突入 → 罠
罠といってもテレポーターではありませんw
軋んだ音を立てながら開いていく扉の向こうには人影のようなものが見える。人型の魔物の可能性が高いと思われるが、扉を開けた段階では特に襲い掛かってくるような素振りはないのでこの距離から【鑑定】を試してみる。
ゴブリンナイト
状態: 健常
LV: 14
技能: 剣術2/格闘2/盾術3/指揮1
部屋の奥で剣を地面に突きたてて偉そうにふんぞり返っているのがゴブリンナイト。小型で粗末な造りながら鉄製の盾を左手に装備している。どうやらこいつがこの部屋のボスらしい。
ゴブリンシャーマン
状態: 健常
LV: 12
技能: 精霊魔法1(闇1)
その左後ろにいるのがぼろ布のローブをまとって木の杖を持ったゴブリン。ゴブリンのくせに闇の精霊魔法を使えるらしいがスキルレベルは低い。どんな魔法を使ってくるかわからないからちょっと怖いけど呪文を唱えさせなければなんとかなるか。
ゴブリンモンク
状態: 健常
LV: 13
技能: 格闘3/回復魔法1
右後ろいるのは革の服を着た筋肉質のゴブリン。モンク……僧兵ってことか。だから【回復魔法】を持っているのか。それにしても【格闘】のレベルが高い、近接戦は気を付けないと危ないな。
それにしても、まさか全部ゴブリンの亜種とは。しかもこれって、なにげにとってもバランスがよさそうなパーティだよね。レベル的にはリミがちょっと厳しいけど、スキルを加味すれば戦いは問題ない。となると、あとはどのスキルを狙っていくか。
候補としては、まずなにをさしおいても【回復魔法】と【指揮】。あとは【格闘】もレベルが高いのでナイトの2とモンクの3は両方ほしい。あとはいければだけど、【盾術】と【精霊魔法・闇】か。
「リミ、正面の剣と盾を持ったゴブリンを抑えてもらいたいんだけど大丈夫かな?」
「うん! やってみるよりゅーちゃん」
リミはレベルでは負けてるけど【剣術】はリミのほうが上だし、【格闘】もお互いに2。リミに【敏捷】があるぶん、あいつには【盾術】がある。決め手には欠けるかも知れないけど倒しにいかなければ十分戦えるはず。
「無理はしなくていいから安全重視でお願い。念のためモフにもいってもらうからモフと協力して頼むね。モフもよろしくね」
「りょうかい!」『きゅん!』
「シルフィは後ろのローブを着たゴブリンを弓で牽制、最悪倒しても構わない。闇の精霊魔法を使うみたいだからそれだけ気を付けて」
リミとモフの元気のいい返事を聞きながら、シルフィにも指示をしていくが闇の精霊魔法と聞いてシルフィの表情が曇る。闇の魔法で精神を支配されていたシルフィには嫌な言葉なのだろう。
「……はい、わかりました」
「……シルフィ。闇の魔術に対して忌避感があるのはわかるけど、戦闘にまで影響が出るようならここで待機しててもらうことになるけど、どうする?」
僕の言葉にはっとした顔をしたシルフィだが、目を閉じてゆっくりと深呼吸をすると再び目を開けたときには、いつもの落ち着いた表情へと戻っている。
「すいません、もう大丈夫です。精霊に善や悪の観念はありません、光の精霊だって使う者の心が歪んでいれば悪しきものになりえます。それは【闇術】だとて同じです。一度いやな目にあったからといって闇そのものを嫌ってしまったのは私が未熟でした」
「うん、わかった。じゃあお願いするね」
「はい、お任せください」
微笑むシルフィに僕も笑って頷きを返すと2人と1匹に向かって声をかける。
「僕はもう一体のゴブリンとスキルを交換して倒したら、順番に助太刀にいくつもりだけど、僕が【技能交換】使えるようにとか考えて無理に戦闘を長引かせて怪我をしないでね。倒せそうなら倒していいから。それじゃいくよ」
僕は部屋の中心部あたりの天井めがけて【光術】の明かりを放り投げてから槍を構えて走り出す。続いてリミとシルフィがモフと並んで部屋へと飛び込んでいくと、地面から剣を抜いたナイトが剣を引き抜き、それを突き上げて咆哮した。
【グギャァァァァァァァァァアッァァァ!】
大音量の咆哮が部屋内で反響してかなり迷惑だ。気合を入れるにしてももう少し節度を持って欲しい。
【ギャギャギャギャギャギャ!】 ギィ ギィ ……
そんなことを考えつつ眉を顰めた僕の耳にさらに耳障りな声が飛びこんでくる、そしてそれと同時にシャーマンとモンクも動きだしている。
『リューマ! コボルトどもが壁の穴に隠れてやがった! やつら扉を閉めて俺たちを逃がさないつもりだぞ!』
タツマの声に走りながら周囲を見ると、暗がりのせいで見えなかったが周囲の壁の下のほうにコボルトが隠れられる窪みがあったらしく、そこに隠れていたコボルトが十数頭余り飛び出してきて僕たちの入ってきた扉を閉めようとしていた。
く! 扉自体は閉まっていても構わないけど、後ろに回りこまれると後衛で近接の攻撃手段がないシルフィの防御手段がない。そもそも、あの数で背後から攻め寄せられたら亜種との戦闘もやばい。
「後ろはお任せくださいリューマ様!」
「シルフィ!」
同じように状況を把握したシルフィが一人立ち止まったらしく、シルフィの足音が消える。シルフィの弓だけでは、あの数のコボルトを殲滅するのは不可能だ。ここはいったん戻って、先にコボルトたちを倒したほうがいいのか? どうする? どうする?
「りゅーちゃん! シルフィなら大丈夫! リミたちはこっちを頑張ろう!」
同じ言葉が脳内を回り始めたのを見越していたかのように、リミが自信たっぷりにかけてくれた強い言葉に迷いが消える。そうだ、シルフィははっきりと「任せてください」って言った。それならリミと同じように僕も信じる。
「わかった! モフ! あっちのロープの奴を頼む!」
『きゅきゅきゅん!』
モフの鳴き声を合図にしたかのように、僕たちは三方向へ別れる。僕の目の前には汚い乱杭歯をむき出して拳を打ち合わせているモンクがいる。
僕の獲物はまずはこいつだ。
昨日は熱出して寝込んでて更新できませんでした。楽しみにしてくださっていたかたすいませんでした。
(連日投稿が途切れてしまいましたorz)




