第1章08「フローア村の決闘2」
一人、また一人と男たちが薙ぎ倒され、吹き飛ばされていく。その暴力の渦中にいる白い法衣の少女は、拳と脚を武器に大立ち回りを展開していた。
「…これで残りがざっと30人ですか。もう少しで片付きそうですね」
呼吸を乱さず、レイラさんが淡々と語っている内容にオレは戦慄を覚えた。事実、オレが安全圏から見渡す限りではあるが、意識のあるならず者たちの数が目に見えて減っているのは確かだ。マンガやアニメの中でしかお目に掛かれない、「大の男たちが束になっても勝てない」を平然とやってのける光景に開いた口が塞がらなかった。
剣や斧、槍といった武器の類は簡単に避けられ、魔術の系統は彼女の光術を纏った拳で一刀両断。数人がかりで一斉に飛び掛かろうとも、その全ての攻撃を捌き抜き。隙を見せた者からもれなく全員にカウンターブローを叩き込んでいく。一撃で沈まなかった相手には追撃の脚が振り下ろされ、重力に逆らえない身体にしてしまうのだ。ならず者たちからしてみれば、化物を相手に戦っているような気分だろう。
「くそッ、強すぎんだろあの女ァ!」「頭はまだなのか!?」
だがそんな化物相手であっても、まだならず者たちの戦意は高いままだ。「任務の失敗は死と同義」みたいなノリで特攻かけてきてもおかしくはないだろうが、それこそ「頭」が近くに居てこその蛮勇だろう。
そんなキーパーソンが、未だ不在のまま。このままだと全滅まで秒読み待ったなしだ。それでもと期待されている辺り、「頭」とやらのカリスマ性が窺える。
(「頭って事は、それっぽい風貌の人を探せば…」)
『そう単純に行くとは思えないけどね。…さて、賊に集落。大概この組み合わせで起こる事の筆頭は何か、キミなら想像つくと思うけど?』
嫌な想像を膨らませてくれてありがとう女神様、その場所を知ってそうなヤツらの心を早く読んできてくれ。オレの心は簡単に読めたのだ、他人様のプライバシーなんて丸裸にできるに違いない。
『残念ながら、これはキミ専用の芸だ。諦めてくれ』
他人を出しにするんじゃねぇ駄女神。…などと会話している間に、早くもレイラさんのお仕事が終わりを迎えようとしていた。
「く、くそぉッ!」
最後の一人が、短剣を持ってレイラさんに突き刺しにかかる。単純な軌跡を描くその一撃をレイラさんはひらりと躱すと、そのままその男の顎を拳でかち上げ、トドメと言わんばかりに回し蹴りで地面に叩きつけた。レイラさんが100人組手(仮)の完全勝利を収めた瞬間である。
「これで終わりですか?まだ物足りませんね…」
…あんなに大暴れしたのに物足りないとか、狂戦士かな?今の発言は聞かなかった事にしよう。勝利の余韻に浸る事なく、レイラさんはスカートの裾の埃を払いながら肩慣らしと言わんばかりに軽く息を整えて、安全圏に引き籠っているオレの元と戻ってくる。
「お、お疲れ様です格闘姫…」
「姫ではありませんっ!」
思わずこぼれた言葉が気に入らなかったのか、レイラさんがまたむくれてしまった。…これは早々に機嫌を直していただかないと、オレも彼女の足元に転がる肉塊になりかねないな。
さて、残る問題は「頭」の存在だけ。どこに身を潜めているのかは分からないのだ、それを探す手段があれば良いのだが…。
「カケル様、どうされました?もう片付きましたよ」
「あ、いや…ちょっと考え事を」
「だとしたら、まずは教会へ。そちらなら、どなたかいらっしゃるかもしれませんし、司祭様がいらっしゃるのであれば比較的安全な筈ですから」
レイラさんに声をかけられて我に返る。このままレイラさんの不興を買うのはよろしくない、一旦この問題は後回しにしておこう。拠点を構えてじっくり考えられる時間があるのなら、それに越した事はないし。
「それにしても、教会かぁ。どんな所なのか想像もつかないので正直楽しみです」
「簡素な造りですが、心が落ち着く所ですよ」
ふむ、ゲーム背景とか映像でしか教会の知識がないのが悔やまれる。そんな所なら、一度は見聞を広める意味で覗いてみても良いかもしれない。二度目以降があるかどうかは、その時のオレに任せる事にしよう。
ちまちまと書き進めております。続きは今しばらくお待ちいただければ幸いです。
(目標は2~3日ほど。頑張ります…)
挿絵は時幻セト様に描いていただきました。この場をお借りして御礼申し上げます。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
●この時「頭」って仲間を助けずに何をしていたの?
後に登場する頭は、確かに仲間を護る為ならレイラ相手でも割って入った事でしょう。この一口解説でお察しかと思います。
また、この村に存在するならず者は、大きく勢力が2つに分かれます。1つは「頭」が直接指揮を執るグループA、もう1つがその頭の指揮を真似て漁夫の利を狙うグループB。今回主人公たちを襲ったのは後者、「頭」にとっては傍観していても問題ないグループBだったという訳です。
●”ヤツヨ”は主人公以外の心は読めないの?
言及されている通り、基本的に四六時中思考が筒抜けなのは主人公のみ。物理的に相対する事があれば心を読む事は可能だが、「そんな回りくどい事をするより全体攻撃で吹き飛ばした方が早いよね?」という思考の為、まず他人の心は読まない。
逆に、それなりに気を許した相手には進んで心を読んでくる。一種の好感度把握システムとして機能するが、余程の事がない限りは”ヤツヨ”が主人公を見放す事はしない(=常に心を読んで自らの嗜好を満たしている)。




