第三百四十八話:ワシは鳥目
夜の暗闇で屋内ならアルタイルは戦力になりません。見えてませんから。あ、じっとしてたらぼんやりとは分かります。
レッドメットが貴族の手先がどうとかこうとか言い出した。という事は誘拐犯は歩美さん? それなら安心して放置してても良いんだけど。
「あの、レッドメット」
「子どもたちは絶対に渡さねえ!」
いや、話聞けよ! というか確認しないといけないのはこの孤児院がどうなってるかって事。でも買ってるなら貴族が出てくるって事も無さそうだしなあ。
「わかったよ。渡してくれないなら力づくだね」
「やっぱり来るかよ。ちっ、セイバートゥースでも居りゃあなあ」
アリスが前に進み出た。いやいや、なんでそんなにバトりたがるんだよ。バトル野郎なの? 極めろ道、悟れよ我!なの?
「主様、すぐ倒して子どもたち助けるからね!」
「子どもたちは渡さねえ。増援来るまで持ち堪えるぐらいなら」
レッドメットはタフネスが半端ない。多分アニマルズのメンツの中だけでなく、パペットも含めて一番だろう。つまり、門番としては最適な訳だ。
「殺さない様には気をつけるけど死んじゃったらゴメンね」
「おっかねえなあ。いいぜ、来いよ!」
もう二人の世界だからとりあえず見守っとくか。というか攫われた先が歩美さんのところなら大丈夫だろう。このまま帰ってもいいんだけど、レッドメットだけが騙されてなんかやらされてるという可能性もある。気は抜けない(だら〜)
アリスが一方的にレッドメットを殴る蹴るする。手は出さないみたいだ。そりゃあそうだ。援軍来ること分かってるなら耐えてから反撃するのが正解だろう。
「くっ、やっぱりコイツ、堅い」
「あんたをぶっ倒す事は出来なくても耐えるのは得意なんだよ。そら、そろそろだぜ」
その言葉と共にアリスがレッドメットから距離を取った。カツンカツンと暗闇の中を歩いてくる人影が見える。いや、カツンカツンと音はしてないんだけどね。
「レッドメット、貴様は何をしているのだ? 侵入者を相手に」
「おお、来てくれたんだな、アルタイル。二人がかりでやるぜ」
歩いて来たのはアルタイルだった。ってなんで軍服来てるんですか? 歩美さんの趣味かな?
「貴様が殲滅出来ないというのは相手は……なるほどな」
「アルタイル、あんたもやるの? 室内なら多分ギリギリ私が勝つよ?」
「レッドメットが考え無しに呼んだからな。アリスが相手なら全員で掛からないとダメだ。倒すなら、だが」
「怖気付いたの?」
アリスが食ってかかる。そろそろストップ掛けるかね。
「アリス、落ち着け」
「主様? 主様は下がってくれないと全開で戦えないよ」
「いや、全開で戦えとは言ってないんだが」
「全開で戦わないと勝てないよ?」
キョトンとしてるが全開で戦うのが目的ではないんだが? ともかくレッドメットよりも話し合いが出来そうなアルタイルが来てくれて助かった。エイクスとかセイバートゥースとか来たらそんな事にはならなかったろうし。
「ここの孤児院の子どもたちは歩美さんの所に居るのか?」
「隠すつもりは無い。そうだ。取り戻したいなら力づくで来るがいい」
「待て待て、ぼくらはこの子たちが居た孤児院が心配だったから確認に来たんだ」
「この子たち?」
アルタイルがぼくの後ろに居る子どもたちに目を向ける。そして口を開いた。
「すまんな、見た事のない顔だから認識しづらくてな。夜目は苦手なんだ」
じゃあ暗い中の孤児院に来るなよ。というか明かりつけろ。
「まあなんか小さいのが居るのは分かるし、護は嘘を言うような奴ではないからな。良いだろう。一緒に来るがいい」
「アルタイル、俺は?」
「レッドメットはそのまま留守番だ。今度こそ貴族の手先が来るかもしれんからな」
「ちっ、じゃあねえなあ」
「じゃあこっちだ」
アルタイルが奥の方に歩いて行く。ぼくらはそれを追い掛けて行くと、目の前に黒い空間があった。歩美さんのダンジョンに続いてるゲートらしい。
「急拵えだから周りは手を入れてないんだがな。入るぞ」
そう言ってアルタイルは吸い込まれるように入って行った。まあ先に入ったんだから安全なんだろう。ぼくはその後に続く。そしてルクス君、ミモザちゃんと続き、最後にアリス。入った先はコタツのある部屋だった。
「アルタイル、おかえり……って、護さん!? え? なんで? あの? ここに? ふわっ!?」
歩美さんがピーター君とのんびりみかんを食べていた。いや、寛いでるところごめんなさい。
「ご主人様、孤児院に護が来たので連れて来た」
「先に、念話か、なんかで、報せて……」
「ん? 既知の仲なのだから必要あるまい?」
「男の人に、こんな、だらけた、姿、見せたく、ない、もん」
初めてあった時もそんなだったんで全然違和感無いんですけどね。いいじゃないですか。うちのフォルテには羞恥心すらありませんよ。




