第四十一話:王国の切り札
結局第二王子の名前出て来なかったわ(笑)
ロングソードなら懐に飛び込んでしまえばいい。ショートソードなら間合いの外から牽制すればいい。だが、バスタードソードは中途半端ゆえにどっちにも対応してくる。片手でも両手でも振るえるからだ。片手で振り回すのと両手でしっかり握るのとリーチが違い過ぎる。それが戦闘中に自由自在になるのだ。
「はあっ!」
そしてこの騎士団長、技量も優れたものがある。アリスが懐に飛び込もうとすると、両手に持ち替えて迎撃しようとする。アリスはそれを察して飛び退くと、追い討ちの様に片手に持ち替えた斬撃が襲ってくる。なるほど、強い。
「こんなにかわされるのは初めてだよ」
「それはどうも」
「そろそろ攻撃してきてはどうだ?」
「くっ」
騎士団長の攻撃にアリスは攻撃に移れない。丸太? 騎士団長の動きについていけないし、かわされるからとっくに捨てている。
「あっ」
「ここまでだ! 私の勝ちだ!」
回避行動のさなかにアリスが足を滑らせた。あれ? そんな滑らせる事なんてあったっけ? 疲労? いや、パペットだから疲労とか無いし。
「死ねえええええええええええええ!」
「ここ!」
アリスに剣が届くか届かないかぐらいの間合いで、アリスが片手で身体を支え、アクロバティックに回避しながら蹴りを騎士団長の横腹に叩きつけた。
「なっ!? ぐはっ」
騎士団長は斬撃に集中していたからか避けることも出来ず、まともに蹴りをくらった。そしてアリスの蹴りは一撃で戦闘不能にする程の威力がある。騎士団長はフラフラしながら立ち上がった。
いや、立ち上がっただけでもすごいんだよ? ほら、鎧がひしゃげてるし。
「な、なんだ、このパワーは……バケ、モノ……」
「乙女に向かってバケモノとは何よ!」
いや、すまん。見た目だとバケモノって言われても仕方ないと思うよ、客観的には。乙女というより漢女だし。ぼくは愛着あるから平気だけど。でもやっぱり早く換装してあげないと。
「無念……ジョドー王子、申し訳ありません」
バタッとそのまま騎士団長は崩れ落ちた。
「役立たずが!」
第二王子殿下が憎々しげに声を荒らげた。
「ええ、あなたはどうしますか?」
アリスが第二王子殿下に呼び掛ける。
「こうなったら……おい、あの家を吹っ飛ばせ! これは命令だ!」
アリスには敵わないと思ったのか標的をぼくの家に変更した様だ。様々な詠唱が重なり、ぼくの家を襲ってきた。
「仕方ないですね。《久遠抗魔防御》」
アスカが力ある言葉を紡ぐと、家の周りに薄い膜のようなものが展開され、そこに着弾した魔法が次々と掻き消されていく。
「なっ、なんだと!?」
第二王子殿下も驚きの声をあげた。人質は通用せず、騎士団長は敗れ、魔法攻撃も無効化された。これ以上の交戦は出来ないだろう。
「ならばこれだ! ダークウォーリアーの拘束を解け!」
運ばれて来たのは鎖で雁字搦めにされた、巨大なモンスター。巨人と言った方が良いのかもしれない。
「対帝国の切り札だったのだが、致し方あるまい。さあ、ダークウォーリアーよ、我が敵を打ち倒せ!」
鎖による拘束が解かれて、ダークウォーリアーは雄叫びをあげた。
「さあ、奴らをぶち殺せ! さもないとまた暗い場所に逆戻りだぞ!」
気味悪い笑みを浮かべながら第二王子殿下はダークウォーリアーに命令する。ダークウォーリアーは第二王子殿下の方を一瞥すると、そのままその拳を第二王子殿下に振り下ろした。
「ひっ!?」
第二王子殿下は悲鳴をあげる暇すら満足になく、そのまま拳に押し潰された。なんというか、トマトケチャップ? いや、手のひらじゃないけど。
「UHOOOOOOOOOOO」
再びダークウォーリアーが雄叫びをあげて、今度は周りの兵士を潰していく。そこは阿鼻叫喚の地獄絵図となった。
「うわっ、こっち、こっち来るな!」
「嫌だあ、死にたく、死にたくないぃぃぃい」
「バカ、こっちじゃない、あっちだ、あっちを攻撃」
「やってられるか!」
騎士たちは逃げ惑ったり、絶望に打ちひしがれたり、狂乱してダークウォーリアーに突っかかって行って潰されたりした。
やれやれ仕方ない。アリス、アスカ、やるよ?
「ご主人様、あいつらを助けるんですか?」
「ご主人様、自業自得では無いですか?」
「いや、さすがにあまり血を流されると臭くなるし畑にも影響出るかもしれないから」
「あー、なるほど」
ぼくは殺人に対する忌避感というのがそこまでない。それは自分が手を下してないのと、画面越しだから実感がわかないのと、ぼくらにはっきりした敵愾心を抱いていたのと理由は様々だ。
「よし、じゃあアレをぶっ殺そう。アリスとアスカで家のそばまで誘導してくれる?」
「別に倒してしまっても構わんのでしょう?」
それは死亡フラグだからやめてくれない?




