第823話 チームシア⑥究極兵器バスク戦(4)
バスクの弱体化を狙っていたシアたちはデバフ系の神技を打ち続けたが、バスク自体もシアたちの守りの要を狙っていた。
ルバンカは中衛、後衛の守りのため、壁役となって、バスクの後方への攻撃を受けたり逸らしたりしていた。
ルバンカの変わりにほかの前衛が圧倒的な攻撃範囲を誇るバスクの攻撃を受けるのか。
獣Sの召喚獣で物理攻撃に耐性があり、連発で受けなければバスクな強力な攻撃を耐えられる覚醒スキル「嵐獣化」を使っていたルバンカだからこそ可能であった役割だ。
ルバンカがバスクに倒されてしまい、ほかの誰が同じことをやっても犠牲が広がるだろう。
ホバたち十英獣の困惑が広がる中、ゆっくりとバスクが十英獣に迫ってくる。
『いひひ、どうしたよ。お? ドゴラちゅあああん。お前はまだやる気みたいだな。気に食わないぜ。おう?』
ズンズンと迫る余裕を見せて迫るバスクに対してドゴラが一歩も引こうとしない。
「俺が抑えるから、倒す準備しててくれ」
「なるほど、今やるんだな。獣神化を一度解除したのだ。一発勝負だぞ」
「ああ、分かってる。絶対に倒すぞ」
『おいおいおい、なんだ、お前ら。分かったぜ。やる気だと思って逃げる算段か? 誰も逃がさないぜ。皆殺しだ。ドゴラ、まずはお前からだ』
勝利を確信したバスクがゆっくりと大剣を振り上げた。
全長10メートルはあるバスクの大剣はそれぞれドゴラの数倍の大きさがあり、既に斬撃の間合いに達している。
「ペクタン! いくぞ!! 戦破陣!!」
ここまで取っておいたスキル「戦破陣」を発動した。
『プルップー!!』
ドゴラの足元に魔法陣が生じ、シアや十英獣など仲間たちを満たしていく。
さらに、ペクタンがドゴラの合図に答えるように金色にキラキラと泡が全身を弾けるように輝きだした。
さらにペクタンと一緒にドゴラまで輝きだす。
『けっ! それがどうしたよ! 真・修羅無双撃!!』
バスクの凶悪な大技がドゴラに襲い掛かる。
スキル「戦破陣」の効果でスキルの威力が上がるが、ダメージは1・9倍になる。
なお、周囲の仲間たちのダメージは0・1倍になる。
与えるダメージを2倍近くにして、仲間たちのダメージを10分の1にする有用なスキルだが、状況によってはドゴラの命取りになる。
強化しまくったバスクの一撃一撃はとても強力で、ドゴラは初撃で死ぬ可能性もある。
そのため、いくつもの条件が重なり、ここぞという時のために取っておいた。
『よっし、ぐちゃぐちゃに切り刻むぞ!!』
魔剣オヌバが勝利を確信して、いっそう刃を禍々しい形状に変えていく。
キンキンキンッ
『な!? なんだと!!』
『ギイ!?』
あれほどのダメージを与えていたスキルのダメージが一切通らなかったことに対して、バスクもギイも驚愕する。
『うおおおおおお!! 真・爆炎破!!』
神器カグツチが炎で包まれたかと思ったら、全てを燃やし尽くさんと火柱がバスクを襲う。
『がは!!』
ステータスと耐性が弱体化しているバスクの身を焦がすが、目的はダメージを与えるだけが目的ではなかった。
火柱を上げることによってバスクの視界を奪い、仲間たちを安全に移動させるためだ。
「時間がない。急げよ!!」
ペクタンによって光の粒が全身から弾けるドゴラが背後にいるシアに声をかける。
『分かっている! 神技発動! 獣神化!! 皆、距離を詰めよ!! グオオオオオオオオオオオオ!!』
攻められる中、シアが再度スキル「神技発動」および神技「獣神化」発動を発動した。
『今こそ、奴を倒すのだ!!』
『おう!!』
メキメキと獣の姿になるホバの声にハチが応える。
