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食事事情は突然に

今回は少し短めです。

やって来ました城下町ですよ!

ロンドン風の街並みに若干…いえかなり興奮しつつ、辺りを見渡します。


「主様〜、人がい〜っぱいですよ〜」

「そうだな」

「リオ様〜、はしゃぎ過ぎて迷子にならないで下さいね〜」



後ろにいるお兄さん達は、騎士団副隊長のジルさんと、魔法師団副隊長のダンジュさんで、今は私達の護衛中です。

副隊長さんが護衛でいいのかと問えば、上は謹慎、下は無償奉仕で脳筋隊の皆様全員あちこちで仕事おわびをしているとか。

御愁傷様です。


因みにジルさんはチャラ男風で、ダンジュさんは筋肉ムキムキ兄貴タイプです。ムキムキの魔法使い…シュールですね。いつか腹筋を触らせて欲しいものです。

別に護衛の必要性は感じませんが、どちらかと言えば案内人兼監視、といったところですか?




だんだんと威勢のいい呼び声や、肉や魚の焼ける匂いが漂ってきます。

鮮やかな色の野菜や果物、鍋など台所用品や古着屋までありますよ。

うわ〜、何処の世界も主婦パワーは素晴らしいですね。あちらの店ではハンターの目付きで良い品物を次から次に手に入れてますよ。て、手の動きが見えません。(汗)




キョロキョロ見ていると、一件の焼き物屋さんが目に留まりました。

…あそこの串焼きは美味しそうですね〜、…はっ!これは罠ですね!?宮廷料理がアレだったのです!慎重に〜、よ〜く見て〜、屋台の味付けは…塩?む〜。やっぱり見ただけでは分かりません〜。

あまりにも私がじーっと見ていた事が可笑しかったのかジルさんが笑いながら言いました。


「リン様、あんまり熱心に見てたら穴が空きますよ。

お口には合わないと思いますが試しに食べてみます?」

「おい!?ジル!」

「そこの串焼きを一本」

「リン様!?」


ものは試しです。

リオ君は肉や魚が食べれないし、まずかったら彼らに渡しましょう。

わ〜余分な油が出てて、熱々ですよ〜。さてさて、お味は…。


「…美味しい」


肉の臭みは多少残っていますが、文句無しに美味しいですよ!

当たりがキター!塩のみの味付けですがまたそれが美味しいのです!

思わず頬が緩んでしまいますよ。


「…………、う、美味かったら良かったですね。ここいらは安いこともあって、一般人や給料の安い下っ端あたりが良く飯を買いに来るんですよ。

俺はごちゃごちゃ味付けしてるよりはこっちの方がシンプルで好きですけどね」

「ああ、私もだ。城の食事はやたらと香辛料やら蜂蜜やらこれでもか、と言うくらい入っていたな」

「だってそれが貴族様の食事ですもん」

「?」


ジルさん曰く。

香辛料や蜂蜜等は高級品の類で、それを沢山使っている料理は上級貴族の一種のステータスとか。

沢山使っている料理は裕福さのアピールと、もてなしでもある、と。

……つまり私の食事は最高級の物を沢山投入した健康やらを全て無視した見栄の料理とか?



うふ。うふふふふ。

…ば、馬鹿かーーーーっっ!!!



国王は国一番のお金持ち!今さら裕福さのアピールなんか要りません!私のあの食事しれんは一体!?

お、も、て、な、しぃぃ〜?

日本人を舐めるなー!!セレブなんて皆、糖尿病や高血圧になってしまえー!


因みに庶民の食事は僅かな調味料しか使っていないので貴族達に見下されているそうですが、庶民で何が悪いのですか?シンプルイズベスト!

庶民料理最高です。




「リン様に気に入ってもらえて良かったですよ〜。

下手な物食わせたりしたら、後でアゼル様に何言われるか。

…って何本目ですか!?」

「気づかなかったのか?リン様は今から7本目だ」

「早っ!」

「私ばかり食べてしまったな。

この辺りにリオも食べれそうな果物か野菜でも売っていないのか?」


先程ダンジュさんに1本進めてみたのですが護衛中と断られ、リオ君は肉が食べれないので心置き無く一人で食べてしまいました。メシウマー!です。


二人がどの店がいいかと悩んでいると、端にある店から威勢のいい女性の声がかかりました。



「果物かい?じゃあアタシの店が一番さ!どうだい、この新鮮さ。

今の時期ならミオの実が食べごろだよ!」

「ミオの実?」

「二人とも知らない?じゃあきっと驚きますよ〜」


ジルさんが笑いながら買った実を渡してくれます。枇杷に似た丸くて野球ボールぐらいの黄色果物で、上に突起の様な棒が付いています。

これを抜いて食べるらしいのですが…っ。

わっ!びっくりしましたよ!

抜いた途端に柔い皮が裂け、まるで花が開くようにスルスル落ちて、バナナを剥いたような状態ですよ!

中からは濃い黄色の実がゼリーみたいにプルプル揺れて甘い香りで私を誘惑してきます。



「主様、これ凄いですね!ぺろ〜んって皮が全部剥けましたよ〜!…むぐ、…美味しい〜!」

「………、甘くて美味しい…」


瑞々しくて美味しいです!

先程の食事で胃が荒れてデザートまで辿り着けなかったのですが、これは大当たり!

口の中いっぱいに広がる味はぜんせ、働いていた頃に一度だけお客様に貰った高級マンゴーに近い味です。

しつこくなくさっぱりとした南国系の甘さですね。これなら何個でも食べれます。

…ん?何故に皆さん静かなのですか?


「…どうかしたのか?」

「い、いえ、なんというか驚いたと言うか別に、え〜」

「???」

「うわ〜。僕、主様の笑顔って初めて見ましたよ。

い〜つも、綺麗ですけど笑顔はもっと綺麗です〜」

「…そ、そうか、ありがとう」


他に何を言えと!?

嬉しいやら恥ずかしいやら。

人目が無かったら床でゴロゴロしたいです。リオ君、貴方は私を悶え死にさせる気ですか!?恥ずかしいー!!



「…凄いな」「お持ち帰りしたい!」「…ガキは最強だな…」「アタシは将来が不安だよ」「あの美人さんも、あのセリフでも冷静なんて凄いな」「可愛いわ〜」「何かワシまでキュンときたわい」


最後の人は変ですが、皆さん口々にコソコソ喋っているようです。

私もその意見には賛成!天然は恐ろしい。


内心ゴロゴロと恥ずかしがっていると人混みの向こう側から子供が二人走ってきます。



「こらー!またんか、悪ガキどもーー!!」

「遅いぜ、おっちゃん!」

「太り過ぎだよね〜」


囃し立てながら子供達がこちらに向かって走ってきます。

あ、危ないですよ、リオ君!


ーーードンッ!!…グシャ。



リオ君がぶつかって倒れ、ミオの実が潰れました。

そのまま横を通り抜けようとした少年の足を引っ掛けると、避けきれずそのまま地面にダイブしました。倒れた少年の首根っこを掴み猫のようにぶら下げます。

もう一人の少年もダンジュさんに捕まっています。ちゃんとお仕事していますね。

少年が暴れますが、人間に見えるとはいえ、本性はドラゴンです。何の苦もなくプラプラと揺らします。

ふ、可愛いものですよ。



「離せ!離せよババア!!」




ーーー教育的指導が必要のようです。




















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