驚愕 → 報告
まず、グリッドさんのレベル。僕が見たことのある中ではフレイムキマイラに次いでの最高レベルだった。ついさっきのセインツさんの記録をあっという間に更新した。スキル構成も僕が見たことのない【大剣術】とか【大槍術】だし、称号のとおり豪快なひとなんだろうな。
コリアさんは種族と年齢がとんでもない。半精霊人ていうことは精霊と人間のハーフってことになる……人と子をなせるほどの精霊なんて上級精霊の中でもさらに一握りしかいないはず。ただ年齢のわりには容姿が幼いし、スキルのレベルも低い気がする。たぶん容姿に関しては寿命が長いせいで成長速度が遅いのかな。スキルに関してはよくわからないけどあんまり真面目に訓練とかしてなかったのかもね。
でも、【二重詠唱】なんてのもあるし、【氷術の才】があるからいずれものすごい魔法使いになると思う。
そして最後がアキーナさん。
とにかく回復と守りに関しての能力が高い。耐性なんか【全耐性】だよ、すべての耐性が統合されたってことなんだと思うけど初めて見たし、いままでそんな前例があるなんてことも父さんたちから聞いていないからかなりレアなスキルだと思う。でも、そういうスキルがあるということを知れたのはよかった。僕も耐性を集めればいつか【全耐性】スキルを取れるかも知れないもんね。
ただ、気になるのは称号にタツマのステータスみたいに読めない部分があること。でも、人魔族アドニスみたいに【偽装】スキルがあるわけじゃないし、おかしいのは称号だけだから……別に問題はないよね。
『…………おもしろくなってきたな』
『え? なにが? 別にこの人たちと戦ったりはしないからね。変に手を出して敵対しないでよ』
『わかってるって』
「さて、じゃあ申し訳ないけどさっきの話を最初から聞かせてくれるかい?」
「はい」
僕は山に入ってからの出来事を簡単にだけど説明した。訓練のために山に入ったこと、ゴブリンなどが多かったことから巣などがあるかも知れないと考えたこと、潰せるような規模なら潰そうと探していたらダンジョンを見つけたこと、ダンジョンで訓練をしたこと、そして訓練に区切りをつけて山を越えてきたこと。
「四カ月近くも山の中で野宿か? 買い出しもできないのにたいしたもんだな。そのわりには小奇麗にしてるみてぇだしよ」
グリッドさんが冷やかすように口笛を吹く。
「この時期の山なら山菜や木の実も豊富ですし、辺境の山ですから獣も狩れます。寝る場所は自分たちで家を作りましたし、魔法で水を出せるのでお風呂も入ってましたから快適でしたよ」
「自分たちで家を作ったんですか? 凄いですねリューマくん。木で作ったんですか?」
アキーナさんが驚いて目を丸くしている。髪と同じの黒い瞳がなんだか吸い込まれそうだよ。
「い、いえ……僕は【木工】スキルを持っていますけど、さすがに家を作るのは無理です。僕の仲間に土の魔法が得意な人がいたので、土を加工して作りました」
「アキーナ、聞きたいのはそこじゃないよ。つまりこの四カ月はこの子たちがダンジョンの魔物を間引いていたってことなんだ」
「なるほど。この辺の魔物の増加はダンジョンのせいで、この子供がそこに入っていたからこちらの魔物が減ったということ」
コリアさんが納得したようにうなずいている。どうやらメイのダンジョンから溢れた魔物が、こっち側にも来ていたみたいだ。セインツさんたちは新人育成に引率してきてそれに気付き、新人を街に返してからもこの村に防衛で残っていたらしい。
でもここ数カ月は魔物が減りつつあって、少しずつ山を探索して魔物の発生源を捜しているところだったと説明してくれた。
「ダンジョンの入口はちょっと細工をして鍵をかけてきました。中から新規に魔物が外にでることはないはずです。僕たちの使っていた家もそのままですし、家には事情を記したメモとダンジョンの鍵も置いてきました。もし、冒険者たちがダンジョンを探索されるなら使って下さい」
「それは本当かい! どちらにしろダンジョンの発見報告はギルドにする必要があるし、これは一度行ってみる必要があるね。中の情報はあるかい?」
セインツさんが身を乗り出すようにして詰め寄ってくる。さて、どうしようかな。メイのダンジョンは一階層から九階層までマッピングも終わっているし、中の魔物の情報もある。情報提供するのは別に構わないんだけど。
『おいおい、まさかただでホイホイと情報を渡すんじゃないだろうな。どこぞの物語の中には「マップデータで金儲けをする気はない」なんて格好いいこと言う奴もいるが、俺たちにはそんな義理はねぇぞ』
『え? じゃあどうするの。四カ月も入ってたのに知らないなんて言えないよね』
『一階層のマップと魔物、あとは二階層の魔物くらいで十分だ。見た目で俺たちを侮ってる奴らだ、その程度の情報で納得するはずだ』
『……そんなものかな? わかった、言う通りにするよ』
「すみません。僕たちが入ったのは二階層の途中までなので、一階層の地図とそこまでに出会った魔物はわかりますが、それ以上は」
「ああ、うん。そんなもんだろうね、いや心配いらないよ。そこまでしかなくても全然大丈夫、なにもないよりマシだからね」
セインツさんは爽やかに笑っているけど……あぁ! なんかもやもやする。悪気はないのかも知れないけど、もう少しなんとかならないのかな。
「セインツ! そんな言い方はないでしょう? 私たちはリューマくんに情報を提供してもらうんです。しかも彼がダンジョンを見つけてくれて、彼がダンジョンを封鎖してくれなければこの村はまだ危険にさらされていたんです。もっと彼に感謝するべきです。ごめんなさい、リューマくん」
「あ、いえ。アキーナさんが謝ることでは……」
このパーティってアキーナさんがいなかったらどうなっちゃうんだろうね。あんまり周りから好かれそうな感じがしないんだけど。




