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スキルトレーダー【技能交換】 ~辺境でわらしべ長者やってます~  作者: 伏(龍)
第3章 辺境都市編

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メイ → 初陣

「シルフィ! 大丈夫か!」

「私は大丈夫です! 早くメイちゃんを!」


 倒れたままのシルフィに駆け寄ると、シルフィは僕の手を払いのけるようにして叫ぶ。


「わかった。シルフィはリミのところへ走って!」


 一見する限り大きな怪我もなさそうなので、念のためリミのところへ行くように指示すると弾き飛ばしたアサシンゴブリンに追い打ちをかけようとしているメイを追う。

 つまりシルフィを攻撃しようと落下中のアサシンゴブリンを、見事なシールドバッシュで弾き飛ばしたのは鉄の半剣と鉄の小盾を装備したメイだ。その見事なシールドバッシュは【盾術3】によるものだが、レベル1の戦闘経験のないメイが、あのタイミングで動けたというのは正直凄い。多分それは、今回戦闘に参加させるつもりがなかった僕が、メイにシルフィのところで大人しくしていてもらうためにお願いした『シルフィを守ってあげて』という言葉をメイが、かたくなに守ってくれていたからこその反応。見た目のかわいらしさから、ついつい子供のように扱ってしまっていたけど、メイも僕たちの仲間として立派にひとつの戦力だった。


「メイ! しっかり守ることだけを意識して」

「うん!」


 メイは追撃のためにアサシンゴブリンを追っていたが、追いつく前に体勢を立て直したアサシンゴブリンの反撃を受け、必死に小盾で防御をしている。さすがに上位種だけあって手強い。現状、スキル任せで戦うしかないメイではちょっと厳しい相手かも知れない。シルフィが心配で、つい先に確認にいってしまったけど、冷静に考えればシルフィの言う通り、メイを助けにいかなきゃ駄目だった。


 幸いメイが僕の指示通りに守りに専念するとアサシンゴブリンの短剣は完全に攻めあぐねるようになっていた。これなら僕が駆けつけるまではなんとかなる。メイは元はダンジョンだったせいで怪我や痛みに対する恐怖がない。だからアサシンゴブリンの繰り出す短剣を冷静に見ることができる。冷静に見ることができれば【盾術3】のスキルの効果が最大限に発揮できるため、結果として膠着状態に持ち込めているみたいだ。

 それに、完全に気配を消して必殺のタイミングで襲いかかったところを邪魔されたことに怒りを感じているらしく、がむしゃらにメイへと短剣を繰り出しているので、その攻撃は【短剣術3】を生かしきれていない。

 これならうまくダメージを与えれば、メイのいい経験になる。そう考えた僕は、メイを攻撃することに夢中になっているアサシンゴブリンに駆け寄った勢いそのままに一気に詰め寄ると短剣を持つ右手と左足の腿を二連突きで貫く。グギャアと悲鳴を上げたアサシンゴブリンの手から短剣が落ち、動きが止まる。だが、戦意は失っていないらしく怒りで血走った眼を僕たちに向けている。


「メイ、あいつはメイが倒すんだ。いい? スキルに振り回されないで。スキルは自分を助けてくれるだけだから頼っちゃだめなんだ。スキルに合わせるんじゃなくて、自分の動きをスキルに補助させるように……できる?」

「うん! 頑張る!」


 メイは元気良く頷くと剣と盾を構えたまま、アサシンゴブリンとの間合いを詰めていく。それを見たアサシンゴブリンは奇声を上げて爪を振り下ろしてくるが、メイは落ち着いて爪を腕ごと弾き、がら空きになった胴体に鉄の半剣で斬りつけた。


「うまいよ、メイ。でもちょっと浅い、ここぞのときの一撃は一歩踏み込むくらいの気持ちが大切だよ」

「わかった!」


 袈裟斬りにされた胸から蒼黒い血を流しながらふらついているアサシンゴブリンに、メイが渾身の突きを放つ。今度は体重が乗ったいい突きだった。


「うん、完璧だったよメイ。ちょっと待っててね」


 腹部を貫かれたアサシンゴブリンは前のめりに地面に倒れ伏している。だが、まだかろうじて息はある。それなら急いで……

 

技能交換(スキルトレード)

 対象指定 「隠密4」 

 交換指定 「隠密3」

【成功】


 よし。あとは、こいつも。


技能交換(スキルトレード)

 対象指定 「短剣術3」 

 交換指定 「採取1」

【成功】


 よし、運がいい。確率は二分の一だったからね……っと、いまアサシンゴブリンが息絶えた。時間さえあれば【隠密3】も誰かに渡せるように残したかったんだけど、さすがにレベル4のスキルを交換するのにレベル1は確率が悪い。実際、二回しか【技能交換】を発動する余裕はなかったし、これがベストだよね。


「お待たせ。メイ、シルフィを守ってくれてありがとう」

「えへへ、だってリューがシルフィを守ってねってメイにお願いしてくれたんだもん。ちゃんとできてよかったぁ」


 安堵の溜息を漏らしているメイの頭をもう一度お礼を言いながら優しく撫でると、メイが嬉しそうに目を細める。最初は表情を作ることもできなかったメイが、もうこんな表情ができるくらいに成長している。ちょっと戦えるようになったと思っても魔物との戦いは、いつ今日みたいなことが起こるかわからない。メイに負けないように僕も、もっともっと成長して皆を守れるようにならないとね。

 


今回のわらしべ

『 隠密3 → 隠密4 』

『 採取1 → 短剣術3 』


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