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スキルトレーダー【技能交換】 ~辺境でわらしべ長者やってます~  作者: 伏(龍)
第2章  旅路編

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深夜 → 相談

 幸いモフとタツマは約束通り早めに帰還してくれたので、タイミングを見計らってリミとシルフィを起こして見張りを交代してもらった。なにかあればすぐに起こしてもらうことを奴隷のシルフィにしっかりと念を押しておく。本当はそんなことしたくないんだけど、ふたりが張り切り過ぎてて僕を休ませるために無理をしそうな雰囲気があったから念のため。


 ふたりにあとを任せて、まだふたりのぬくもりが残る寝床に入る。見回りから戻ってきたモフも、ちゃっかりと僕の隣に寄り添っているので、日頃の感謝もこめていつもより多めに撫でてあげているとモフは『きゅ、きゅ……ん』と気持ちよさそうに眠りに落ちた。


『モフは本当にお前が好きなんだな……お前のためとなると動きが違うんだよな。俺も長いことここに居座っているせいか、だいぶん仲良くなったつもりだけどよ』


 眠るモフの頭の上でぶにょぶにょと体をうねらせるタツマ。


「長い付き合いだしね、もう兄妹きょうだいみたいなもんだよ」

『兄妹か……俺にも妹はいたけど、ゴミを見るような目で俺を見下すような奴だったからな。いまひとつピンとこねぇや』


 タツマが地球でどんな生活をしていたのかを僕は知らない。でも、タツマから地球にいた人たちの話を聞くことはめったにないから、きっとタツマにとってはあまりいい世界じゃなかったんだろうな。

 タツマのいた世界は確かに平和で豊かだと思うけど、僕はあっちに行って暮らしたいとは思わない。こっちの世界は魔物とかいて厳しい世界だけど、どんな世界でも僕はここで生まれ育った。だから、ここで精一杯生きていくんだ。

 ……まぁ、ちゃんと帰れるなら一回くらい観光には行ってみたいけどね。


『ま? それはいいや。それよりも、ちょっと今日までの見回りで気づいたことがある』

「え、なにか問題あった?」

『問題かどうかはまだ判断つかねぇんだが、どうも魔物の分布が偏っている気がするんだ。いまのところ、どれも弱い魔物だから気にする必要はないのかも知れないが、モフが倒した魔物たちのほとんどはある方向から来ているっぽいんだよな』


 ふむ、どういうことだろう。確かにたまたまということも考えられるけど……タツマの感性や見解は侮れない。ここは慎重に考えたほうがいい。

 あまり人が入らない山だから、魔物の数がある程度多いのは覚悟していたけど、タツマが気になるほどに分布が偏っているということは……。


「その方向から来る魔物の種類はどうだった?」

『そうだな……多いのはゴブリンだな、これはゴブリンの亜種も含めてだ。あとは地球のイメージとは違うんだが、コボルトっていうのか? あれが多いな』


 タツマの知識の中のコボルトはゴブリンと同じくらいの大きさの犬頭の魔物だけど、この世界でのコボルトは、大きさでいうと大人の胸くらまでのサイズがゴブリンの平均、さらにゴブリンの胸くらいの大きさがコボルトの平均サイズ。見た目は、タツマに分りやすく言うなら餓鬼? みたいな魔物だ。

 こいつらは1体ずつなら弱い魔物なんだけど、群れると厄介な魔物だって父さんからは教えたもらった。


「もしかしたら巣があるのかも……」

『おお! それはいいな。序盤のテンプレ、ゴブリンの巣の殲滅! いいイベントじゃねぇか』


 ゴブリンの巣という単語にテンションを上げるタツマだが、僕はそこまで喜べない。


「え~、あんまり嬉しくないなぁ。集団と戦うってことは、少しでも早く相手を倒していかなきゃならないから、スキルを確認してトレードする暇がないと思うし」

『あぁ、なるほどな……確かにリューマのスキルには合わないな。じゃあ避けて進むか?』


 どうしようかな。戦闘経験を積んでレベルを上げるという意味では無駄ではないんだけど……。


「どちらにしても、このあたりで修行するなら放ってはおけないし、一度は様子を見にいくことになると思う。まだ小さい巣で僕たちでなんとか出来そうなら潰すことも想定していくけど、手に負えなそうなら修行場所を離れた場所に変える必要があるかな」

『妥当な判断だな。明日はモフと先行して偵察にいってやるよ』

「うん、よろしく頼む。ありがとうタツマ、助かるよ」

『ば! な、なに言ってやんだ。俺たちは運命共同体だろ』

「うん、友達だね」

『………………だな。よし! 寝るか、お前も早く寝ろよ』


 タツマはこう見えて意外と照れ屋さんなんだ。スライムだから表情も顔色もわからないけど、身体の波打ちかたで動揺しているのはわかるから、一応年上なんだけどちょっと可愛く見えてしまう。


 さて、じゃあ僕もそろそろ寝よう。じゃないとせっかく早めに見張りを変わってくれたリミとシルフィに申し訳ないもんね。ふたりの温もりが残る寝床とモフの温もりを感じながら目を閉じた僕は本当にあっという間に眠りに落ちていた。

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