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夢渡の女帝  作者: monoll
第3章 夢幻を映す湖の記憶
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第3章21-1「Choose One(Level 3)」

 脱出と言っても、抜き足差し足のお上品な方法イロハは残念ながらオレは知らない。ドタドタと、普段から運動をしない人間特有の重心が安定しない走りで、オレは必死に足を動かし続けていた。

 そも、そのお上品な方法を知っていたとして。剣やら槍やらを構え、果てには弓に矢をつがえた武装エルフたち相手に、命を掛けた鬼ごっこの最中に試そうだなんて、心に余裕のない今のオレでは全く思いつかなかった。


「逃げた!あの人間、他の客間に逃げたよ!」「挟み撃ちにする!メリスは先に下へ行って!」


 荒い呼吸の中、どうにか聞き取れた単語の断片をオレの頭の中で勝手に修復・構築し、このような会話があったのだろうと見当をつけてみる。チクショウ、このまま下に行っても危ないって事かよ…!

 現実のゲームでも、シューティングは残念ながらオレの管轄外。画面酔いをするから、というのが一番の理由なのだが、それ以前に銃火器を持ったキャラクターは個人的に惹かれないのだ。

 これも一種の癖という奴なのだろう、異論は勿論認める。惹かれる子の偏りも然り、興味の偏りも然り。当然、知識の偏りだってある。全員が全員、何でも答えを瞬時に弾くパソコンではないのだ。

 そういう訳で、残念ながら銃撃戦の心得(サバゲーのイロハ)なんてオレの中に存在しない。海外映画の見よう見真似で、弓の射線に入らないよう廊下の曲がり角や柱の影を利用して逃げている訳だがーー。


「居たわ、あそこ!」「追い込むわよ!」


 マジかよ、もう見つかった!?ちゃんと相手方から見えない場所に隠れたつもりなのに、透視できる恩恵ちからでも相手はあるのかよチクショウ!

 まだ呼吸が整わない中、脳へ十分に届かない酸素を無理やりアドレナリンで補い、再び全速力で廊下を駆ける。だが、逃げると言っても次はどこを目指すべきか…!


(下で待ち伏せられているなら、上の階へ逃げる?…いや、すぐにバレるし袋小路に入るのが関の山だ。少なくとも、休むにしても逃げるにしても、追いかけてくる奴らが多すぎる!)


 残念ながら、地理的・体力的条件では勝負にすらならない。ましてや、追手の数が複数となれば尚の事。さっくりオレ自身の現状を振り返り、どこにも希望がない事を再確認して頭痛が更に酷くなる。


(考えろ、オレの手札はどうせ少ないんだ!)


 真っ先に思いついたのは、フローア村の教会の地下の一幕。あの女神様の幻覚を見た後、結局気を失ってしまったがーー。教会の酒宴での、暗殺者たちとの絡み酒(やり取り)から察するに、未だに彼らの言葉は信じられてはいないが、その後オレが赤ずきん少女に戦況をひっくり返す()()をしたのだろう。結局、肝心な事は誰にも教えてもらえなかったが。

 故に、そんな博打かつ使い方も分からない手札にオレの命を賭ける事はできない。なら、味方が突然湧いてこないかと思考の方向を変えようとした所でーー()()はやってきた。


 フォン、と何かが通り過ぎる音がした瞬間、オレのすぐ横に風の巨大な斧が振り下ろされる。ほんの僅かでも身体が傾いていたら、縦真っ二つになってもおかしくなかった衝撃が、向こう2メートルほどまで床を走っている。


「ちょっと!あの人間に傷がついたら、プリシラちゃんにどう言い訳するの!」


 背後で怒号が響き、恐らくその隣で風を放った誰かが謝っているのだろうが、明確な命の危機にオレの脳がこれ以上の思考を放棄した。「うわあぁぁ!!」と情けない悲鳴を上げながら、恐怖で止まりそうな足を必死に動かしていく。

 次にその場で立ち止まったら、絶対に心が折れて動けなくなる。体力的にも、精神的にも、過剰なアドレナリンで支えてきたオレの身体はもう限界だ。無意識に抑えていた悪魔の(少ない)手札に指が伸びるのも、無理のない話だった。


(どうやって使うかなんて知らない、使えるかなんて知らない!けど…ッ)


 ほんの十数秒前の思考りせいを手放し、悪魔それを手の中に宿す。これがタロットなのかと、平時であればまじまじと観察していただろうが…、今のオレにはそんな心の余裕はない。

 この呪い(想い)よ届け。そう願いながらーーある人物を思い浮かべ、今ある体内の酸素を全て使い切るつもりで叫んだ。


願いよ届け(アウェイク)ーー!」

●今回はどこがターニングポイントなの?3

悪魔タロットを使って()()呼び出すか」です。幸か不幸か、主人公君の現在の選択肢は少なく、その選択肢に挙がっている人物たちも主人公君の現状を理解できています。つまり、「()()()協力的に悪魔(タロット)の呼びかけに応じてくれる」とも取れる訳です。


ここで、「“悪魔(ザ・デビル)”」による契約状態の設定について振り返りましょう。以下、過去の後書きの抜粋です。


・契約状態は、思い浮かべた人物の意識も借り受ける。その為、主人公カケルが力を行使する間は、その人物が木偶の棒(サンドバッグ)となる。

・契約を結ぶ相手の同意が得られない場合、単なる自滅の一手となってしまう。使い方によっては救難信号にもできなくはないが、主人公カケルはその場から一歩も動けなくなる程の疲労状態になる。

・契約状態になったとしても、力を行使できるのは2分が限度。他のタロット使用者と比べて発動時間が短いのが特徴となる。


抜粋はここまでです。さて、誰を呼び出すのが正解なのでしょうか…?


●メリスって名前、どこかで聞いた事があるような…

第3章13で登場した「黎明旅団」の大人な雰囲気を纏ったエルフ、その人です。うーんこのザル警備っぷり、間者を複数人送り込まれるとか…月の国の警備事情ってもしかしなくても遅れてない?


実際その通りで、ヒロインちゃんが裏切り者として追放されてからは太陽の国の間者が入りたい放題となっています。しかし、一度でも間者とバレれば命はまずありません。圧倒的な力の前に掴んだ情報ごと轢き潰されます。


そんな危険な任務も、平然とこなす事ができる「黎明旅団」の面々。太陽の国も、どうしてこんな優秀な集団を追放しようと思ったんですかねぇ…。

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