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スキルトレーダー【技能交換】 ~辺境でわらしべ長者やってます~  作者: 伏(龍)
第2章  旅路編

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ダンジョン → 名前

 ただ、いざ動くとなると形だけでは難しいかも知れないから、タツマの記憶の中から人体の構造についての情報を教えてみようかな。骨と筋肉の知識と、循環器系、消化器系とか内臓の知識、五感に関する知識を大雑把に教えるだけでも体を変成するのにいくらか役立つと思う。いまでも少しは動けているということは、人体の機能とは関係がないところで力が働いているはず。その力に補助してもらう形にすれば意外とうまくいきそうな気がする。


「あとは……」

『コアだな』


 僕が考えていたことをパスを通して感じていたのだろう。タツマが核心を突く。結局どんなに人間らしい体が作れても外に出られないなら意味がない。


「体のほうは頑張ってもらうんだけど……君はここから出ることはできる?」

「……なんとなくだけど、完全にここと切り離されちゃうとダメかも」

「そっか……じゃあ、なんか本体みたいな物があったりする?」

「ほんたい?」

「えっと……これが壊されたら自分がなくなっちゃうよ~みたいなもの?」

「あ! あるよ! これ!」


 少女はすぐになにかに思い当たったのか嬉しそうに答えると、少女の形をした壁の胸元から、ぬぬぬと拳大のサイズの大きな紫色の玉が浮き出させた。


「それがあったら、このダンジョンと切り離されても大丈夫かな?」

「う~ん、ダメだと思う……ここにいないと力が出ないよ」

「そうなんだ……ごめん、ちょっと考えさせてね」


 しょんぼりと目を伏せる少女の形をしたダンジョンにちょっと待ってもらうように伝えて、対策を考えようとしたところでタツマのつぶやきが聞こえてくる。


『……なるほどな、おそらくこの場所から得られるなんらかの力。それがこいつの存在を維持するためには最低限必要な力なんじゃないか? だからこのダンジョンは無いと困るんだろう』

『じゃあ、やっぱりダンジョンを連れていくなんて無理だったってこと?』

『そうは言ってない。ようは、本体が「ここ」というのが動かせないってことだ。ということは、できるかどうかは知らないが本体とは別に、分身、分体、分離、子供、ファンネル、オプションなんでもいいから、そういうのを作ってそいつを体にぶち込んで連れ出せばいい』

『相変わらず思考が柔軟だなぁ、タツマは。感心するよ。でも、言っていることはよくわかる。そんな都合のいい能力があるのかどうかはわからないけど、ダンジョンを作り替えるスキルの【変成】があるから、自分の分身となるコアも作れるかも』

『はん! 褒めてもスライム汁しか出ねぇぞ! ついでにもうひとつアドバイスだ。そいつの孤独(ぼっち)を解消してやれ。成長率が0パーセントじゃ、できるもんもできねぇだろ』


「あ」


 タツマの指摘に思わず声が漏れる。僕としたことが連れ出すことに夢中で、一番なんとかしてあげなきゃいけないことを忘れてたよ。


「ねぇ、君は僕たちと一緒に行きたいと思ってくれるんだよね?」

「うん! 私、リューやリミやシルフィと一緒に外に行きたい!」

「リミとシルフィはどう?」

「うん、リミも同じかな。ずっとここにひとりぼっちはかわいそうだもん」

「はい、私も一緒に行けたらいいと思っています」


 僕の問いかけにふたりとも笑顔で答えてくれる。ふたりともありがとう。


「うん、だったら僕たちはもう友達だよね?」

「とも……だち?」

「そうだよ。一緒におしゃべりしたり、魔物と戦ったり、ときには喧嘩したり、おいしいものを食べたり飲んだり、怒ったり、泣いたり…………でも、最後には必ず皆で笑うんだ」

「……わたしたち……が、友だ、ち?」

 

 微かに小首をかしげて僕たちを見る少女に僕たちは笑顔で頷いて見せる。


「そうだよ」「うん!」「はい」「きゅん!」

「あ……な、なに、これ……なんか……ぐらぐら? ううん、ゆらゆら? もあもあ? 変、なにかが湧き上がってくる。なにこれ……はじめて、なのに怖くない」

「それは……たぶん、嬉しいんじゃないかな?」

「う、れ……しい? これが嬉しいってこと? ……そうか、そうなんだ! わたしリューとリミとシルフィが友達になってくれて嬉しいんだ!」

 

 これだけ喜んでくれたら、きっと……あぁ、まだ駄目か。ダンジョン少女を【鑑定】しなおしてみたけど、まだ称号が消えていなかった。


「りゅーちゃん、この子に名前を考えてあげてよ。リミ、名前で呼んであげたい!」

「そっか、そうだよね。わかった、名前を付けてあげよう。ふたりともなんかいい案ある?」

「いえ、彼女を連れていくと決めたのはリューマ様です。ここはリューマ様が名付け親になってあげるべきだと思います」

「リミもさんせ~い!」

「え? 僕が決めるの? ひとりで?」


 なし崩しに僕が名付け親みたいな流れになりつつあるのを止めようとするけど、リミとシルフィはまったく聞いてくれない。仕方がない、諦めて名前を考える…………でも、実は僕にはちょっと思いついた名前があるんだよね。


「あの……君と友達になれた記念に、僕から名前を送りたいんだけど……聞いてもらえるかな?」

「本当! 私に名前をくれるの? 欲しい! 教えて」

「あ、うん。気に入らなかったら、リミやシルフィに考えてもらうから遠慮なく嫌だって言ってね」

「うん? よくわかんないけどわかった!」

「えっと、僕が君に送りたい名前は……『メイ』。っていうんだけど、どうかな?」


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