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劔先輩無双


「御堂く〜ん! ボクのハニー! 助けに来たよッ!!!」


 劔先輩ッ!!!


 どうして呼んだらすぐに来たのかとか、どうしてこの辺にいたのかとか正直、いろいろと質問したい事はある。


 だがとにかく、今は助けに来てくれてありがとう!


「劔先輩ッ! お願いします! 助けてくださいッ!!!」


「ああ……。助けを求めるキミの声を聞くだけで……ボクの下腹部は疼いて仕方ないよッ!」


「ひぃ……!」


 いけない。ヨダレを垂らしながら下腹部を押さえる劔先輩に思わずドン引きしてしまった。自然と「ひぃ……!」なんていう悲鳴が口から漏れてしまった。


 落ち着け、御堂涼太。劔先輩はあくまで味方。味方なんだ。たとえ、俺を見つめる劔先輩の視線から強い貞操の危機を感じたとしてもだ。


「テッ、テメェはなにもんだ! 急に現れやがってッ!」


「フフフフフ……。ボクは御堂きゅんの将来のお嫁さんにしてお婿さんになる者だよッ!」


「なっ、何を言ってやがる……!」


 うん、本当に何を言っているんでしょうか?

 こんな状況だと言うのに、ナンパ男さんと意見が合ってしまう。


 なんだお嫁さんにしてお婿さんって。アナタの性別は女性でしょうが!


 お婿さんになることはどう頑張っても出来ませんよ!


 劔先輩の発言にツッコミたいのは山々であるが、助けてもらっている手前、俺にできるのは精々、瞳で劔先輩に訴えかけることぐらいだ。


「フフフ、分かっているよ御堂きゅん。ココが片付いたらホテルへ行こうじゃないか。なぁに、お金なら気にすることは無い。ボクが全て出そうじゃないか」


 いや、そんなこと少しも思ってなかったわ!


 こんな状況中にホテルへ行こうとか考えるかッ! いったい、今の劔先輩の頭の中がどうなっているのか見てみたいものだ……。


 もはや、今の豹変した劔先輩には呆れさえ感じる。


「ムッ! もしかして、婚前に借りを作りたくないと言うわけか! ……気にしなくていいさ、御堂きゅん。いずれ、ボクの資産はキミとボクの共有物になるんだ。気を使うことは無いんだよ、マイハニー!」


 アカン……。


 もはや、劔先輩の思考は俺なんかでは想像できない領域まで昇華してしまった。いや、昇華じゃなくて堕ちたのか?


 どちらにしろ、俺には理解できないという意味では同じだ。


 どうやら、劔先輩の中では俺と結婚するのは既定路線らしい。誓って劔先輩とそんな約束を交わした覚えは無い。


「おいっ! なに勝手に話してんだお前ら! 状況が分かってねえのか!」


 うむ。今回ばかりはナンパ男さんの意見が正しい。男たちを放ったらかして、俺たちは何をやっているのだろう……。


 ただ、男よ。一つだけ間違っているぞ。


 俺と劔先輩は一言も会話なんてしていない。話しているのは彼女ひとり。俺は劔先輩を見ていただけだ。


 勝手に彼女が話し始めて、勝手に納得しているだけなのだ。これは断じて、会話と呼べる代物ではない。


 横にいる神崎なんて理解できない状況に混乱するあまり、アワアワとするばかりだぞ。俺も一緒にアワアワしたい……。


「フフフフフ……。ボクと御堂きゅんの語らいを邪魔するなんて、良い度胸じゃないか!」


 だから、語り合ってねぇって。


 怒りに支配されているのか、劔先輩の眼が三日月のように細くなる。いつかの時に見たアナコンダの眼だ。


 但し、俺との事件以来、成長した劔先輩は今や、アナコンダから龍へと超進化した。鯉から龍になるのが普通に見えるほどの蛇から龍への超進化である。


 龍へと超進化した劔先輩が一歩、男たちへと足を踏み出す。


「とりあえず、キミたちには生まれたことを後悔してもらうぞ!」


 ーーシュン!


 一瞬、瞬きした間に劔先輩の姿が掻き消える。


「グハッ!」


「ガハッ!」


「ブベラッ!!!」


 さっきまで目の前に立っていた男たちが断末魔の声を吐きながら、四方八方へと吹き飛んでいく。


 不思議なのは、男たちが吹き飛んでいく姿は見えるのに、肝心の劔先輩の姿だけはまったくといって見えない。


 いや、正確には時折、ブレた人影が見える。しかし、俺の視覚で捉えられるのはそこまでだ。きっと、その人影が劔先輩なのだろう。ハッキリとは見えないが……。


「ブベエーッ!」


「ボハッ!」


「ゴハッ!」


「アギャアーーッ!!!」


 瞬く間に8人もいた男たちは、漫画みたいな吹っ飛び方でたった一人まで減ってしまった。


 俺たちがあんなに苦労して逃げたのがバカみたいだな……。


 俺たちが8人相手にあんなに苦労していたというのに、劔先輩の手に掛かれば1分もかからないなんて。


「ひぃいいいいい!!! なっ、なんなんだよお前はぁああああああ!!!!!」


 ひとり、残ったナンパ男はほとんど狂乱状態だ。


「フフッ……フフフフフフフフ! あとひとりぃいいいい!!!」


 笑いながら男を見つめる劔先輩からは助けられる立場の俺でさえ、恐怖を覚える。暗い部屋の中でも眼だけが何故か、爛々と妖しく光が灯っている。


 ついさっきまで襲われかけていたというのに、今では急遽、龍退治をすることになったナンパ男に同情を禁じ得ない。


 ナンパ男よ……。

 お前にドラゴンスレイヤーの称号は程遠いようだな。


「ひーとーりーいぃぃいいいいい!!!!」


「いっ、イヤァアアアアア!!! 近付かないでーーーーーッ!!!!!」


「フハハハハハハハッ!!!!!」


「ギャアアアアアーーーーーーッ!!!!!」


 ーーバコンッ!!!


 男がきり揉み回転しながら飛んでいく。飛んでいった男は扉にぶつかり、扉ごと外へと消えていくのだった。


 男が全て沈黙した部屋でたった3人、俺たちだけが立ち尽くす。


「あっ、ありがとうございました! 劔先輩ッ!」


「フフフ……。どういたしまして! いとしの御堂きゅん!!!」


 こうして、俺と神崎は窮地から脱するのであった。


 ……劔先輩のおかげで。


「面白かった!」


「続きが気になる、読みたい!」


「今後どうなるのっ……!」


と思ったら


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面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちでもちろん大丈夫です!


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