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スキルトレーダー【技能交換】 ~辺境でわらしべ長者やってます~  作者: 伏(龍)
第2章  旅路編

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料理 → 買い物

 翌日、僕たちが朝食の準備をしているとダンジョンに向かう前にアキーナさんが挨拶にきてくれた。そのときに山で採れた食材で作った朝食をちょっとわけてあげたら、アキーナさんはそのおいしさにびっくりしていた。


「私たちが村で食べているものよりおいしいですよ、これ? 調味料だってろくにないはずなのにどうやって」

「塩を少々とあとは山菜や果実を使って味付けをしてます。スープも山で狩った獣から出汁をとっています」

「もしかして【料理】スキルを持っています?」

「はい、僕たちは全員【料理】スキルを持っていますし、リミはその中でも達人級なんです」

「す、凄いですね……疑っていたわけではないのですけど、本当に山の中でも快適に生活していたんですね。私たちのパーティにはそういう意味で頼りになる人がいないのでとても羨ましいです」


 確かにアキーナさんのパーティには生活系のスキルを持っている人はいなかった。それだと長期の移動や野営のときはほとんど保存食のみの生活になる。ただでさえ野営は緊張の連続でストレスなのに、食事もそれだといろいろ辛いと思う。

 どうやらアキーナさんに言わせると冒険者で【料理】スキルを持っている人はほとんどいないみたい。なぜなら【料理】スキルがあるような人は危険をともなう冒険者なんかしなくても安定した働き口がいくらでもあるんだって。ポルック村では【料理】スキルがあっても別になにか得することはなかったけど、やっぱり大きな街はいろいろと違うんだな。

 話をしている最中ずっとアキーナさんから羨望の目を向けられてちょっと鼻が高い。まあ料理が美味しいのはリミの力によるところが大きいんだけどね。


「あっと、そろそろいかないと。ではしっかり調査してきますね、リューマ君。美味しい料理をありがとうございました」

「いえ、またどこかでお会いしたときにはもっとちゃんとしたものをごちそうしますね」

「え! 本当ですか! それは楽しみです。街に帰ったら探しちゃいますよ」


 そう言って笑うアキーナさんの目は笑っていない。どんだけ食生活に苦労しているんだろう。でも、街に知り合いなんているはずもない僕たちだから、知っている人が声を掛けてくれるのはきっと嬉しいことだよね。


「はい、いつでもお待ちしています。皆さんなら強いから問題ないと思いますけど、気を付けてくださいね」

「そうですね、油断しないように頑張ってきます」


 小走りに去っていくアキーナさんを見送って振り返ると、不機嫌を表す耳と尻尾の動きをしたリミがジト目で僕を見ていた。


「な、なに? どうかしたのリミ」

「りゅーちゃん、鼻の下のびてる……」

「え! そ、そんなことないよ。アキーナさんはこの村の冒険者パーティのひとりで、親切にしてくれた人だから……それだけだよ」

「ふぅん……」


 ジト目のリミにちゃんと説明をしたのにリミの目はジト目のままだ。ていうかよく考えてみたらジト目のリミなんて初めて見るかも知れない。


『そりゃあ、いままでお前の周りにお前がデレデレするような相手がいなかったから嫉妬することがなかったせいだろ』

『え? デレデレとかしてないよ。それにそんなこと言うならシルフィはどうなの?』

『エルフはあんな事件があったから最初のころはわだかまりがあったろ。お互いに馴染む頃には猫嬢ちゃんもエルフと仲良くなっていたから許容範囲なんだろ。それに一応奴隷って扱いだしな』


 な、なるほど……たぶんリミはシルフィが奴隷っていうのはもう忘れていると思うけど、説得力はある。そ、そうだ! シルフィならちゃんと僕のこと助けてくれるはずだよね。


「シ、シルフィ? 別にデレデレとかしてなかったよね、リミに言ってあげてくれる?」

「メイちゃん、スプーンはこう持って……うん、上手になりました。美味しいですか」

「うん、おいしいぃ~!」

「あらあら、こぼれてますよ。口のまわり拭きますね」


 う……シルフィまで。


『けけけ、諦めな。こうなったら女は面倒臭いらしいぞ』

『面倒臭いって言ったってどうすりゃいいの? このままにしておくわけにはいかないよ』

『そりゃそうだ。こういうときは普通はプレゼントでもして機嫌を取るのが定番なんじゃねぇか?』

 

 モフの上でぷるるんと震えるタツマの言葉はまさに天啓だった。


「それだ!」

「ちょ、ちょっとりゅーちゃん。いきなり大きな声出さないでよ! びっくりするじゃない」


 おっと、いけない。思わず声に出してしまっていたらしい。 


「あ、ごめん。ね、ねぇ、早くご飯食べて村の散策にいこうよ。村長さんの家の近くに雑貨屋さんがあったんだ。魔晶とかを買い取ってもらえるなら買い物とかできるかも知れないよ」

「にゃ! お買い物?」

「うん、そうそう。リミもお買い物したことないでしょ?」

「うん! やってみたい!」


 ポルック村は基本的に財産は村で共有していたから貨幣が流通していなかった。物々交換のようなことはしていたけど形態としては配給制というのが一番近いかも知れない。だから僕やリミは冒険者になるにあたって、お金の価値や種類は教えてもらっているけど実際に買い物をしたことがない。


「シルフィはどう?」

「……してみたいです。私も里ではお金は使っていませんでしたし、人魔族に支配されてからは自分の意思はほとんどなかったですから」

「なになに~リミとシルフィがやるならメイもやる!」


 よし、勝った。


「じゃあ、早く片付けて行ってみよう。街で買い物するときの予行練習にもなるし、今日は初めての買い物だから換金ができて現金が手に入ったら好きな物を買ってあげるよ」

「やったぁ! ありがとうりゅーちゃん」


 うんうん、リミは素直で可愛いなぁ。シルフィは……さすがに誤魔化されてはくれなかったみたいだけど、誤魔化されたふり(・・)はしてくれるらしくてくすくすと笑いを堪えている。うん、大人だ。


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