第百五十五話:言質は取ったよ。あとはお好きに
アヤさんの豊胸薬については六十話辺りを参考に。
「陛下、まずはそれよりも優先すべき事があるんじゃないですか?」
とても真剣な表情でアヤさんが皇帝陛下を咎める。まるでアヤさんじゃないみたいだ。口には出さないけど。その目は普通に軍人のように厳しい。いや、軍人なんだけど。大尉だし。
「ここに辿り着くまで何も食べてないんで何か食べさせてください」
前言撤回。アヤさんはアヤさんだった。いやまあ確かに生存の為にも空腹を満たすのは間違ってない。腹が減っては軍ができぬとも言うしな。
「アイン、何か作ってあげて」
「カップ麺でいいのでは?」
「お腹に溜まるものがいいです」
「だそうだ。アイン、冷凍食品でもあっためてやってくれ」
「それでしたら別に。直ぐにお持ちします」
なんか渋々って感じ。でもいつもぼくには食べろ食べろって言ってくるのにこの二人にはカップ麺でいいなんてなんからしくない気がするなあ。
それから冷凍食品のパスタとハンバーグと唐揚げを食べさせた。皇帝陛下がビール飲ませろとか言い出したがそれは無視。
腹も一通りふくれたので食休みのついでに事情わ聞いてみた。
「本当にビールが欲しいだけでここまで来たんですか?」
「うむ、まあそれだけでは無いと言えば無いのだが」
「陛下、やっぱりダメですよ。護さんたちに出来るとは思いません」
ここで「できらぁ!」って言うとドツボにハマってどっぴんしゃんな事になりそうなので敢えて黙っておく。
「チラッ」
いや、アヤさん、そんな口でチラ見されても仕方ないんですけど。なんも話してくれないなら引き受けませんのでよろしく。いや、話聞いても引き受けるとは言ってないんだけど。
「仕方ないですね。私から話しましょう」
ため息吐いてアヤさんが話し始めた。内容としては割と真面目な話。この森からのスタンピードの調査なのだとか。今までは三年に一度くらいの周期で調査をしていたらしいのだが、森に今までとは違う異変が起こったのでイレギュラーではあるが調査隊を出そうかということになったらしい。
「その、森の異変ってのは何か重大なものなのですか?」
「我が国にとっては大変にな」
そんな重大な事件が起こってるなんて、森にいるぼくとしては気が気じゃない。これは協力するというか支援メインでもなんかするしかないかも。
「具体的にその森の異変というのは?」
「まず、どこからともなく出自不明の家がいつの間にか出来上がっており、そこの軍事力が帝国を合わせたよりも上だという国防上にも大変由々しき事態なんだが」
家の事じゃねーか! いやまあ確かに帝国としてはそれはあるよな。いきなり森の中に一軒家が現れたんだもん。でも軍事力ってそんな大袈裟な。
「ご主人様、恐れながら帝国と戦争しても恐らく負けないかと。侵略するには進軍させなければなりませんので今は手が足りませんが、ゴーレムが量産出来ればその問題も解決すると思われます」
あ、皇帝陛下もアヤさんも固まった。いや、そりゃ固まるよなあ。侵略の準備は出来てますよって言ってるようなものだもん。
「その、護さんは帝国を侵略する気があるのですか? あ、それなら私を第何夫人でも良いので娶るつもりはありませんか? 妾でもいいです」
「マモォールよ、お主は我の娘婿よな? そんな義父に酷い事はせんよな?」
「アヤさんを娶るつもりはありませんし、皇帝陛下の娘婿にもなる気はありません」
「そんな!? ほら、おっぱい揉んでいいから!」
「負けるか! なんなら我の雄っぱいも揉んでよいぞ?」
胸を突き出してくるな! というかアヤさんのは豊胸薬で盛ったやつだろ。いや、あれから元に戻るわけでもないから肉体改造には成功してるんだが。あと、皇帝陛下の雄っぱいはいらん。それは胸板というのだ。
「そんな事しなくても帝国を侵略とかしませんて。ヒルダさん見てたらそんな気起きないし。あ、でもヒルダさんが手伝ってくれるなら考えなくも」
「ヒ、ヒルダはダメだ! あの子は我の大事な部下なのだ!」
「大事な部下って言うならちゃんと大事にしてあげてください」
さて、そろそろいいかな。アスカの方も準備が出来た事だし。アスカにはぼくが扉で帰ってくると同時にある人物を連れて来るように言いつけておいた。その人物は先程から隣の部屋でこの会話を聞いているのだ。
「大事にする」
「仕事押し付けないでしますか?」
「もちろんだ! 帝国に戻ったらヒルダの代わりにちゃんと仕事をする!」
「あ」
おや、どうやらアヤさんは気付いたらしい。あながち優秀な兵士というのは間違ってないのかもしれない。
「その言葉、本当ですね?」
「あー」
アヤさんが頭に手を当てて天を仰いだ。予想通り、いや、直前で気付いたのかな。ガチャリとドアが開いて現れたのはアスカに連れてこられたヒルダさんだった。




