第二十二話:帝国の軍隊(侵攻)
アリスとアインは台所でご飯作ってます。
そして今日、我が家はまた厄介な客を迎えている。嵐の運び手は今日は居ません。いや、あれからちょくちょく来てはご飯を強請るんだよね。まあその度に素材とか肉とか貰えるからWin-Winではあるんだけど。
で、今日のお客さんは彼らではなくて.......
「私はザスカー帝国陸軍第三師団ゴンドール王国方面軍第四大隊大隊長、ブリッツ・V・ギレッテンフェルトである」
二十人程の兵士を連れた偉そうなオッサンである。いや、何しに来たのさ。
「この家の家主に話がある。出てくるがいい」
いや、出てくるがいいってそんな武器持ってる兵隊がぞろっと居るところにそのまま顔出せないっての。まあぼくが剣聖の才能とか魔導王の才能とか賢者とか勇者とかならこうバリバリとちぎっては投げちぎっては投げ出来たんだろうけど。身体能力なんて向こうの時のままの脆弱な引きこもりですよ? 陽の光を浴びるだけで溶けるっての。
「仕方ない。総員構え!」
兵士が長い槍の様なものを持っている。いや、槍と言うよりランスだな。ガンランス? いや、ガンはないわな。
「突撃!」
大隊長の号令一閃、何人もの兵士がぼくの家に突撃して来た。いや、何のつもりだよ!
ガキン!と音がしてランスの一斉突撃は阻まれた。家の丈夫さが図らずも証明された。
「あの程度の攻撃じゃキズ一つつかないですよ」
フォルテが誇らしげに胸を張る。
「ダメか.......魔道兵、前へ!」
今度は後ろに控えていたローブを着た集団が前に出て来た。今度は魔法か?
「燃えると元も子もないからと遠慮していたが最早遠慮は要らん。跡形も無くなっても構わんからやってしまえ!」
「だ、大隊長殿!? さすがにそれはあんまりでは?」
大隊長に食ってかかったのはアヤさんっぽい人。いや、多分アヤさん。顔を直視出来なかったからあまりよく分からないけど。
「アヤ・トーリエ。貴様、上官に逆らう気か?」
「いえ、そういう訳では。ですが、ここの家主は飢えた我々に食事を恵んでくれました。こんな恩を仇で返す様な」
「貴様の受けた恩など知るか! ここにこんな拠点があるのを放置しておけるか!」
どうやらここを軍事拠点として見ているらしい。いや、違うし。なんなら軍事的な目的なんて全く興味無いし。
「魔道兵、火炎球一斉発射!」
「燃え盛る炎よ、球を無し、敵を燃やし尽せ! 火炎球!」
どうやら詠唱とか必要らしく直ぐには飛んでこなかった。詠唱が終わると何発もの大小様々な炎の球が飛んでくる。
「大きさが違うのは個々の魔力量ですね」
「いや、そんな解説要らんから何とかしろよ」
「いやいや、必要無いですよ。あんなショボイ炎じゃどうにもなりませんて」
フォルテのその言葉が終わるかどうかぐらいのタイミングで次々と火炎球が着弾していって、そのまま消えた。
「おおっ、本当に効かないんだな」
「当たり前ですよ。火事とかだったら安心して引きこもれないでしょう?」
「なるほど! 引きこもりバンザイ!」
いや、褒められたこっちゃないと思うけど。火炎球が着弾しても焦げ目のひとつもついてないことに、大隊長はびっくりして、そして顔を真っ赤にして激怒した。
「貴様ら、手を抜いていないで本気で破壊するつもりでやれ!」
「だ、大隊長、我らは本気でやりました。それでも突破できなかったのです!」
「己の無能を誇るつもりか?」
「いえ、ですが我々にはどうしようも」
魔道兵さんたち半泣きである。悪い事しちゃったかなとは思うが、命令されたとはいえ家に火炎球ぶち込む様な人たちだもんなあ。
「どいつもこいつも.......こうなったら私がやる!」
おお、大隊長自ら出て来ましたよ。手にはでかい剣を持っている。そして構えた。その構えた剣にバチバチとしたものが走っているのが見えた。あれは雷? 雷を剣に纏わせてるのか。つまり、魔法剣とかいうやつ?
「砕け散れ、雷撃破砕剣!」
凄まじい雷が視界を襲った。これ、電気系統がショートしたりしない?
「家の中は絶縁状態ですから外の影響は全く無いです。安心してください。ほら、パソコンだって無事でしょう?」
確かに。普通にモニターで見れてるからその時点で問題ないって分かるな。しかし、やられっぱなしってのは良くないな。
「機関砲で反撃しますか?」
「いや、ヘルグリズリーでも貫通したんだからあんな軽装の兵士なんか一溜りもないだろ!? もっとこう、弱めの武器は無いのか?」
「じゃあ訓練用弱装弾にしましょう」
「それなら死なないか?」
「いや、当たりどころが悪ければ逝きますね。でも殺しちゃってもいいんでは?」
なんて事を言うんだ! 殺したら後始末が大変だろ? 血の臭いってなかなか取れないから食べられもしない魔物が湧くのは嫌なんだよ!




