第833話 チームアレン⑧ドライゼン戦
ドライゼンはコンズの火の玉による攻撃を受け、骨だけになったのだが、それでも倒されていなかった。
『我は竜王となり神界に至る者。このような場所で立ち止まるわけにはいかぬ!』
元々腐った目玉があったのだが今は焼け焦げ窪みになっているが、眼底から真っ赤な光がアレンたちを見つめ、自らの強い意志を口にする。
【名 前】ドライゼン
【年 齢】0
【種 族】魔神王スカル
【体 力】380000
【魔 力】290000
【攻撃力】400000
【耐久力】200000
【素早さ】380000
【知 力】220000
【幸 運】0
【攻撃属性】闇属性、体力超回復
【耐久属性】魔法耐性(強)、状態異常耐性(強)
(全ステータスが10万アップで体力超回復がついている。ふむ、魔神王ゾンビから魔神王スカルに種族が変わっているな。何か過去の記憶が蘇えることが最近多いな)
前世で健一だったころやり込んだゲームの1つに、中ボスがラスボス前に何度も姿を変えて戦かったことを思い出す。
『おい、何している? こっちを見よ』
アレンは魔導書に載ったドライゼンのステータスを確認してこちらを見ないことが気に食わないようだ。
仲間たちが全員武器を取り、後衛職のソフィーたちは距離をとりつつ、次の行動に速やかに移すように警戒を続けている。
「すまないが静かにしてくれ。これからのことを考えているんだ」
『なんだと?』
(それにしても魔神王が3体で勝率68%は低すぎるな。キュベルの底が見えないし、あの場にバスクもドライゼンもいなかったから……。だが、それを考慮しても)
アレンはキュベルの横で目玉の魔獣のようなものが語り掛けていた時のことを思い出していた。
「アレン様、危険です!!」
下がった場所からソフィーが悲鳴の声を上げる。
アレンはまだ覚醒スキル「剣士の忠誠」が発動したままのため、体力は10分の1を維持している。
今、アレンがドライゼンのブレスでも何でも攻撃を受ければ、即死は免れないだろう。
ドライゼンは目を光らせ、骨だけとなった前足を高々と上げ、一気に振り下ろした。
『アレンよ! 貴様さえいなければ! 我の願いは既に達成していたのだ!!』
力を溜めたドライゼンの凶悪な前足がアレンに触れそうな瞬間だ。
音速に達したドライゼンの数倍の速度で、スレスレで躱したアレンは軽快に振り下ろされ床石に深く陥没した腕を駆け上がり、さらに、ドライゼンの頭部目掛けて跳躍した。
『ぐ!?』
「はあああああああ!! 霊呪爆炎撃・改!!」
アレンの剣から炎が溢れ無数の髑髏を象る、グラハンの特技「霊呪爆炎撃改」が額から口元に向かって斜めに叩き切る。
『グオオオオオオオオ!!』
だが、それでも目の前に飛び上がってきたアレンに対してドライゼンの怒りは収まらない。
胸元で溜まった漆黒の炎がろっ骨の隙間から溢れており、首の骨から口元へと上がっていく。
「うりゃああ!! 真・銭投!!」
ドライゼンの目の前にいるアレンを救うべく、ペロムスが喉元へ光金貨を投げる。
ドンッ
『グフ!? だ、だが!!』
次の攻撃の準備をしていたペロムスのスキル「真銭投」によって頸椎の1つを粉砕しドライゼンの首がぐらりと揺らぐ。
「はああああ!! 神技・天空!!」
フォルマールがスキル「真強引」を3度ほど発動し威力を増した神技「天空」を放つ。
上空に打ち上げた矢はドライゼンの頭上で100本に分かれ、全長100メートルの巨躯の隅々を突き立てる。
『わ、我は……』
アレン、ペロムス、フォルマールによる3連撃によってドライゼンの目の窪みの底で光る真っ赤な闘志が消えかけそうになる。
それでも、ドライゼンは喉を砕けてなお、攻撃を止めようとしない。
「はああ!! 三界無双!!」
『ぐひゅあああ!?』
ファルネメスに跨るクレナが跳ね上がり、神器アスカロンでスキル「三界無双」をドライゼンに食らわせる。
「へば!?」
「おい、クレナ!? そこは!!」
胸骨を粉砕した瞬間、漆黒の炎は行き場を失い、一気にあたり一面に広がろうとする。
まだドライゼンの側を滞空するアレンと、ファルネメスと一緒にやってきたクレナが漆黒の炎に巻き込まれそうだ。
「トーニス様!!」
『やれやれじゃて!!』
水の大精霊トーニスが2人の周りに水の膜でできた結界を貼る。
それでも全身から煙を上げるアレンが地面に落ちてきた。
「ふう、やっと倒したぜ」
ブンッ
『魔神王ドライゼンを1体倒した』
「大丈夫ですか! アレン様!!」
「ああ、無事に魔神王を倒したことだし怒らせ作戦が上手くいったな」
ソフィーはアレンがドライゼンのヘイトを全て集め、仲間たちに攻撃の準備をしていることに気付いていた。
ほかの仲間も同様なのだが、それでも、圧倒的な力を持つ魔神王相手に自らを囮にする作戦をしないで欲しいと呆れた視線を送った。
ドライゼンが倒されたログを確認し、灰となって消えていく。
