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スキルトレーダー【技能交換】 ~辺境でわらしべ長者やってます~  作者: 伏(龍)
第3章 辺境都市編

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登録 → 説得 

 それから、リミ、シルフィと順調に登録を済ませる。リミも修行している間に誕生日がきていたから問題なく登録できたし、獣人やエルフ、奴隷だということも登録には問題がないようだったので安心した。  

 

 ただ、問題だったのはメイの登録だった。メイの見た目はどう贔屓目にみても十歳前後。冒険者ギルドの登録制限である十四歳には見えない。当然、レナリアさんもメイが冒険者登録をするとは考えていなかったらしく、魔法紙も三枚しか用意されていなかった。

 でも、ダンジョンに入るには冒険者資格が必要だったはずで、このままだと僕たちがダンジョンに入っている間はメイをひとりで待たせなくちゃいけなくなる。だけど、それは論外。まだ人間としての常識にすら疎いメイをひとりで留守番させるなんて、ちょっとあり得ない。まだ戦う力のないメイをダンジョンに連れていくというのも問題といえば問題だけど、無茶をしなければダンジョンの低層くらいなら、僕たちがメイを守りながらでも探索ができると思う。その間にメイが戦う力を身に着けてくれれば……そのためにもなんとかレナリアさんをだまくらかして登録をしてもらわなくては。


「じゃあ、新人さんのための説明をするからこっちに移動してね。ここで説明を始めると後ろがつっかえちゃうから。マナリナ! 新説(新人説明)に入るから窓口お願いできる?」

「は~い、いいですよ~。代わりま~す」

 

 レナリアさんが席を立ちつつ、後ろに声をかけると、事務仕事をしていたらしいマナリナと呼ばれた女性が席を立った。桃色の髪をふわっとさせたショーットヘア、体格は小柄で可愛らしいが……そのぽわぽわした口調と表情にそぐわない、たゆんたゆんした胸部衝撃吸収装甲が破壊的なビジュアルでインパクトだった。うん、なに言ってるかわからないね。


『おぉ! 典型的なロリ巨乳だな。しかも天然系か……リューマならあっちを引いてもおかしくなかったな。デキる系スレンダーお姉さんも悪くはないけどな』


 タツマ、うるさい。


「あとはよろしくね、マナリナ。説明が終わったら交代するから」

「大丈夫ですよ~。今日は先輩、早番ですから~それ終わったらあがってください~」

「そう? それじゃあお言葉に甘えるわね。すみません、お待たせいたしました。こちらへどうぞ」


 マナリナさんとの引継ぎを済ませたレナリアさんは、バインダーのようなものに挟まれた資料を持つと僕たちに声をかけてくれる。そのままカウンターを出て階段の方へと誘導されたので案内されるままに二階へと上がる。


「二階は物販スペースになっています。高価なものは置いていませんが、初心者から中級者くらいまでの冒険者に役立つものがいろいろ置いてあります。お金が貯まるまではこちらを利用されるといいですよ」


 確かにいろいろなものが売っている。武器や防具、ポーションや薬草などの薬類。採取や採掘に使うような道具、栄養や軽量化重視の携帯食など冒険に必要なものがここだけで揃いそうだ。ただし、【鑑定】してみてもどれも普通のもので、この前みたいな掘り出し物が見つかるようなことはなさそうだ。


「二階の残りの半分は、冒険者同士で相談ができる個室になっています。パーティに勧誘するときの話し合いですとか、報酬を分配するときなどによく利用されています。一時間銀貨一枚程度で貸し出しておりますのでご入用の際は二階のカウンターに申し出てくださいね」


 二階の説明を受けながら一室に案内される。部屋の中はテーブルと机があるだけの空間だったけど、広さはそれなりにある部屋だったので全員が入っても狭苦しい感じはしないのは助かる。勧められるままに全員が椅子に座るとレナリアさんが口を開く。


「では、冒険者ギルドについて説明をさせて頂きますね」

「あ、すみません。その前に、さっきはやってもらえなかったこの子の冒険者登録をお願いしたいのですが……」


 僕の隣に座っていたメイの頭に手を乗せてレナリアさんにお願いする。

 

「あの、すみませんリューマくん。冒険者ギルドの登録は十四歳からになっています。とは言っても基本的には自己申告で、あえて鑑定紙を使ったり、鑑定師に確認させたりはしていませんが……明らかに十四歳未満と思われる場合は別です。えっと……メイさん? はどう見ても十歳前後ですよね?」


 だよね、いくらメイが百十四歳だって言っても信じてもらえるはずないよね。 でも十四歳以上なのは間違いないし、嘘はついてない。だからちょっと小細工をしてみてもいいよね。


「いえ、こう見えてもメイは十四歳です。ちょっと特殊な事情があって幼く見えますけど間違いありません」

「そうは言われましても……私共といたしましては十四歳でも早すぎるのではという話も出ているくらいですので」

「そうなんですね、でもこちらもパーティのひとりを欠いてしまうのは危険を伴うので……申し訳ありませんが、メイがいないことで僕たちが負傷、もしくは死亡してしまったらギルドはなにかしてくれるのですか? 残されたメイのその後の生活を保障してもらえるんでしょうか?」

「そ、それは! ……ギルドでは無理です」


 ちょっと意地悪な質問だけど、ギルドがそういう部分で冒険者の味方じゃないことは父さんたちに聞いて知っているからこの回答は勿論予定通り。


「ですよね。だったら……」

「ですが! 規則は曲げられません」

「はい、勿論です。なので、メイを鑑定してください。そこで十四歳だということが確認できれば問題はありませんよね?」

「それは……そうですが。鑑定紙は金貨五枚、これは冒険者の持ち出しになります。それに説明はこれからでしたが、登録にはひとり金貨一枚かかります。こちらの費用は採取などの簡単な依頼を規定数達成していただくことで免除されますが鑑定紙代はそうはいきませんよ?」


 金貨にどのくらいの価値があるのか、正直いってあんまりよくわからないんだけど街への通行料が銀貨二枚だったことを考えると結構高い、のかな?


「はい、構いません。ただ……手持ちのお金がないので魔晶や素材を買取ってもらいたいのですが」

「それはギルドとしてもありがたいお話ですが、金貨五枚分というのは簡単なものではありませんよ」


 そうなのか……僕たちが今まで集めてきた素材や魔晶で足りるといいんだけど、足りなかったから最悪装備をひとつ質に入れることも考えなきゃならない。


「シルフィ、魔晶を」

「はい、リューマ様」


 頷いたシルフィがマジックバックに両手を入れて取り出した魔晶をガラガラとテーブルの上に置く。それを見ていたレナリアさんの表情がカキンと固まる。


「あの? レナリアさん? これで足りますか?」

「ひゃえ? あ、たり……え、えぇぇぇぇぇぇ!」


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