がわからないです」
「わかりました。それでは調べてみましょう」
「お願いします」
という訳で婚約者が増えました。と言っても書類上、形式上の婚約者なんだということだけど、基本的には顔を合わせない。どうしても、という時は分身体を出すので連絡してもらう。
そしてしばらくアーニャさんをうちで匿う事になった。出ていって発見された時にはぼくと知り合って婚約していたみたいなシナリオにしたいらしい。立案はヒルダさんだ。
「主様、結婚しても私を捨てないで」
「実際に結婚しないし、アリスを捨てるなんてありえないから。わざわざ作り直したんだし」
「そうだよね。作り直すくらい主様はアリスが好きだよね」
いや別に好きだから作り直した訳では無いのだが。作品愛みたいなのは無いとは言い切れないけど。
「ご主人様、あのアーニャとかいう女、どこに監禁しますか?」
「いや、閉じ込めないよ!? アインは何を言ってんのかな?」
「ですが、あの者が一般市民と同じ扱いに耐えられるとは思いませんし、かと言って家には連れて帰れませんし」
そりゃそうか。困ったな。ええと、確か三階の部屋がまだ余ってたな。
「アミタ、二部屋ほど改築頼めるか?」
「まあ旦那はんが言うんでしたら」
「こんな感じにしたいんだけどどれくらいで完成する?」
「せやなあ、二日もあればええやろ」
「とりあえず出来上がるまでは高級ホテルにでも泊まってて貰おう」
親公認で家出娘を匿うとは思わなかった。




