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第二百八十二話:山間村攻防戦

本番の攻め手はまだらしいよ。

 セーラさんの父親が見つかったのは学術都市と帝都との交易ルートからはかなり外れた山間の村だったそうだ。


 村に血だらけになったセーラさんの父親、ラルフ・クール氏が護衛の冒険者らしき人間複数人に担がれて運び込まれたんだそうな。聞くと盗賊に襲われたらしい。


 冒険者たちは助けを呼ぶ事も考えたが、村にまで盗賊が襲って来たらまずいという事で、ラルフ氏を運ぶと、村から出て街道の反対側に逃げたそうな。


 依頼主を置いて逃げる、と言うと卑怯な様に感じるが、これは陽動。そして応援を呼びに学術都市に戻るのが目的だったらしい。だが、彼らの行方はようとして知れなかった。もしかしたら盗賊たちに殺られているのかもしれない。


 アカネは途中にある村を虱潰しに探したらしい。まあ手がかり無いもんな。村人に聞いたりしないで、村で一番大きい建物を中心に探したらしい。で、山間の村で村長宅に寝かせられているラルフ氏を発見したという訳だ。


 で、問題というのが盗賊がまだラルフ氏を探しているらしい。恐らく死んだんだと思うが念の為に死体の確認をするとかそんな事を話していた。この情報は別の村で忍び込んでる時に聞いたんだと。


「隠してるとためにならねえぞ」

「とんでもねえ! なんの縁もゆかりも無い商人なんて匿うものですか。匿ったとしても金目当て。生命には替えられませんからな」

「ほう、分かってんじゃねえか」


 まあ村長としても村の安全が第一。入るかどうかも分からない金のために突っ張ったりはしないだろう。ただ、ラルフ氏が匿われてる山間の村はどうも山賊が嫌いな奴が多いらしく、一戦交えてでもなんて気概も見える。


 山賊たちは村を回っている。山間の村は遠さ故になかなか行きたがらない様子で後回しになっているそうな。だが、そんな時間も無くなった様だ。山道を登ってくる五、六人の山賊たち。


「この村の村長は居るか?」

「私が村長ですが?」


 いかつい顔のおっさんに相対したのは温和そうなおじいさんだった。なんというか顔面の時点でもう負けてる感じ。いや、それでもこういうじいさんほど強かったり……いや、しないよな。


「この村に商人の旦那が居るだろう? 出せや」

「商人の旦那? はて、この間来たばかりですので行商にはあとひと月しないと来ないのですよ」

「商人を匿ってんじゃねえのか?」

「これは……その商人の方が何をしたというのですか?」

「ああん? そんなの俺たちの獲物に決まってんじゃねえか!」

「そうですか。生憎ではありますが、当村にはその様な商人はおりませんな。お引取りを」


 毅然とした態度で言い放つ村長のじいさん。盗賊たちは武器を構えた。


「居ねえと言ったな、ジジイ。ならよ、村の中を改めさせて貰うぜ」

「勝手に入られては困ります!」

「良いんだぜ? 別にお前らを皆殺しにしてから調べて回ってもよ!」


 盗賊たちのリーダー格らしきやつが村長を殴り飛ばした。どうやらまだ殺しはしないみたいだ。まあこんな衆人環視の中で村長殺したら村人総出で袋叩きされるかもだもんね。そうなったら生き残れるかもしれないが、無傷という訳にもいかないだろう。


 まあ、アカネが居るから適当にあしらえばいい話なんだけど。


「御館様、殺ってもよろしいでしょうか?」

「あー、まあ待て待て。村人が死なないようにしてやれ」

「御意」


 村長を殴り飛ばした事で村の若者たちが手に手に武器……いや、鍬とか鉄棒とかね。を持って怒りの炎を燃やしていた。


「雑魚の村人風情が! 全員ぶち殺してやる!」


 向こうの盗賊は随分と短気みたいだ。手にはシミターっぽい曲刀を持っている。ショーテルとか言うんだっけ? それで手近に居た男に切りかかろうとした。


 だがその白刃は虚しく宙を切る。アカネが刃の振り下ろされる所を修正したのだ。


「バカな! 何故逸れる!」

「もうダメだ……あれ、当たってねえぞ!」


 村の男たちは持っていた丸太を盗賊の男に叩きつけようとした。もちろんそんな攻撃に当たる訳がな……盗賊の男がなにかにつまづくように前のめりにつんのめった。丸太はそこに直撃!


 そうやってあっという間に盗賊たちは数を減らしていった。最後の一人になった盗賊は逃げようと踵を返した。だが、それはあまりに遅きに失していた。


「勝鬨を上げよ、勝ったどー!」


 若い村人が嬉しさのあまり声を上げると、エイエイオーという声が山間部に響いた。いやまあ盗賊撃退したもんね。でも撃退したのは先遣隊の五、六人。本体が来た時に持ち堪えられるかだ。


「御館様、こちらまでお出ましください」

「分かったよ」


 ぼくは分身体を回収すると、アスカやアリスと一緒に山間部の村に転移した。突然現れたぼくに警戒心をバリバリにする村人たち。あの、アカネ? もっと丁寧にタイミングよくやった方が良くなかった?

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