第百七十五話:スパリゾートの新たな展望
人手はいつでも足りません。
さて、スパリゾートの新装開店日。中を貴族区画と一般人区画で分けさせてもらった。これはラケシス様の提案。施設的には貴族用を少し豪華にして、一般人用はグレードダウンして入りにくさを緩和した。いや、プレオープンの時に「こんなところ連れてこられたら休むに休めませよ」って言われたんだもん。
あ、連れて来たのはうちの甘味処の従業員ね。チヨちゃんが嬉しそうに走り回ってたからこれはこれで良かったんだろう。「休むに休めない」はポーリーさんのセリフ。まあリラックスするのに貴族とかが近くに居たらそうなるやろ。
入口で料金を支払う。番台にはゴーレムを置いた。さすがにこんなところに交代要員を消費したくない。貴族が金貨一枚、一般人は銅貨三枚だ。随分と値段の差がある様だが、貴族の方は手ぶらで来てアメニティも休憩室も食堂も揃った本当のスパリゾート。一般人の方は露天風呂など各種風呂は設置してあるが、タオルなどは別売り。なんなら持って来てもいい。
設置した石鹸はここでしか使えない、販売してない、というのを言ったら通う貴族が増えた気がする。それも女性が多い。
「スポーツで身体を引き締まらせて、温泉でゆっくりできて、髪と肌を今まで使ってたものよりも数段上の石鹸で磨きあげられる、となれば人が殺到するのは当然では?」
ラケシス様はさも当然かの様に言っている。ううん、まあその辺は特にいいか。あ、身体を洗わずに風呂に入るやつとかは取り締まったよ。そこもゴーレムに頑張ってもらった。それでもお湯は汚れるんだよ、本当に。
そんなこんなでスパリゾートが上手くいって、歩美さんのDPも貯まってきた辺りで次の計画が持ち上がった。か
「あの、ホテルを、ですね、作ろう、かと」
ホテルを作る、のは良いんだけど、それやるには今よりも多くの従業員が必要になると思うんですよ。ええと、その辺は考えてます?
「でも、その、方が、あの、みんな、いいかな、って」
答えになってない。これはあれかな。奴隷の出番かなあ。でも問題は生身で行かないとダメだってこと。うーん、ぼくと同じ部類の人間だから人前に出ること自体を忌避したくなると思うんだ。
「ピーターがいる、なら、頑張る」
どうやらピーターを伴って奴隷商人の所へ行くらしい。まああっちはあっちで頑張ってもらおう。ちなみに向かう先は帝国の方。だって奴隷商人の知り合いなんて他に居ないんだもの。
「いらっしゃいませ。おや、旦那、お娶りにでもなったんで?」
「違う。紹介のつもりだったがその様な事を言うなら別の店を探すとしよう」
「待ってください、待ってください。ちゃんとご案内しますから!」
案内されたのは比較的マシな状態の奴隷。部位欠損をどうにか出来る奇跡の技とか出来ませんから状態が悪くない奴隷を買うのが先決。可哀想だから、なんて理由で全ての奴隷を買い求めたり出来ない。
歩美さんはエイクスと相談しながら奴隷を選んでいる。ぼくにも「肉奴隷にどうですか?」なんで勧めてくる。いやだから現実の女は要らないって。
「ここに護様が来ていらっしゃると聞いて!」
お城の兵隊らしき方が飛び込んできた。
「護はぼくですけど」
「その、お忙しいところ申し訳ありませんが、何卒登城をお願いします!」
どうやら皇帝陛下が呼んでるらしい。なんかビールくれとかだと暴れてしまおう。
「不味いことになった」
皇帝陛下は謁見室にぼくが着くと同時に、玉座を放り出して駆け寄ってきた。いやまあ、ここに居るのアリスだけで何とかできるレベルだからなんにもしないけど。それよりも皇帝陛下としては良かったの?
「それどころではない! 聖国からマモォールと対面したいと熱烈なお誘いという名の強制が来たのだ」
どうやら聖国、例の宗教の総本山みたいなところらしい。それで例の騎士団の奴らを送還する時に連れて来て欲しい、と。
「行かなかったらどうなるんです?」
「その場合は、帝国の国内の教会を放棄するとの事だ」
随分と悪辣である。まあよく考えたらぼくにはなんの影響もないんだよね。
「そんな事言わんでくれ、息子よ!」
だからその息子ってのやめてくれませんかね? ほら、いい加減婚約解消の手続きやってもらえませんかね?
「聖国行って帰って来てくれたら我の名前において無効であると宣言しよう」
その宣言どこまで信用出来るのかは分かりませんが、ともかく騎士団を伴って聖国に向かう事になったらしい。お供はアヤさん。ブーブー文句言ってたけど、サボってラケシス様のところ居たのとかお咎めなしにするんだと。これ、もしかして最初から最後までヒルダさんが考えてない?
ともかく否応なしに聖国に向かうことが決まったのであった。すっと行ってすっと終わりにしてくれないかなあ。




