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スキルトレーダー【技能交換】 ~辺境でわらしべ長者やってます~  作者: 伏(龍)
第2章  旅路編

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十階層 → 遭遇

「もし十階層の魔物を確認して、スキルが役に立ちそうだったら交換していくの?」

「そうだね、魔物の種類が多くなかったからスキルに関してはあんまり交換できなかったから、使えるスキルを持っていてくれればなんとかしたいかな」


 階段を一段ずつ跳ねるように下りるリミ。身軽な猫人族が、うっかり足を踏み外すとは思わないけどちょっと心配してしまう。


「ふふっ、凄いですねリューマ様。一般的に個人が持つスキルの数は多くても二桁に届くかどうか、それなのにわたしたちは二十近いスキルがあります。リューマ様に至っては四十前後です。それなのにあんまり(・・・・)なのですね」

「あっ!……そうか。でも、街の冒険者ならきっといろんな仕事や冒険をしているはずだから、もっとたくさんスキルを持っているんじゃないかな?」


 僕の隣で口元を抑えながら笑うシルフィ。どうやら僕の言うことを信じていないみたいだ。でも確かに凄い冒険者だって言われていたらしい、父さんと母さんでも所持スキルは十個くらいだったから二十を超えるスキルを持っている人は少ない可能性はあるかな。


「ねぇ、りゅーちゃん。……この階段長くない?」

「え?」


 そういえば……いままでの階段はせいぜい二十段から三十段だった。今回は何段おりた? 少なくとも五十はおりたはずだ! それなのにまだ下が見えない……なんか、これはもしかしてまずいかも?


「リミ! シルフィ! 一度上に戻ろう! モフとタツマも戻って!」


 僕は階段の脇に避けると隣にいたシルフィ、前を下りていたリミとモフ&タツマを上へと見送ってすぐに後ろを追いかける。

 別にただ階段が長いだけという可能性もあるから、このままおりればいいという考えもある。でも、僕たちは九階層で攻略をやめると決めていた。だから十階層は様子見だけのおまけ。なにかおかしいと思えるようなことがあるなら無理をする必要はない。僕たちの中で探索は終わりだという意識があって、緊張の糸も正直切れかけている。そんなときに『まだいける』は危ない。

 

 だけど、こういうときの嫌な予感はよく当たる。こういうのもフラグのひとつなんだろうか? 


「きゃあ!」

 いつのまにか先頭を駆け上がっていたリミが可愛らしい悲鳴を上げる。

「きゅ!」『うお!』

 その隣を跳ねていたモフとタツマも声を漏らす。

「あ!」

 そのすぐ後ろを走っていたシルフィもだ。


 僕は一番後ろにいたから皆のことがよく見えていた。だけど、とてもじゃないけどどうにもできなかった。だって、階段が上のほうから順番に形を変えて妙に光沢のある坂道へと変化していたから。

 そして瞬く間に僕の踏もうとした階段もなくなっていた。一応なんとかしようと龍貫の槍を壁に突き刺して皆を受け止めようと思ったんだけど……足場のない状態じゃそんな行動を取れるはずもなく、僕たちは強制的に十階層へと滑り落ちていった。




「いっ……たぁ」


 長い滑り台の先に明かりが見えて、ようやく終わると思った途端に僕は地面に投げ出された。以上に滑りがよかった坂のせいで結構な速度になっていたのでその衝撃は体に響く。


「きゃあ、りゅーちゃん! どいてどいて~」

「え? ……むぎゅ!」


 あ、柔らかい……痛いけどこれはこれで役得かも。

 ……お尻かな胸かな、やけにしっとりしてるけど……ってタツマじゃないか! モフを抱っこしたリミが落ちてきたのか。リミを衝撃から守ってくれたのかも知れないけど……余計なことを!


『けひひ! まだまだお子ちゃまなお前が色気ずくのはあと二年はえぇよ!』


 その具体的な年数がリアルでむかつくし。


「うご!」

「あ、危ないですよ。リューマ様」


 うん、シルフィ。そういうのは僕の背中の上で正座するまえに言おうね。

 多分、風の精霊の助けを借りて速度を調整して落ちてきたんだろうけど絶対狙ってたよね。


 ………きゃ……はは……


「わ、わかったから、どいてくれるかな?」

「あら、失礼いたしました」

 

 そういいつつもやけにゆっくりと僕のうえからおりるシルフィ。まあ、最初のころみたいに妙に奴隷主張されるよりは全然いいんだけどね。

 起き上がって埃を払った僕は、期せずしてきてしまった十階層を見回す。周囲は薄暗くて奥まで見通せないけど、どうやらここは迷路にはなっていないみたいで広い空間になっているっぽい。

 僕は目を閉じると指を鳴らす。【音波探知】を使い、音の波が広がって反射して帰ってくるのを感じる。その時間差と角度をスキルが自動計算して脳内に地図を描き出してくれる。その結果この空間には……僕たちの他には。


 きゃはははははははははは…………


「奥になにかいる」


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