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スキルトレーダー【技能交換】 ~辺境でわらしべ長者やってます~  作者: 伏(龍)
第3章 辺境都市編

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採取 → 異変

 ぶんぶんと楽しそうに剣を振り回しつつ歩くメイを優しく見守りつつ、草原を歩くとやがて東の森につく。


「本当にここまで誰にも会わなかったね、りゅーちゃん」

「そうだね、【採取】は持っているだけで結構便利だからどんどんやったほうがいいんだけどね……レナリアさんが嘆くのもわかる気がするよ。メイは頑張って【採取】を取ろうね」

「うん! メイ、頑張るよ」

「おっと! やる気があるのはいいけど、いったん剣はしまおうか。振り回すと危ないからね」

「は~い」


 メイが振り回した剣に危うく斬られそうになった僕は、冷や汗を拭いながらメイに剣を鞘にしまってもらう。魔物が出てきてもいきなりメイに戦ってもらうようなことはしない。最初は僕たちで弱らせた魔物を相手してもらうつもりだ。それでいくつかレベルが上がったら少しずつひとりで戦っていくような流れをタツマと考えている。


「リューマ様、手分けして探しますか?」

「う~ん、どうしようかな。リミやシルフィの力なら大丈夫だと思うけど、この辺は土地勘がないし、はぐれるとリミが迷子になりそうだから……」

「あぁ! りゅーちゃんひどい。確かにリミは道を覚えるのは苦手だけど、りゅーちゃんの臭いなら絶対見つけられるから迷子になんてならないもん!」


 うん、それってはぐれるところまでは否定してないよね。多分気付いていないだろうから突っ込まないけどさ。


「あははは、ごめんごめん。でも、最初はみんなで動こうよ。必ず全員が見える範囲で少しずつ探索しよう。先頭は僕とモフが行くから次をメイとシルフィ、最後をリミにお願いするね」

「もう、りゅーちゃんは意地悪なんだから!」


 ぷくっと頬を膨らませつつも、後ろのほうへ移動してくれているので僕の指示に従ってくれるらしい。


「わかりました。メイちゃん、今日はおさらいしますので、薬草を見つけたら教えてくださいね」

「うん、一杯見つけるからね」


 メイもダンジョンを出てからここに来るまでの間に、何度か採取は経験しているので各種薬草と毒草の区別くらいはつくようになっている……はず? なんだけど、メイも最初の頃は自分の体を動かしたり、外に出たことで入ってくるようになった大量の新しい情報を受け入れたりするのに精一杯だったから、ちゃんと覚えているかどうかは微妙なラインかな。

 メイにも僕の【統率】で【早熟】の効果が少しはあるはずなので、がんばれば今までの経験と合わせて、すぐに【採取】が取れるはず。


「よし、じゃあいこう」


 念のため指を鳴らして【音波探知】をかける。


『……木が多すぎて音がわかりにくいな』

『まあ、それは仕方ないだろ。ま、練習にはなるしどんどん使っておけ』

『了解』


 

 それからしばらく森の中で薬草採取に勤しんだ。レナリアさんが言う通り、そこかしこに薬草が群生していて規定の数はすぐに集め終わった。だけどメイのスキルの件もあるし、薬草を納品して在庫が少し減ったのでその分の補充、それからこの森の簡単な地図を作っておくために【音波探知】を使いながら採取を続ける。

 各種薬草の群生地や、食べられる実を付ける木の場所、川や湧き水などの水場、洞窟や岩場、野生動物の分布などを調べておくといざというときに便利。まあ、野宿するときとか、食糧の調達とかだから、街を拠点にしている限りあんまり使う知識じゃないと思うけど、ダンジョン合宿中に染みついた癖なんだよね。


「ふう……そろそろお昼過ぎくらいかな?」

「そうですね、陽は天頂を越えたと思います」

「うん、じゃあ、ちょっと休憩しようか」

「やった! ずっとかがんでたから腰が痛くなっちゃったよ」

「そんな年寄りみたいなこと言わない」


 えへへと笑いながら大きく伸びをするリミに苦笑しながら、陽当たりのいい開けた広場にアイテムバッグからシート代わりの大きな布を取り出して広げる。勿論、いつ魔物が出るかわからないから靴装備は外さない。そのままシートに座り込み、合宿から使っている木のコップ、たくさん作ってストックしてある干し肉を取り出して皆に渡す。

 コップにはリミが冷えた水を魔法で作り出して注ぐ。最初の頃はコントロールができずにそこらじゅうを水浸しにしていたリミだけど、いまは必要な分だけを必要な場所に出すことができるようになっているからやっぱりリミは凄い。


 それにしても今日はお天気もいいし、皆で干し肉をはぐはぐしながら談笑していると冒険者のお仕事をしている感じがしないな。別にそれが嫌な訳ではないけど、早く冒険者の基礎知識を身に付けてダンジョンに入りたいと思ってしまう。

 やっぱり冒険者の醍醐味はダンジョン探索だよね。


「!」

「きゅん!」

『ん?』


 そんなことを考えていたときに僕の耳に微かに聞こえたのは人の悲鳴だった。


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