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スキルトレーダー【技能交換】 ~辺境でわらしべ長者やってます~  作者: 伏(龍)
第2章  旅路編

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スキル → 調整

「ちょ、ちょっとりゅーちゃん! なにそのスキルの数! それにスキルのレベルとか言われてもなんのことだかわからないよ」


 リミの三角耳が僅かに広がる。本当にリミが驚いたときの反応だ。


「僕の【鑑定】はちょっと特殊で、いろいろ詳しく見られるんだ。スキルの数についてはあとで説明するけど……」

「……リューマ様はそれほどのスキルをお持ちだったから、フレイムキマイラとも戦えたのですね」

「いや、あれは無理だよ。父さんたちがいなかったらどうにもならなかった……僕にはレベル自体が足りてないし、圧倒的に戦闘経験がないからね」

「そうですね……スキルがあるから戦えたなどとは失礼な発言でした」

「え?」

「あれほどの魔物に、仮にスキルがあったとしてもそうそう立ち向かっていけるものではありません。フレイムキマイラと戦えたのはリューマ様だからこそなのですね」


 シルフィが熱っぽい目でうんうんと頷いているけど、そんなふうに持ち上げられるとおしりのあたりがむずむずしてしまう。あのときはなんとかみんなを守らなきゃって夢中だっただけなんだよね。


「えっと……それで結局なにが言いたいかっていうと、僕たち3人みんなで強くなろうってこと。さっきのスキルの数の話だけど、実は僕は1人でこっそりと狩人の森に何度も行って魔物とスキルを交換したからこれだけのスキルを持ってるんだ。だから辺境都市に行くまでの間に魔物と戦ってスキルを集めようと思ってる」

「りゅーちゃん、そんな危ないことしてたの! ……どこを探しても見つけられない日がたまにあったけど、そういうことだったのね」

「リューマ様、魔物と戦ってスキルを集めるというのは分りました。では、私たちは同行して経験を積むということですね」


 ぷんぷん怒りながら頬を膨らませているリミは取りあえず置いておく。


「うん、それもそうなんだけど【技能交換】は知ってのとおり、人対人でもできるから僕が集めたスキルをリミとシルフィのスキルと交換することで、僕たちみんなが強くなれると思うんだ。例えば……」


 僕はアイテムバッグから弓を取り出す。猟師たちが使うような木製の、ごく普通の弓だ。


「シルフィは普通の金属武器は使えないってことだけど、この木製の弓なら使えるよね」

「はい、ですが私は弓を扱ったことはないので……」

「そうだよね、だから手を貸してくれる」

「は、はい」


 おずおずと差し出された白く細い手を握ると、僕はスキルを発動する。

 

技能交換(スキルトレード)

 対象指定 「裁縫1」 

 交換指定 「弓術2」

【成功】


 今回はこっちのレベルの方が高いから、相手の同意を確認しなくても問題なく成功する。


「シルフィ、この弓を持ってみて」

「はい…………あ」


 弓と矢筒を渡すと受け取ったシルフィが、小さく驚きの声を漏らす。


「わかった?」

「……あの、射ってみても?」


 僕は頷き、誰もいない方向にある木を指し示す。シルフィはちょっとわくわくした顔で頷くと立ち上がり、静かに弓を引き矢をつがえた。ぎ……ぎし、と木のしなる音がぱちぱちという焚火の音の合間に聞こえる。そして十分に引き絞られた弦が離された。


 ヒュン    


 という小気味よい音とともに放たれた矢は、狙いどおり目的の木に突き刺さっている。


「にゃにゃ、シルフィすごいじゃない」


 弓術スキルを2まであげたリミだからその凄さがよくわかるらしい。ていうか……もともとリミが修得したスキルなんだけどね。


「武器がない関係で細剣術が使えないとなると、精霊魔法だけじゃシルフィの攻撃方法が少ないと思ってたから以前リミと交換していた【弓術2】を、さっきの【裁縫1】と交換したんだ」

「す、すごいです。これが……スキル」

「こんなふうに、僕たちの得意分野をふまえてスキルを調整していこうと思うんだ。だから通常ルートでてくてく行けば辺境都市まで1か月くらいで着くけど、あえて到着時期を定めずに山越えのルートを選択しようと思う」


 ポルック村から辺境都市フロンティスまでの間は、山脈といういうほどではないが山に隔てられている。普通はこの山岳地帯を迂回してフロンティスへと向かう。だけど山の中という餌の豊富な場所にいる魔物たちはわざわざ人通りの少なすぎるそのルートに出てくることはまれ。このまま進めばせいぜい2度か3度、ゴブリンあたりと戦うくらいがいいところだろう。

 だが、山の中を進めば様々な魔物が棲息しているはずでスキルの収集もしやすいはずだった。


「シルフィはハイエルフだし、山の中で方角を見失うこととかはないよね」

「はい、もしわからなくなっても精霊たちに聞けばいいだけですので問題ありません」

「食料についても、山の中なら僕やモフが獣を狩ればいいし、山の幸の採取はリミが得意だよね」

「うん、任せて」


 よし、これなら大丈夫。タツマと話し合って決めたパーティ全員の底上げに安心して取り組める。


「じゃあ、山まではまだ数日かかるだろうから、ふたりにはその間……」

「特訓だね! りゅーちゃん」


 傍らに置いてあった小剣を手に取ったリミが勇ましく剣を抜き放つが……残念ながらそのての特訓はしない。


「特訓といえば特訓かな。ふたりには、【技能交換】するための生活用スキルの取得に取り組んでもらいます。リミは【掃除】【解体】あたり、シルフィは【裁縫】【採取】【料理】【掃除】【解体】と片っ端から挑戦してもらいます」


 

今回のわらしべ

『 弓術2 → 裁縫1 』


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