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スキルトレーダー【技能交換】 ~辺境でわらしべ長者やってます~  作者: 伏(龍)
第2章  旅路編

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馬車 → 旅立ち

「へへぇ、りゅーちゃん似合う?」

「うん、よく似合ってる。可愛いよ」

「えへへぇ、ありがとうね。りゅーちゃん」


 にこにこしながらぴょんぴょんと跳ねているリミの前髪を緑睡蓮が彩っている。本当はもっと映える場所があると思うけど、ローブで耳を隠しているから僕に見てもらうには前髪に着けるしかなかった。でも繊細な細工と、淡く塗られた緑の色彩はとてもリミに似合っている。


「リューマ様、わたしたちはどうですか?」


 メイの手を引いているシルフィのたわわな胸のところには丸くなって眠る白猫のブローチが、そしてシルフィと手を繋いだメイの手首には草の蔓と小さな花で編まれたリングを模したブレスレットがある。シルフィの白猫のブローチはいままで飾り気のなかったシルフィのワンポイントとして存在感を放っていたし、メイのブレスレットも蔓は艶やかな緑、小さな花のところは透き通るような黄色で塗られ、メイの褐色の肌にマッチしている。


「うん、似合うと思っていたけど、想像以上だったね。ふたりとも可愛いよ」

「ほんと! メイ可愛い? リューありがとー」


 やっぱり女の子にはプレゼント作戦は有効だった。しかも僕が持っている兎が意匠された指輪と合わせて四つで銀貨一枚という破格の値段。たったそれだけで、リミは【毛艶1】で髪が綺麗に輝き、シルフィは【冷気耐性1】で寒さに強くなる。そして、エネルギーが不足気味で疲れやすいメイにはありがたい【疲労軽減1】の効果が付く。

 僕の指輪はお腹がすいちゃうから着けてないけどね。


 こんな凄いアクセサリを作れる人ならぜひ会ってみたいと思って、雑貨屋のおばちゃんに作成者を聞いてみたんだけど、作成者はモーリスという職人の男性で一年のうちある時期だけこの村にきて、ひたすら木彫り細工をしていくらしい。その際に完成したもののいくつかを滞在費の一部として置いていく。といってもこんな辺境の村では女性も多くないし、アクセサリを買う余裕のある人も少ないからいつも売れ残ってしまう。ただ、冒険者たちが新人研修にくると、研修終わりに記念品として売れることがあるので店に置いてあるらしい。

 だがここのところは魔物が増えてきていたため、新人研修も別の場所で行われ冒険者がこなかったからまだ売れ残っていたようだ。これはメイの隠れたファインプレイってことだよね。その話を聞いて思わずメイの頭を撫でちゃったよ。

 どうやらモーリスさんはフロンティスを拠点に、いろいろな街へ行ってはなにかを作っているみたいなので運がよければフロンティスで会えるかも知れない。




 そして翌日、昼過ぎにとうとうフロンティスからの馬車が着いた。といっても街からの物資を降ろして、この村からの街へ送るものを積み込んだりしているうちに日が傾いてしまったため、その日は出発できなかった。そして今日、僕たちはセインツさんの紹介で立場上は護衛として馬車に乗り込み、辺境の街フロンティスへと向かう。


『いよいよだな、リューマ』

『うん、まだ三日くらいかかるけどね』


 最後の点検をしている馬車を眺めながら隣にいるモフの頭の上でタツマがぷるるんと震える。女性陣は馬車をひく馬に興味が津々で餌を上げたりしてはしゃいでいる。


『冒険者か……羨ましいぜ』

『そうか、タツマも憧れてたんだね……でも、僕たちと一緒にやろうよ。登録こそできなくったって僕にとってはタツマは間違いなく優秀な冒険者だよ』

『……へ、おだてたってなんも出ねぇっていつも言ってるだろ』

『あはは、そうだったね…………ねぇ、タツマ覚えてる?』

『あ? なにをだ』

『僕との契約』

『…………よく覚えてたな、四年も前の話を』


 転生に失敗したタツマと初めて話したあのとき、僕が強くなれるように助言をしてくれる代わりにタツマを保護し、この世界のことを教えるという同盟を結んだんだ。


『忘れるわけないよ、僕とタツマの同盟の契約だもん、あのときは冒険者になるまでっていう約束だった』

『ああ……』

『延長……ううん。同盟は破棄でいい』

『うん?』

『街にいって、冒険者になってからも一緒にいるよね……だって、僕たち……と、友達……だろ?』

『……へ! しょ、しょうがねぇなぁ。俺も田舎の知識しかねぇし、街の知識を覚えるまでは一緒にいてやってもいいぜ』

『本当! よかったぁ……街にいって冒険者になるのはたのしみだったんだけど、それだけが心配だったんだ。これからもよろしくね、タツマ』


 僕はしゃがんでタツマへと手を差し出す。


『ち! おかしな野郎だな。たかがスライムによ』


 毒づきながらも、もにょもにょと俺の手に触手を絡めてくるタツマ。


「りゅーちゃぁん! 出発するってぇ!」

「わかった! いまいくよ」


 モフごとタツマを抱きかかえた僕は小走りに馬車へと走っていく。僕たちの冒険はここからやっと始まる。

 

 リミ、シルフィ、モフ、メイ……そしてタツマ。みんながいればきっとなんで乗り越えていける。青く晴れた空の下、僕はそう思っていたんだ。このときはあんな別れが待っていることなんて思いもしなかった。


これで第二章が終了です。

第三章からはいよいよ冒険者になってリューマ達の冒険が始まります……たぶんw

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