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第二百八十三話:山間の村攻防戦(本番)

まあ戦力差はいかんともし難い。

「私は護と言います。怪しいものではありません」

「いきなり現れてそんな得体の知れねえ女どもを連れてんのに怪しくねえ訳がねえだ!」


 うん、ごもっともです。ぼくもそう思います。


「あの、こちらにいらっしゃるラルフ・クール氏に会わせていただけませんでしょうか?」


 村人たちはヒソヒソと話をしていた。やがて、「ちょっと待ってろ」と言われて村の真ん中で衆人環視の見張り状態になってる。


「おい、お前ら、ラルフさんはおめえらなんて知らねえって言っとるぞ?」


 そりゃあそうだ。実際にラルフさんに面識は無いんだもん。


「あの、私はその、ラルフ氏の娘さんのセーラさんから救出を頼まれまして」


 実際は頼まれてないよ? でも、セーラさんが悲しんでるのを見ていられなくなって助けに来ました、じゃああまりにも説得力無いんだよ。それにどっちかって言うとセーラさんよりも蜃さんが気に掛けてるからって方が大きいし。


「待ってろ」


 村人たちはまたラルフさんのところに行ったようだ。何度も往復させて申し訳ない……


 ガシャーンという音が村長の家らしき大きな建物から聞こえた。どうやらラルフさんが錯乱しているらしい。


「セーラ!? セーラに手を出したというのか! おのれ、盗賊風情がなんて真似を!」


 恐らくあの大声で喋ってるのがラルフさんだろう。ええと、これは復活してんのかな?


「おい、お前ら! ラルフさんが発狂しちまったぞ! 娘さんを人質に取るなんてそんな酷いことはやめるんじゃ!」


 いやいや、別に人質に取ってるわけじゃないんだけど。とか言ってたら麓の方がザワザワとうるさくなった。


「くそ、偵察に行ったヤツらが帰ってこないから来てみりゃあ、こりゃあ当たりだな」


 クマの毛皮を被ったいかにも山賊といった風体の男を筆頭に三十人ほどの盗賊がそこにいた。うん、筆頭の横にいるやつが高い確率で眼帯してるのは仕様なのかな?


「へっへっへっ、悪ぃが確実に殺さねぇと報酬が貰えねえからなあ」


 舌なめずりしながら手に持った白刃を煌めかせる。いや、夜だから松明の炎に反射してんだけどね。妙に絵になる。


「アリス、あのボスはなんか知ってそうだから生け捕り。あとは任せる」

「はい、主様!」

「アスカは村人に攻撃いかないようにと盗賊が逃げられないように結界」

「むう、つまらない」

「アカネはアリスのサポート。抜け出して村長宅に近付く奴がいたら始末しろ」

「御意」


 そして改めて扉でアンヌを呼ぶ。


「お呼びですか、チーフ?」

「あっちの建物に患者がいるから手当してやってくれ」

「元通りにしますからバラしてしまってもいいですか?」

「良いわけあるか! 後で生き残った盗賊でも解剖してろ」

「ならば仕方ありませんね」


 よし、それじゃあ状況を開始しようか!


「じゃあいっくよー」


 アリスは盗賊の固まってる真っ只中に踊り入った。突然の乱入に盗賊たちは慌てて剣を振り下ろす。三人ほどのその剣を横薙ぎに弾き飛ばすと、それぞれ一発ずつボディに拳をめり込ませた。いや、多分本気出したら貫けるんだろうけど、蹲っていた方がちょうどいいと思ったんだろう。血が出ると足を捕られたりするからね。


 もちろんアリス一人しか前線が居ないので、アスカが結界を張って防御してくれてる。村には進ませないという強い意志がそこにはあった。


ご主人様(マスター)、疲れた」


 いや、まだ始まったばかりだよな? これは仕方ない。結界張るだけって重労働なのかもしれない。いや、実際は飽きてくるってだけなんだろうけど。


「仕方ない。ゴーレム連れて来る」


 ぼくは再び扉を開くと畑で農作業をやっていたゴーレムを五体ほど連れて来た。用途は農作業にしか使ってないけど、元々は戦闘用ゴーレムだからな。普通の武器じゃ傷つかない。雨ニモマケズ風ニモマケズ雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ丈夫ナカラダヲモチ慾ハナク決シテ瞋ラズイツモシヅカニワラツテヰル。


 ゴーレムたちが投入されると明らかに盗賊たちが浮き足立ってるのが分かった。まあ一体三メートルぐらいだからなあ。脅威度で言うと五体合わせてもアリスには及ばないんだけどね。ともかく見た目は重要って事だ。


「こ、こんな魔術師が居るなんて聞いてねえぞ!」


 まあ正確に言えばぼくは魔術師では無いんだけど、都合よく勘違いしてるならそれはそれでいいかな。


「えーい」


 どごん、という音と共にリーダーと副リーダーがボコられ、他の奴らは散り散りになって去っていった。逃がすと思った? 残念、そっちは行き止まりです。あとはアスカに任せよう。山から降りられないようにも結界は張ってあるんだよ。


 斯くして盗賊たちは拿捕された。ちょうどその時、ラルフさんが移動用のベッドに載せられて運ばれてきた。


「チーフ、処置は終わりましたがここだと感染の危険性があるので家に運びます」


 まあこれは仕方ないよね。ラルフさんの生命に別状は無さそうだし。目が覚めるまでならおっけーだ。

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