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スキルトレーダー【技能交換】 ~辺境でわらしべ長者やってます~  作者: 伏(龍)
第2章  旅路編

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村 → 宿

 初めて入ったポルック村以外の集落。ちょっとワクワクしたけど、入ってみればポルック村とあまり変わらなかった。むしろ、ポルック村よりも活気がない気がして物寂しい感じがする。


「ポルック村のみんなみたいに仲良しじゃないのかな?」

「……うん、そうかも知れないね」


 リミがポツリと呟いたその言葉が正解のような気がした。きっとこの村は、村人全員が協力し合わなくても生きていけるんだ。だから皆と仲良くしなくても問題がない。全員で一致団結しないと生きていけなかったポルック村の人たちとはそこが違う。


「あ、そこのおさげのお嬢さん。申し訳ないんだけど、うちのメンバーを捜して急いで村長の家に来るように伝えてもらえるかな? 多分家で寝てるか、酒場で飲んでるかだと思うから」

「は、はい! セインツ様」


 僕たちの前を歩くセインツさんが、村の娘に伝言を頼んでいる。胸の前で手を組んでセインツさんを見上げる村娘さんは頬を染めて夢見心地だ。


『けっ、いけすかねぇ奴だぜ。俺なんかスライムだっていうのによ』

『しょうがないよ、そんなこと言ったら僕だってイケメンとは程遠いしね』

『なに言ってやがる! おまえは一般的なイケメンとは違うが、女受けする顔してるっつ~の。ていうか、可愛い猫耳の幼馴染とハイエルフ美人巨乳奴隷がいる時点で勝ち組だからな!』


 タツマの強い思念が頭に響いて痛いくらいだ。……でもまあ、確かにタツマの言う通りか。僕にはリミとシルフィとメイがいる。シルフィとメイからは男として好かれているかどうかはわからないけど、仲間としては認めてもらえてると思うし、周りから見たらハーレム状態に見えなくもない。


「すまないね、できれば私の仲間たちにも話を聞いてもらいたいんだ。君たちも疲れてるだろうし、話は一度で済ませたほうがいいだろ?」

「はい、僕は構いません。でもできれば、仲間たちは先に部屋で休ませてあげたいのですが……」


 ポルック村以外で獣人や(ハイ)エルフがどういう目で見られているのかがわからないから、リミとシルフィは念のために外套のフードで頭を覆って耳を隠している。ただ、いつまでもフードをかぶっているのもストレスだよね、きっと。

 先に部屋に入ってもらえば部屋の中ではくつろげると思う。


「うん? ……なるほど。確かにそうだね、女の子には山越えは過酷だっただろうからね。じゃあ、通り道だから先にそっちに寄っていこう。村長へは事後承諾になるけど、もともとあの施設は冒険者ギルドのものだからね」


 そういってセインツさんが案内してくれたのは長屋のような建物だった。横に長い建物に、扉が5つ並んでいる。


「この村まではフロンティスから馬車で三日ほどかかるんだ。馬車で三日というのは新人冒険者たちの野営や護衛の訓練にちょうどいい距離でね。ギルドの研修でよく使われるんだ」


 なるほど、その時の研修で使う建物がこれということなのか。確かに定期的に使うなら村に施設を作ってしまったほうが経済的かつ効率的かも。

 セインツさんは一番左にある扉の前までくると、僕たちを振り返った。


「えっと……部屋は空いているんだけど、各部屋は四人部屋だから君たちは一緒でいいよね?」

「はい、構いません」


 セインツさんが気にしたのは、僕がこの中の誰かと……ふ、深い仲なんじゃないかということだと思う。イチャイチャするなら部屋を分けようか? 的な気遣いだったんだろうけど……今の僕たちにはまだ不必要な気遣いかな?

 もちろんそういうのに興味はあるし、ふたりにはしょっちゅうドキドキさせられるけど……僕にはまだ早いと思う。タツマには何度も『ヘタレ!』って言われてるけど、冒険者としてある程度やっていけるようになるまではと思ってる。


 セインツさんはうなずくと部屋の扉をノックして中にいる人と話をし始めた。漏れ聞こえてくる話をまとめると、どうやら左端の部屋に住んでいるのはギルドの職員でこの長屋の管理人みたいなことをしているらしい。

 さすがは王級冒険者ということなのか、話はすぐにまとまったらしく管理人から鍵を受け取ったセインツさんが僕たちに鍵を差し出す。


「じゃあ、一番右端の部屋を君たちに貸すから今日はそこを使ってくれ」

「はい、ありがとうございます」


 お礼を言って鍵を受け取った僕は、後ろを振り返るとシルフィに鍵を渡す。


「じゃあ、先に部屋に行っていてもらえる?」

「ですが、リューマ様。ひとりではなにかあったときに……」


 鍵を受け取ったシルフィが声を(ひそ)める。


「普通の村みたいだし大丈夫だよ。一応モフとタツマには一緒に来てもらうし」

「……わかりました。念のため風の精霊を付けておきますので、なにかあったら伝言を」

「うん、ありがとう。じゃあ、ちょっと行ってくる。メイをよろしくね」


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