第八十四話:新装開店。でも朝からは並びません。
なお、私はギャンブルの類は一切やりません。競馬は時々見るけど。
帝都の二号店が無事開店となりました。元が貴族の御屋敷なので普通の人は入って来づらそうにしていた。なので、店の前で店頭販売。唐揚げだよー、四個入りだよー、カラッと上がって、ワンツースリーフォー唐揚げやん!
一応陶器のコップに入れて渡した。食べ終わったらこっちに持ってきてくれたら銅貨一枚返金しますって感じ。返さずに持って帰る人も結構いたけど。素焼きのコップなんだけどな。
順番を抜かそうとする貴族の方がお出まし。こういうのの対処が一番困る。
「平民の分際でこのワシの邪魔をしようというのか!」
「まあまあ落ち着いてください。ここでは貴族も市民もみんな平等に」
「はあ? 貴族が平民と平等だと!? バカも休み休み言え。お前も平民だな?」
「ええ、まあ、そうですね」
「ならば詫びとしてこの店を寄越せ。従業員も含めて丸ごとな。それで勘弁してやろう」
「ええと、ちょっと相談役を呼んできてもよろしいですかね?」
「相談役だと? 平民風情が。まあいい、このザメンコタル子爵の言葉だとその相談役とやらに言ってやるがいい!」
なんだ、子爵なのか。ええと、ザコメンタル子爵だっけか? 相談役に相談しよう。こんな時のために相談役になってもらったんだもんな。
「という訳なんですよ、相談役」
「そんな奴にこの店をやる訳ないだろうバカめ」
「ですが相手は子爵ですから強硬策取られても反撃しづらくて」
「ほほう? では我が出るとしようか」
「出るのはわかったから唐揚げとビールは置いていってください」
「仕方ないのう」
という訳で相談役は色々準備があるそうなのでぼくが先に戻った。
「ええと、子爵様、うちの相談役がそんな奴にこの店をやる訳ないだろうバカめ、と申してました」
「なんだと!? このワシに向かって。その相談役とやらを呼んでこい! このワシが直々に罰を与えてくれる」
嗜虐心たっぷりこもった言動が飛び出す。いや、女性とかじゃないですから。男性でも構わないのかな?
「だそうですよ、相談役」
「そうか」
そして出てくる相談役。というか皇帝陛下。オープン前に来てビール飲ませろってうるさいから貴族に絡まれるのが面倒だからそれを何とかしろと言ってみた。
「そなたを貴族にするのと我が相談役になるのとどっちがいい?」
「相談役でお願いします」
貴族になったら不可侵条約とか有耶無耶になりそうだし、あの家の場所も帝国のものとか言われそうだしね。後で聞いたら「爵位だけ貰ったからと言って年金なども発生しなければ「名誉爵位」と見なされる」らしい。その場合は領土とか関係ないんだと。良く功績のあった冒険者などにも渡しているらしい。
「は……? あの、陛下がなんでこの様なところに?」
「勿論我が相談役だからに決まっておる。それで貴様が我に直々に罰を与えるのだったか?」
「ひっ、ひいいいいい!? 申し訳、申し訳ございませんでしたァ!」
頭を地面に擦り付けて上げることすらしない。一ミリたりともだ。
「今我は酒を飲んで気持ちよくなっておったところでな。面倒だから早く終わらせて続きを飲みたいのだ」
おい相談役、仕事しろ。こんな時のためにビール出してやったんだぞ?
「貴様が責任もってこの店に近付かん、そして他の貴族にもそれを伝えると言うなら」
「いや、客として来てくれるなら別に構わんけど」
「話の腰を折るでない! そなたも処刑……あ、いや、なんでもない、なんでもないのだ。だからアリス殿、その怒気をおさめてくだされ」
いつの間にやらアリスも出て来ていた様だ。まあ荒事になるかもだったから助かるんだが。一応そんなのでも皇帝陛下だから粗末に扱っちゃダメだからな。
「ゴホン。邪な目的で近付かんと約束せよ。そうすれば許す。まあ今の我は相談役であって皇帝では無いがな」
勅命ではないけど限りなく勅命に近い、そんな感じの命令みたい。子爵はコメツキバッタみたいに弾けて逃げていった。
「もう良いな? では我はビールを」
「またここに来ていらっしゃったんですね、へいか!」
「ヒ、ヒルダ、これはそのう……相談役としての仕事をだな」
「それは陛下が勝手にしてきたものでしょう! それよりも本来の皇帝陛下の仕事をしてください。決裁が必要な書類が溜まってるんですから!」
毎度毎度引きずられていく皇帝陛下。その後ヒルダさんの申し入れで皇帝陛下ではなくヒルダさんが相談役に。それでも十分抑止力になるとの事。ヒルダさんは忙しいからと代わりにアヤさんが派遣されてきたんだけどね。
「嬉しいです。またこのご飯が食べ放題なんて!」
「誰も食べ放題なんて言ってません」
「いいじゃないですか。私とマモォールさんの仲じゃないですか」
「主様?」
なんかまたアリスから怒気が膨れ上がってんだけど。




