第二百四十三話:さあ、手術を始めよう
手術の題名というかテーマ? は、適当です。
そんな感じでしばらく待っていながらせっかくなので庭の草むしりをする。と言っても綺麗にやる訳じゃなくて手当り次第に目につくやつをむしってる感じだ。単なる暇つぶしとも言う。
「主様、主様は貴族とかになってこういうお屋敷に住みたくないんですか?」
「貴族になるということは責任が発生するという事たからなあ。あまり責任発生させたくないんだよ」
「でもお店とか奴隷とかやってますよね?」
「そこはもう金を稼ぐ上で仕方ないと思ってる。あ、そういえばガチャが確か余ってたな」
レベルアップの時に駄目女神さんからもらったガチャをやってなかった。ここでやるのはどうかと思うから帰ったらやるか。いや、本体は家に居るんだけどね。
二時間くらいしたら晶龍と歩美さんが帰ってきた。二時間ぼくらは木陰で休んでたよ。枕ないからアリスに膝枕してもらってた。そう創ったからなんだけど柔らかくて気持ちよかったよ。アリスには負担かけちゃったみたいだけど、なんかテンション高かったから良いかな。
「もどったぜ!」
「はあはあ、ただいま、もどり、ました、はあはあ」
歩美さんは息が切れてるみたいだ。晶龍とノワールちゃんのペースが速かったのだろうか。いや、速かったらアルタイルが抱えるよな、多分。という事はあれもダイエットの一環かあ。
「おや、戻られたようですね」
杖をついて、メイドさんに身体を支えられながらシルヴァーヌさんが外に出て来た。ノワールちゃんはワン、と一声吠えると、シルヴァーヌさんのところに行って頭を擦り付けている。
「そうかいそうかい。久しぶりに散歩出来て嬉しかったんだね。良かったよ。ありがとうね」
シルヴァーヌさんが晶龍の頭にふわりと手を置いてゆっくりと撫でた。晶龍はその手を払い除けることなく大人しく撫でられていた。
「またお願いしてもいいかねえ?」
「出来れば奥様がお散歩に連れて行ってあげた方が良いと思いますよ」
「あなた!」
「私もそうしたいんだけどねえ。ほら、こうして一人では立つことも難しいのよ」
メイドさんがぼくに食ってかかろうとするのをシルヴァーヌさんは止めて緩やかに微笑んだ。その微笑みは悲しい色を含んでいた。
「御病気、ですか?」
「いえ、転けてしまって骨折してね。どうやら治療が上手くいかなかったみたいなの」
この世界の治療は回復魔法とかポーションとかそういうものらしい。当然外科的手術なんてないから治すもの一苦労だ。
「私としても何度もこうして来るのは面倒なんですよ。今回は晶龍の依頼遂行で来ましたが、今後派遣されないと思いますし。ですからご自分で散歩させて欲しいんですよね」
「酷いことを言うのね」
「まあこちらの都合ですからね。よし、アスカ、やれ」
「分かった、〈眠りの雲〉」
アスカの呪文と共に白濁色の煙が二人を包み込み、そのまま倒れる様に眠った。
「アンヌ、頼むぞ」
「もちろんですチーフ。スキャン……足の骨折と肺周辺にがん細胞がありますが除去しますか?」
「そうだな。ついでに除去後の再生もしといてくれ」
「当然です。では左足下腿骨折痕矯正並びに肺周辺癌細胞除去術を始めます。麻酔、脚部」
ぼくの見てる前で結界が展開された。除菌の為の結界なんだと。物凄い攻撃とかは防ぐ能力ないけど衛生的なものは完璧らしい。
「お、おい、なにしてやがる! きりきざむのをやめろ!」
「黙って見てなさい」
晶龍が声を上げるが、それを予測していたアリスか晶龍を抑え込む。
「あなたは止めないの?」
「え? 手術、して、ますよね? アンヌ、さん、すごいな、って」
「そうか。あなた主様と同じところ出身だったわね」
アンヌは足の骨を削りながら再生させて調整し、真っ直ぐになる様に整えた。かなり時間は掛かっている。草むらに血が飛び散っていく。
「アンヌ、増血剤や。こんだけありゃ足りるやろ」
「ありがとうございます。アミタ姉様」
どうやらアミタが増血剤を作っていたらしい。輸血用血液というのは作れなかったからね。赤血球だけじゃなくて血液そのものを増やせる画期的なお薬だ。元が自分の血液だから拒否反応も起きない。
「足は終了。胸部に移ります」
そのまま、胸に麻酔をかけて、胸にメスを入れる、すっすっと切り進めているが確かに切り刻んでるように見える。現代医学の知識がなければ余計にそうだろう。
「転移は確認できません、が、念の為に血液全体に浄化魔法を掛けておきます」
こういうのは科学と魔法の融合って感じで良いよな。
「切除完了。縫合に移ります」
あっという間に患部を切り取って、トレイに入れたそれを愛おしそうにガラス瓶に入れて密封していた。記念に取っておくのかそれとも実験に使うのか、どちらにしてもちょっと嫌だな。
そのまま縫合まで終わって手術終了。最後に傷口を治すために回復魔法を掛けて抜糸。全部終了した。




