迷宮創造 → 考察
ダンジョン少女とお話し中……
「いいよ、りゅーちゃん。りゅーちゃんが決めたことならリミは全力でお手伝いするよ」
「はい、わたしも同じです。リューマ様」
「でも、もしかしたら危険かも!」
「うん、でもリミもこの子が悪い子には見えないよ」
「精霊たちも怖がっていませんから問題ないと思います」
ふたりの温かい微笑みが僕にはくすぐったくて嬉しい。僕の考えていることを察して、それを先回りして認めてくれる。僕を信頼してくれてなければ出来ないことだよね。だから僕はその言葉に甘えようと思う。
『タツマ……』
『へん、俺に聞かなくたってもう決めてるんだろ? 好きにすればいいさ、相棒』
ぷるんと震えたタツマに力強くうなずくと僕はダンジョン少女に向き直る。
「ねぇ、もし君がそこから出て人間の形で動き回れるなら……僕たちと一緒に行かない?」
「え?」
ダンジョン少女の顔からぱらぱらと小石が落ちる。あまりの驚きに表情が動いてしまったのかな? もしそうだとすればやっぱりこの娘には感情があるということになるんだけど。
「どうかな?」
「……本当に? 本当に私を外に連れていってくれるの?」
「勿論、君がそこから出ることができて、外に行っても問題がなければ……なんだけど」
「行きたい! お外を見てみたい! 歩いてみたい!」
岩壁から抜け出したいのかパキ、パキと壁が軋んで少女を構成している物が剥がれて落ちる。
「ちょ、ちょっと待って! 無理に動こうとしなくていいから。ちょっと落ち着いて? ね」
「え? ……うん」
「まずはいろいろ試してみようよ。僕たちは急いでないし、もうしばらくダンジョンの近くに滞在しても大丈夫だから」
「うん!」
さて、どうしようか。ここから連れ出してあげたいと思ってもダンジョンを丸ごと持っていくわけにはいかないし……感情に任せて『一緒にいこう』なんて言っちゃったけど、これで無理だったらきっと落ち込むよね。
とにかくいろいろ聞いて考えてみるしかないよね。
「まず、いくつか質問するね」
「うん」
「んと……あ、そうだ。さっきからこうして僕たちと話しているけど、どうやって言葉を覚えたのかな?」
「ダンジョンでリューとリミとシルフィが話しているのを聞いて覚えたよ」
……凄いな。三カ月ちょっとダンジョンに潜ってはいたけど、ダンジョン内ではしゃべりっぱなしってわけにはいかないし、会話なんてそう多くはなかったはずなんだけど……それだけの会話を聞いてこれだけ話せるってことは、多分ものすごく知能が高いんだ。これはプラス材料だよね。だって、ちゃんと教えれば普通の人間と同じように行動できるはずだからね。
「じゃあ、今の姿も僕たちを見て作ったのかな?」
「そうだよ。人間の姿の方がリューたちと仲良くなれると思ったから」
「なるほど、確かに。じゃあ例えば、もっと僕たちを観察できたら、もっと僕たちみたいになれる?」
「ん~……わかんない。なんとなくできそうな気もするんだけど」
もし、それが出来るなら外に出てもなんとかなる。あとはこのダンジョンから離れてもなんとかなるのかどうか……。それにしても、確かに言われてみればこの娘の姿はどことなくリミやシルフィに似ている。その姿形を選んだのはこの娘だろうけど、この姿になれたのはきっとこの娘のスキルがあったからのはずだ。
「そっか……あのね、君には【ダンジョンクリエイト】っていうスキルがあるんだ。これはダンジョンを【作成】、作ることね。 あと【変成】、これはダンジョンを変形させたり、変質させたりすることかな。それと【消去】、これはダンジョンを消すこと? この三つの力について、どのくらい理解してる?」
「う~ん、なんとなく? くらい? かな?」
うん、あんまり理解してないや。きっと今までは本能の赴くままに力をつかってたんだろうね。
「多分だけど、【作成】っていうのは君が部屋を広げたり、宝物を作ったりしていた能力。【変成】ていうのは壁や通路の材質を変えたり、宝箱や罠にする能力なんじゃないかなと思うんだ。きっと君はいま、その力を使ってその姿を作っているはずなんだ。だから頑張ってもっとちゃんとした人間の形を【作成】して、それを人間っぽく質感とかを【変成】したら僕たちと一緒に外に出られるようになるかも知れない」
「ほんと! うん、じゃあ私頑張る!」




