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夢渡の女帝  作者: monoll
第4章 希望を夢見た宙の記憶
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BAD END LOG05「悪魔に贈る天使の祝詞」

こちらは第4章18-1「Choose One(Level 4)」のBルート(ifルート)になります。文章も、その続きからとなっています。

主人公君の呼びかけに、果たして誰が来てくれるのでしょうか…?

 自分の中にある力を、掌の上に乗せるイメージを作る。ビキリと脳が割れた気がするが、それに構う余裕は今のオレに無い。

 無意識の内にできていた行動も、意識的に行おうとすると意外と難しいものだ。下手をしたらより拙い動きとなり、その動きが無意識に刷り込まれてしまう事だってある。

 そうならない為、いかなる時も全力で物事に取り組むべし…と、学生時代の部活動の先輩から学んだ記憶がふと蘇ってきた。懐かしいと思いながらも、自分の命がかかっている最中である事を思い出し、脱線しかけた思考を集中させる。


 ーーイメージするのは、助けを求めたい相手。レイラさんやソレイユ、あるいは“ヤツヨ”といった面々を思い浮かべるが、しかし反応は一向に返ってこない。


(名前を、思い浮かべる…度に。頭が、割れ…そうだ)


 “悪魔”の力を使う事はなるべく避けるように、と言われたレイラさんの言葉が記憶の片隅から蘇ってくるが、敢えて今はそれを無視する。命以上の対価などこの世には存在しないのだ、背に腹は代えられない。

 それに今はオレだけじゃなくプリシラの命もかかっている。助かる為なら禁忌に手を出すという選択肢も取らざるを得ないのだ。分かってほしい、レイラさん。


 …とは言いつつも、一体この行動で何が起こるのかオレ自身も解らない。何度かオレは超越物質タロットを使った事があると聞かされても、使おうと思ったその瞬間から意識が飛ぶ上、呼び出した相手にオレの身体と行動を全て任せるというのだから理不尽極まりない話だ。


 “悪魔”(本人)や“ヤツヨ”が言うには、オレの“悪魔”(ちから)は「誰かの力を借りる」事。物事を他人に任せて解決する、実にオレらしい力だ。成程、それなら本人の意思など尊重される筈もない。


(誰でも、いい。この場を、切り抜けられる…力を。オレに、くれ…!)


 なりふり構わず助けを求めたその時、急激に意識が遠のいた。恐らくこれが“悪魔”へ願いが聞き届けられた証なのだろう。

 叶う事ならその「誰か」を一目見たかった。「来てくれてありがとう」と一言声をかけたかった。…しかし、そんな些細なオレの願いは叶えられない。


願いよ届け(アウェイク)ーー)


 だからせめて、オレの代わりにあの天使おんなを、追い払ってくれ。頼んだ、呼びかけに応えてくれた誰かーー。











「…あらあらぁ。まさか行方知れずだった“悪魔”を宿していたなんて。灯台下暗し、ってこういう事を言うのねぇ」


 オレの意識は、まだ身体の中に留まっていた。酷く、オレはとても酷く混乱している。

 まさかこの“悪魔”(タロット)、誰も呼び出せないというハズレの概念があるのか…!?


(返却分なしの、一発勝負かよ…)


 レイラさんを呼び出そうとして失敗した時は、同じように何も起こらなかった。彼女の浄化の恩恵ちからによって無力化されたからだと、思っていたのだ。

 しかし実際は違った。どうやらこの“悪魔”(ちから)、どう結果が転ぼうと使用した魔力チケットは意地でも回収するように作られているらしい。商魂たくましいのは良い事だが、相手から回収できなかった分は自分自身の身を削って補填する自転車操業っぷりに、思わず心の中で盛大に舌打ちしてしまう。


 ーーつまり博打に負けた所為でオレは、状況を好転させるどころか悪化させてしまったという訳だ。


「どうやら貴方の事も、見直さないといけないみたい」


 何か、あの天使おんなの踏んではいけない地雷に引っ掛かってしまったらしい。隠していた狂気が漏れ出たのか、それとも隠す事を止めたのか。いずれにせよ、天使おんなの笑みの性質が変化した。

 程なくして、オレの全身から鳥肌が立ち始めていく。天使おんながこちらに近付くにつれ、オレの脳が命の警告音を強く鳴らしていくのが解る。


「わたくし、弱者には手を差し伸べますがぁ…。強者は心を挫いて首輪をつけたい性分なのよねぇ」


 そっぽを向かれた“悪魔”の力によって立ち上がる気力をごっそり奪われた筈だが、薄れる意識の中でも伝導路を経てオレの脳の中で鮮明に声が響く。…要は、耳元で大音量の拡声器を使って声を届けられているようなものだ。


 だからオレは、思考の中で混乱していた。誰も助けに来ないのは何故?灯台下暗しって何の事?見直すって何を?ーー

 天使おんなの声によって言葉がサラダのように混ざり合い、脳内ボウルを乱暴に掻き回される。その最中にグチャリとプチトマトが潰れ、ゆで卵は潰れ、整った葉物はより細かく千切れていく。


「貴方はどうやら、後者の人。たとえ自分の力を使いこなせず、その場で自爆するような出来損ないであったとしてもぉ…」


 キンキンと天使おんなの声が鳴り響き、単語なかみの一つ一つが脳内ボウルごと傷つける刃となっていく。どうにか形だけは保っていた意識いれものも、ついには音を立てて決壊しーーオレは考える事を止めた。



 頭を抱えたくとも身体が動かなければ意味がない。ならば行動しようと思う事すら意味がない。意味なら誰かが与えてくれる、だからオレはーー。




「自分の意志で刀を抜いたのなら、わたくしも同じく武器を構えないと…ねぇ?」


 たとえ頭蓋骨を踏み砕かれようとも、心臓が蹴飛ばされようとも。

 つくばる事すらできない男に役割を与え続けてくれる天使てんしに、最期まで感謝しようーー。



(BAD END LOG05「悪魔に贈る天使の祝詞」)

●今回の選択ミス

自分ひとりで出来ない事は、誰かに頼るのは正しい判断と言えるでしょう。しかし今回ばかりは相手、そしてタイミングが最悪です。


まず、この天使シャルロットは対「戦巫女」用に派遣された戦闘天使です。勿論そんな事はこの時点で誰も、一言も言っていないので「知るかそんな事!」案件な訳ですが…。

彼女の主も「戦巫女ヒロインちゃん以外の敵勢力を削ぐくらい、並行して仕事してくれるだろう」と期待を込めて人選しているようなので、文句はそちらにどうぞ。


ですが天使シャルロット側は「そんな面倒な仕事は嫌ですぅ」とボイコットしてくれているので、自分の命を刈る()()()()()()()()向かってこない限りは、実はそこそこ柔軟に動いてくれます。慢心しっぱなしです。


…つまり、呼び出す人員がマイティならまだ見逃してもらえる目があったかもしれませんが、それ以外の面々を呼び出してしまうとアウトまっしぐら。そもそも前話の時点で主要な面々は全員、“悪魔”の呼び出しに応じる事ができない状態なので前提から誤り(アウト)です。


そして”悪魔”(タロット)を使う時は、必ず誰か動ける人員が傍にいる時でなければ、今回のようにデメリットの面が大きく出てしまいます。タロットを発動するタイミングも、しっかり考えたいですね。

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