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44.完成! 残念ヒロイン図鑑《エピローグ》

 その後、私とノエル殿下は、一旦落ち着こうと、応接室に移動してきた。


 陛下のお姿が変化した影響により、これから慌ただしくなるのは避けられないから。

 ちなみに、お父様は早くも陛下の補佐として、走り回っている。

 

「奇行に走る孤児院出身の養女たちは、神が僕たちに試練を与えるための存在――天使だったんだね」

 

 ノエル殿下は、感慨深そうに、うなづいた。


 そうか。厄介な存在だと思っていた彼女たちは、天使だったんだ。

 そして、無事に私たちは試練を乗り越えることができたから、認めて頂けたのね。


「アンジェリカ、怖い思いをさせて、ごめんね。でも、僕は嬉しかったよ。才能がなくても、王太子でなくても愛してると言ってくれて。共に父上に立ち向かってくれて」


 ノエル殿下は愛おしそうに微笑みながら、私の頬を両手で包み込み、おでこをくっつけた。



「あのね、アンジェリカ。僕が君を初めて見つけたとき、君は庭で、ままごとをしていたんだ。あの頃の僕は、サヴァランと競わされ、課題をこなせなければ、父上から厳しい折檻を受ける日々に絶望していた。歴史の問題を1問でも間違えようものなら、父上や教師たちから、代わる代わる何時間もかけて説教されたし、暗い部屋に閉じ込められ、食事を抜かれたこともあった。母上は僕がそんな仕打ちを受けていても、何も言わずに無関心で、優秀じゃない子供は要らないという意思表示のように、僕には感じられたんだ」


 ノエル殿下は瞳を潤ませながら語った。


 両陛下のしつけが厳しいことは有名だけど、まさか、そこまで酷いものだったなんて。


 幼少期からそのような目に遭っていたことを、今までこの御方は、おくびにも出さずにいたから。


「そんな時、父上に婚約者を決めるように言われたんだ。最初は全く気乗りしなかった。結婚しても幸せそうじゃない両親を見て来たから。けれども、反抗すれば折檻されるだろうから必死だった。何人かのご令嬢と会ったけど、最後に向かったコンフィズリー公爵家で、君と運命の出会いを果たした」


 まぶしいものを見るような目で見つめられながら、宝物に触れるみたいに、優しい手つきで髪や頬を撫でられる。


「ままごとをしていた君は、ぬいぐるみに向かって話しかけていた。『アンジェは、ありのままのあなたが大好きよ』と。その瞬間、僕が知った気になっていた世界が揺らいだんだ。この世には――僕が将来治めるこの国には、こんなにも美しいものが存在していたんだって。おそらく、君が発したその言葉は、コンフィズリー公爵夫人が君に贈った言葉だったんだろう。温かい家庭で育った君は、ぬいぐるみにも自然と同じ事を伝えていたんだろうね。あの時の僕は、ずっと誰かにそう言って欲しかったんだ。今の僕は、君にそう言って貰えて嬉しかったんだ」


 髪に手を差し込まれ、慈しむようなキスをされる。 

 それが殿下が私を選んでくださった理由だったんだ。


「アンジェリカ、ずっと好きだった。君だけを見ていた。リスみたいにご飯を食べるところも、困った人を見つけると、自然と手を差し伸べられる優しいところも好きだ。普段はクールに見える君が、明るく無邪気に笑う姿から、ずっと目が離せなかった」


 照れたように微笑む殿下は、真っ直ぐ私を見つめながら言ってくださった。


 全然知らなかった。

 そんな頃から愛されていたなんて。

 その事がこんなにも幸せなことだったなんて。


「ノエル殿下、わたくしを見つけてくださり、ありがとうございます。こんなにも愛してくださり、ありがとうございます。これから一生をかけて、私も貴方を愛します」


「うん。こちらこそ、こんなにも幸せな気持ちにさせてくれてありがとう。もう絶対に離さないよ」


 力強く抱きしめられると、溢れんばかりの愛おしさが胸を満たしてくれた。




 平和な日々を取り戻した、とある休日のこと。

 寮の自室で机に向かっていると、ノエル殿下が訪ねて来た。


「僕だけの最愛の宝物のアンジェリカ、会いたくて来ちゃったよ」


 微笑む殿下に、愛おしそうに右頬にキスされる。


 日に日に、アンジェリカを装飾する言葉がどんどん長くなっているような⋯⋯


「はい、ノエル殿下、わたくしも会いたかったです」


 お返しに頬にキスする。


「何をしていたんだい? 勉強のようには見えないけど」


 ノエル殿下は、机の上にある本に視線を落とした。


「はい。これは、天使のみなさんとのやり取りを記録し、図鑑として、したためたものです。天使のクロエ様が、去り際に授けてくださった記録と統合して作成しました」


 本を差し出すとノエル殿下はペラペラとページをめくる。

 時々クスクスと笑いながら⋯⋯


「これは良く出来ているね。複製して出版しようか」


 イタズラっぽく笑っていらっしゃるけど、これは、どこまで本気なのか。


「それは遠慮しておきます。恥ずかしい事もたくさん書かれていますから⋯⋯」


「そうかな。僕たちの愛の証明みたいじゃないか。せめて原本は王立図書館で保管して、後世に残そう」


「もう、ノエル殿下ったら⋯⋯」


 どちらともなく顔が近づき、じゃれ合うようなキスを交わす。


「愛してるよ、アンジェリカ」

「はい、ノエル殿下。わたくしも愛しています」


 私たち二人が今、幸せなのは、他でもないヒロイン(天使)の皆様のおかげだ。











【完結】


 







最後までお読み頂き、ありがとうございました!

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本当にありがとうございました!



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