「よし、時間がない。目の前の結界とやらを破壊しよう」
「うん!!」
クレナの元気のよい返事を聞いて、アレンたちはブレマンダの側にある魔法陣の上にある結界の下へ向かう。
(ブレマンダを倒しても魔法陣も結界が消えないな)
ドライゼンたちを呼び出していたいくつかの魔法陣はブレマンダが倒されて消えているが、光の柱を天井まで伸ばす魔法陣に何も変化がなかった。
魔法陣の中に何やらキューブ状の物体がある。
ダンジョンでも見てきたものに似ているが、どこか、ヘビーユーザー島の動力源の中にあったものに近い気がする。
「……たしか、これが魔王城を隠していると聞いたな。破壊するぞ。霊斬剣・改」
アレンは自らの剣を掲げ、グラハンの特技「霊斬剣改」を叩き込む。
『ぶうううううん。魔王城を隠匿するための保護結界に強い衝撃がございます。システムの維持に深刻なダメージがあるかもしれません。直ちに様子を見に来てください』
キューブ状の物体は何やら点滅し、警戒音をブンブン発生させているが誰も来ないようだ。
「……よし、どうやら破壊した方が良いやつのようだ」
アレンが皆に視線を送ると軽く頷いてくれる。
精霊も交じって全員で結界とその中にあるキューブ状の物体に攻撃を加える。
ズガンッ
何分もしないうちに結界を破壊し、さらに結界内にあったキューブ状の物体も破壊することができた。
(変化がないがこれで魔王城は外から発見できるようになったかな)
「アレン様、どうされました?」
「どうすんだ? 戻んのか?」
「俺たちは俺たちのやるべきことをやろう。ルプトを救わないとな。進むのみだ」
「おい! 仲間たちだけじゃねえ! あそこには10万人もいるんだぞ!!」
命の重さを誰よりも知るキールが声を荒げる。
「それはできない。ホーク、窓の外に出てみてくれ」
『ピィ!!』
アレンは鳥Eの召喚獣に対して壁に等間隔にある窓から外に出るように指示をする。
バイイイイン
「ホークが吹き飛ばされた!!」
『ピィッ!?』
跳ね返される鳥Eの召喚獣を指さしてクレナは叫ぶ。
「破壊できたのはこの城を隠匿するための結界を維持するためのシステムだけってことだ。先に進もう」
仲間たちも状況が理解できてところで、大広間の入ってきたとは反対側の正面の通路を進むと扉がある。
扉を抜けると正面に巨大な扉、左右に遥か先まで伸びる道がある。
「随分長い通路だな。何だよ、あいつ倒しても迷宮解除されないのかよ」
左右に伸びる道の終着点が全く見えず、何キロメートルも先に続いている。
「ルーク、残念ながらそのようだ。倒されても維持されるタイプの魔法なんだろう」
土魔法の壁や精霊の力による水の生成など、この世界は術者や使い手が死んでも残るものもある。
ローゼンヘイムのラポルカ要塞は大精霊使いが数千年前、土の大精霊の力を借りて作ったと言われている。
「正面の扉に3つ目の髑髏が掘られているな。正面と右目が埋まっているってことは……。俺たちの道とシアたちのところが攻略が済んでるってことじゃねえのか?」
キールが正面の扉の攻略を済ませてくれる。
「それは幸先が良いな。あとはヘルミオス殿のところを攻略すれば、魔王のいる場所への道が通じるのではないのか」
3手に分かれた内2つが既に攻略済みと推測し、順調だなとフォルマールが状況を整理する。
「……これが俺たちの勝率32%か」
「32%?」
「いや、キュベルたちが会話していただろ。キュベルたちの勝率は68%だって。だったら俺たちの勝率は32%になる。随分低いなと思ってな」
アレンはずっとキュベルの会話に違和感を覚えていた。
あの場に3体の魔神王がいて、そのうちキュベルとオルドーは神界闘技場で武具神やヘルミオスやクレナたちと戦っている。
先ほどブレマンダを倒したが、あそこにバスクやドライゼンがいたとしてもアレンたちの勝率は5割を超えているような気がする。
メルスたちを地上から削除して呼び出すなど手段を択ばなければ8割強でアレンたちが勝てると考えている。
10日の間、キュベルが準備してきたものが何か分からないが、あの時1階層にいたキュベルからは勝利を確信しているようだった。
それが、この場で既に3チームのうち2チームを攻略できた、今の状況と確率が合わない。
「……ああ、敵はまだ何か奥の手を隠していることがあるかもしれないな」
「あん? 隠していることって何だよ」
「分からない。……が、油断をするなってことだ」
「で、どうすんだ?」
「ああ、まずはヘルミオスさんたちのところへ合流しよう。恐らくだがシアやドゴラたちもヘルミオスさんところへ向かっているはずだ!」
「先を急ごう!!」
アレンたちは勇者ヘルミオスたちのチームを救うため、左手の道を進む。
アレンたちは、ブレマンダが使う「無限障壁」を、スキルを使うことなく、武器を力で押し付けるだけで5枚全て破壊した死神の存在を知らないのであった。





