第二百五十五話:スーパー下水ブラザーズ
配管工じゃないですけと。
ミル博士の荷物を運んで冒険者ギルドに帰ってきた。依頼完了の証を見せて報酬を受け取る。まあ最も、目録だけなんだけど。でも追加の引っ越しの報酬も加算されたので目標金額には近付いた。次は何をやらされるんだろうってところで受付嬢のお姉さんに依頼を渡された。
「下水の掃除をお願いしますね」
「は? げすいってあのくせえところかよ」
「下水の掃除をお願いしますね」
「なんでだよ、やだよ、くせえのがうつるじゃん」
「下水の掃除をお願いしますね」
「だからやだって」
「下水の掃除をお願いしますね」
有無を言わさず押し付けてくる。これはなんという圧迫面接。決して胸部が豊満だから圧迫感を感じてるんでは無いと思う。
という訳で下水の掃除をすることになりました。あ、ぼく用事思い出した!
「にげんなよ、つきあえって! おまえがかんしやくなんだろ?」
いや、別に監視とかしなくていいと思うんだけど。でもまあ青龍さんに頼まれたしなあ。肉を喰らわば骨までもって言うしな。えっ、違う?
やって来ました下水施設の門。帝国では都市の下水をきちんと設計して取り入れており、街を清潔に保つ努力をしている。まあ街でポイ捨て禁止ってのもその最たるところなんだけど。
しかし、つくづく下水がある世界で良かったと思う。いや、日頃からぼくは家の中にいるからトイレは洗浄便座が標準装備なんだけど、街を歩いてて上から糞尿が降ってくるとか地面にばらまかれてるとかそういう世界でなくて良かった。下手すると疫病が蔓延しちゃうからね。
下水道の中は暗くてジメジメしている。これはここの中で飼っているスライムと呼ばれる生物の生育の為だ。日本のコンピュータRPGではスライムと言うと序盤の雑魚みたいな認識をされている。これはまあ竜を退治するテーマの国民的な作品が原因なんだけど。
で、実際のスライムがどうかと言うと、奴らは無色透明。大きくなると通路全体を塞いでる事もある。よく見ると何かが宙に浮かんでるように見えるが、取り込んでしまえばそれも溶かされる。
更に体液は強酸で出来ているらしく、容易く人骨なんて溶解する。もちろん、廃棄物なんかも進んで溶解していくのだ。弱点は炎。炙ると燃えます。
ぼくらが下水を進んでいくというのはそういう奴らの住処に立ち入るということ。つまり、侵入者なのです。正直、何か敵味方を認識出来るものがないのかと困りましたが、あったとしてもそれを見分ける知能が向こうには無いんですよね。
つまり、会ったら全力で逃げろ。ぼくらはスライムに遭遇して逃げ回ってる最中なのです。
「くそ、あんなやつオレサマのブレスでじょうはつさせてやるぜ!」
「晶龍君、あれはこの帝都の所有物だから破損すると怒られるよ」
「どーしろっていうんだよ!」
とりあえず今は逃げるしかないかなあ。幸いにして、スライムは足が遅い。こちらに来るまでに時間がかかるのだ。
「ふー、どうなるかとおもったぜ」
「無事に逃げられたみたいだけど、どうするね?」
「あいつかたづけねえとそうじできないんだけど」
「そうだなあ。一度戻って聞いてみるか」
という事でギルドに逆戻りです。先程のおっぱい大きい受付嬢のお姉さんの所に行きます。おっぱいの大きさで選んだんじゃなくて下水の掃除を押し付けてきた人だから知ってると思ったんだよ?
「そうですか。スライムがそんなに大きく……」
「そうなんです。それで下水の掃除ですが」
「引き続きお願いしますね。あ、もちろんスライムは今後の下水処理に必要なんで残す方向でお願いします」
耳を疑う発言がでてきた。こういう場合って「むっ、やむを得ませんな。そのまま倒してしまって構いませんぞ!」みたいになるのがスジじゃないの?
「あのスライムを捕らえて地下の下水施設に誘導するのにどれだけ苦労したと思ってるんですか!」
まあ普通に考えたら元から住み着いてたという可能性でもない限りはそういうの取ってくるの冒険者ギルドのお仕事だよね。
という事で下水施設リトライ。でもそこにはスライムが鎮座してる訳で。うーむ、どうすんだ、これ?
対策①
スライムを倒して先に進む。
結果①
スライムによる下水処理が出来なくなり、都市が不衛生になる。
対策②
スライムを倒さずに先に進む。
結果②
倒さずに先に進む方法が見つからない。
まあ今のところこんな感じなのです。要するに二択なんだけど。スライムを避けて進もうにも通路いっぱいに広がってるから通れない。じゃあそのまま通り抜けようとしても、途中で酸に溶かされる。
あれ? わりと詰んでない? さすがに地形を変えてなんてのは都市計画上ダメだろう。それは既に単なる破壊活動だ。
「なあ、どうすんだよ、これ?」
むむ、こうなるとスライムの居ないところを掃除するしかないのでは無いだろうか。と言っても入る場所がない。ここ以外に入口があるなんて話は聞いてないんだよなあ。




