セインツ → パーティ
リミたちと別れた僕が案内されたのは、村の中央付近にある他よりも大きい家だった。そして、なんと二階建てだったんだよ! タツマの知識があるから、何十階建てとかっていう建物があることは知っているけど、実際に二階建て以上の家を自分の目で見るのはこれが初めてなんだ。高いなぁ、二階にのぼってみたいけどたぶん駄目だよね。
「お、どうやらすぐに見つかったみたいだな」
村長の家に入った僕を出迎えてくれたのは、白髪で背中の曲がったおじいさんと、三人の冒険者らしき人たちだった。どうやらこの三人がさっきセインツさんが言っていた特級冒険者のパーティメンバーらしい。
「おう、どうしたセインツ。せっかくこれから一杯やろうとしてたのによ」
日に焼けた肌と、短く刈り込んだぼさぼさの茶色い髪、そして顔の下半分を手入れがまったくされていないような無精髭に覆われた筋肉ムキムキの男の人が、妙に白く見える歯をむき出しにしてセインツさんへと笑いかける。たぶん身長は百九十センテを軽く越えている。まだ発育途中の僕は目の前に立ったら完全に見上げることになる身長差だ。
「それはすまなかったね、グリッド。でも、もしかすると私たちのこの村での滞在が終わるかも知れない話があるんだ。君たちも一緒に聞いてもらったほうがいいだろう?」
「へぇ、ようやくこの田舎の村から帰れるのか? これでやっといい酒が飲めるな」
堂々とこの村を田舎と言い切ったグリッドさんのうしろで村長が顔を引きつらせているんだけど、グリッドさんは気が付いていないみたい。僕にしてみればこの村は全然田舎じゃないんだけど……やっぱりフロンティスはすごいところなんだろうな。
「セインツ、その話は本当なのですか? 帰る帰らないは別として、この付近で異常発生している魔物たちはどうするのですか?」
グリッドさんの隣から綺麗だけど抑揚のない声をかけてきたのは、グリッドさんの胸に届かないぐらいな背丈の女の子だった。湖面のような蒼い髪を肩まで伸ばし、同じ色の瞳をした女の子の顔だちはとても美人さんだけど、ちょっと冷たい感じがする。でも、大きくてサイズがあっていないのかなと思わせる黒いローブを着ているせいかどこか幼くも見える。
「この子の話が本当なら魔物の発生源は特定されるし、最近魔物の出現数が減っていていた理由も説明がつくんだ」
「ふぅん……こんな子供の話があてになるの?」
む、見た目だけなら僕とそう変わらないか、むしろ僕より年下っぽいのに……僕はもう成人してるよ! なんて言ったら逆に子供みたいだし、結局ここは何も言わずに堂々としているのが正解なんだろうな。
「それは、話を聞いてみてからでもいいと思うよ、コリア。少なくとも彼らはシバイ山を越えてきたのは間違いないしね」
セインツさんの言葉にコリアさんは肯定も否定もしなかったが、話を聞く気にはなったみたいだった。
「セインツさん、お話を聞く相手をいつまでも立たせておくわけにはいきません。とりあず簡単に自己紹介だけ済ませて、座りましょう」
最後のひとりはこの世界では珍しい黒髪の女性だった。その背中まである長い黒髪を首のうしろでひとまとめにしているんだけど、肌が白いからなんだか髪も映えて余計に綺麗に見える。タツマの世界では黒髪の女性は珍しくなかったみたいだけど、これはなかなかいいかも。背丈は女性にしては高めで、僕よりちょっと高いみたいだから……百七十センテくらい?
白い神官服みたいなローブを着ているから僧侶さん的な人っぽい。
「そうだったね。申し訳なかった、リュートくん」
「……リューマです」
「おっと、重ねて失礼。簡単に私のパーティメンバーを説明しておくよ、こちらの大男が戦士グリッド」
「おう! よろしくな」
グリッドさんが白い歯を見せて手を上げる。
「こちらが魔法使いのコリア」
「…………」
コリアさんは無言のままだ。
「そして……」
「アキーナです。神官のまねごとをさせてもらっています。よろしくお願いしますね、リューマ君」
セインツさんの紹介を遮って手を差し伸べてくるアキーナさん。ちゃんと僕に礼儀正しく対応してくれて、優しく微笑んでくれるなんて……セインツさんの関係者はみんな変わった人ばかりだから、なんだか凄い癒されるかも。
ちょっとどきどきしながらアキーナさんの白く柔らかい手と握手をする。少しだけ汗ばんだ手に気が付かれないといいんだけど……
「よ、よろしくお願いします、アキーナさん。僕はポルック村から冒険者になるためにフロンティスまで旅をしているリューマです」
「よし、自己紹介はこれでいいかな。じゃあ座ろうか」
リビングのような部屋に置かれている円卓と椅子へと案内され、思い思いに座っていく。結局、紹介すらされなかった涙目の村長も一緒だった。さすがにちょっと可愛そうかも。
モフは足元に待機してもらい、モフの頭上にいたタツマは一緒に話を聞いてもらうために肩の上に乗せた。
『リューマ【鑑定】はしたのか?』
『あ、まだだ。あの人たちにキャラに呑まれて忘れてた』
名前:グリッド・ロンドベル
状態:健常
LV:43
称号:豪放磊落(重量武器を使うときにステータスに補正がかかる)
特級冒険者(特殊効果なし)
年齢:31歳
種族:人族
技能:大剣術4/大槍術3/格闘2
耐性(麻痺1/毒1)
遠見1/解体3/採取1/手当3
名前:コリア
状態:健常
LV:28
称号:特級冒険者(特殊効果なし)
年齢:142歳
種族:半精霊人
技能:杖術1
氷術4/水術2/風術1/火術1
毒耐性1
魔力制御2
特殊技能:二重詠唱
才覚:氷術の才
名前:アキーナ
状態:健常
LV:25
称号:******
特級冒険者(特殊効果なし)
年齢:21歳
種族:人族
技能:杖術2
回復魔法3/浄化魔法3/障壁魔法1/水術1
耐性(全耐性1)
魔力制御3/魔力再生3/魔力増幅3
特殊技能:無詠唱
才覚:守護の才
想像以上にとんでもない人たちだったよ。




