第二百六十一話:下水脱出大作戦
真教の奴らはシメたんで大丈夫。
「だからオレらはお前らが真教の手の者なのかと思ってたんだよ。信徒ってどこにでもいるじゃん?」
孤児院から逃げて下水に隠れたのも真教の信徒が街中だと密告したりするかもしれないし、聖職者が相手だと「保護」してもらう様に「気を利かせる」かもしれないからなんだと。
「施しとかやるの、聖職者だからお前らもそうなのかと思ったけど違うみたいだし」
なるほど。食べ物とかで釣られなかったのはそういう事か。
「あの毛布はかなり上等だったからな。ああいうのってお偉いさんだけが使ってオレたち孤児に使う訳がねえんだ。善良な聖職者なら毛布を粗末にして食い物にするし、悪徳な聖職者なら自分が使うじゃん?」
なるほど。つまり毛布が一応の決め手になったのか。まあ確かにあの毛布は超高級品みたいなものだからなあ。ネットスーパーだと二枚で五千円程度のものだけど。
「まあは事情は分かったよ。で、多分だけどその人さらいの聖職者は多分もう居ない」
「はあ!?」
うん、恐らく元締はこないだ聖国でボコったムラーキーだろう。今の真教の内部にそんなバカがまた居るとは考えにくい。いや、処罰を恐れて口を噤んでる奴もいるかもだけど、伝手となる商人も居なくなったし、暫くは大人しくしていると思う。
ということでぼくはその時の話をみんなにしてやった。なんなら断罪の様子も見せてあげた。どうでもいいけど一体誰が撮ったんだ?
「てことはこんなとこに居なくていい?」
「助かったんだあ」
「でもどうする? 行くとこねえぞ?」
「まあここじゃなきゃどうとでもなるでしょ」
どうやら子どもたちはこの下水に居なくていいということが分かったらしく、ほっとした様でこれからの事を話していた。
「あの」
おずおずという感じで近付いて来たのはユーリ。なんだろう。ぼくに聞きたいことでもあるのかな?
「ええとなんでぼくの能力が効かなかったんでしょうか?」
「ああ、その事か」
とは言ってもこの場にぼくの本体を呼ぶ訳にはいかないからなあ。なんでってコミュニケーションが疎かになってしまう。いや、子どもだからまだ話せないことも無いとは思うけど。
「そういう能力だと思ってくれたらいい。だけど嘘は吐かないと約束するよ」
「ううん、分かりました。どっちみちぼくらは信じるしかないと思うんです」
まあこのままぼくらを信用しないでここで暮らしてもいいけど、寒くなってきたら絶対限界が来る。冬になる前にどこか住む場所を確保しないといけないだろう。
「元の孤児院どうなってっかなあ」
「取り壊されてんじゃね?」
「ワンチャン残ってるかもしれないから行ってみるだけ行ってみようぜ」
という話になってみんなで下水を脱出する事に。で、せっかくなので掃除を手伝ってもらうことにした。手伝ってくれたらお駄賃出すぞって事で。ほら、これから家を確保するにしろ何にしろ、先立つものは必要になるんだし。
下水の中ではサバイバルだったから外に出てもサバイバルで生きていけなくは無いかもしれないけど、それだと森まで連れて行った方がいいだろう。街の中には食べられる獲物はそんなに多くないからね。
ブラシなんかを渡して掃除をしてもらう。よしよし、みんな筋がいいぞ。ぼく? ぼくは監督者だよ!
「終わったあ」
「ご苦労さま。ところでここから出ようと思うんだけど、どうやって出るんだい?」
「入って来た所からじゃね?」
「そうだよ。普通に外には出れるだろ?」
もしかしてあのスライムが通路を塞いでることを知らないのだろうか? いや、可能性はある。昔のスライムは通路を塞がないで分裂していたかもしれない。それが合体して今の形になったのかも。
「なら仕方ないな。オレが何とかするぜ」
名乗りを上げたのはシュティン。そういやユーリとキリエ以外の子の特殊能力は聞いてなかったな。
「【貫通】」
壁に穴が空いた。何と言うかなんの前触れもなくぽっかりと空いたのだ。まるでドラえ○んの通り抜け○ープみたいな空き方だ。なるほど。これなら通り抜けられそうだ。そもそもここに来る時も孤児院の壁に穴を空けて脱出したんだそうな。
能力としては「色んなものに穴を空ける」事らしい。そしてそれを塞ぐのも自由。空間を広げる感じなんだろう。人体とか生き物はダメ。使えたらかなり便利というか怖い。という事はスライムはダメなんじゃないかと思ったが、横の壁に穴を空けてそのままズレて脱出。まあ正面がダメならそうだよね。
外に出たのは良いけど行く場所が無いので宿にでも泊まらせた方がいいだろう。その前に汚れてるから風呂に入りたい。いや、ぼくらは良いんだけど子どもたちがね。ここは歩美さんのところのお風呂に入らせてもらおうかな。
歩いて行くとかなり時間掛かりそうだからここは車を出そう。免許は持ってるからね。異世界で免許は要らないと思うが。