シアも十英獣たち、今回の作戦は共有されており、必ず勝てる場合と判断した場合にのみこのスキルを発動する危険な作戦だと理解している。
『く、てめえか! お前がドゴラをおかしくしてんのか!!』
『プルップー』
目を瞑り躱すそぶりも見せず、光の中でクルクルと回るペクタンに向かって、バスクは左腕を伸ばし斬撃を振るう。
しかし、足元や周りの床石が粉砕するほどの一撃だったのだが、ペクタンは当たった様子がない。
ルバンカを何度も苦しめた伸びる左腕でのダメージをもろに受けたのだが、ペクタンの体力は1も減っていなかった。
ペクタンは覚醒スキル「無敵茸」を使用している。
おかげで発動時間中は一切のダメージを与えることは出来ない。
【覚醒スキル「無敵茸」の効果説明】
・対象1人と自らを攻撃無効の無敵状態
・持続時間は幸運/10000秒
・スキル使用中は他の行動が一切とれず、クルクル回っている
・クールタイムは1日
また、ドゴラとシアのクールタイムだが、神の加護、装備、ロザリナのスキル「桜花爛漫」によって24時間であっても、2時間以内になっている。
神技や強力なスキルはクールタイム1日のものが多いのだが、発動からすでに4時間ほど経過しているため、シアはスキル「神技発動」と神技「獣神化」を再度かけることができた。
今回一度、神技「獣神化」を敢えて解除したのは、その他のスキルの全てを再度使用するためだ。
神技「獣神化」は自らのスキルのクールタイムのリセット効果がある。
【ドゴラのクールタイム半減効果一覧】
・加護②:全スキルスキルクール半減
・腕輪①:クールタイム半減
・腕輪②:クールタイム半減
・ロザリナのスキル「桜花爛漫」:クールタイム7割減
【ドゴラのクールタイム半減効果一覧】
・加護②:全スキルスキルクール半減
・加護④:クールタイム3割減
・腕輪①:クールタイム半減
・ロザリナのスキル「桜花爛漫」:クールタイム7割減
※ステータス紹介から抜粋
「行くぜ、おら、爆炎撃!!」
なお、ドゴラは2時間ほど前から神技発動を使用しているため、まだ効果は切れいていない。
持続時間が1時間のスキルや神技なら、時の大精霊タイムより2倍、ロザリナのスキル「風花雪月」により1・9倍となり、4時間近い持続時間を誇る。
『ギイ!?』
バスクが腕を伸ばしている間に魔力を込めた絶妙な攻撃のタイミングを狙っていた。
バスクの懐に飛び込んだドゴラの神器カグツチから、超高熱の刃が生じギイの目玉を焼き尽くす。
回復のタイミングを窺っていたギイだが、神技「爆炎撃」には大ダメージと一緒に、火傷効果が追加され、行動阻害の効果がある。
だが、阻害したのはギイの目玉部分のみでバスクの本体に影響が広げられなかった。
『調子に乗んじゃねえ!!』
『ふん、奥義「風獣」!!』
『げぼあ!?』
『ギイイイイイイ!!』
右の拳に強風をまとったシアは、ギイの巨大な目玉が潰れるほどの一撃を与える。
一体となったバスクの左肩の部分の目玉ごと、数歩分ほど全身が後退してしまい、攻撃がキャンセルしてしまう。
【シアの奥義、秘奥義の説明簡易版】
・奥義「風獣」:コンボ条件なし。1回攻撃。風属性。対象をノックバック
・秘奥義「秘奥義無牙」:コンボ条件は奥義「風獣」をコンボに入れている、かつ、50連コンボ達成していること。両手、両足、牙を使った32連攻撃
一瞬の硬直の中で、十英獣が集まりつつある。
ドゴラとペクタンのおかげで、シアたちのダメージは10分の1だ。
この状態なら前衛、中衛、後衛と前後100メートルほどの距離を取るよりも、全員が攻撃を受ける位置にいても、一度に回復できる場所にいた方が良い。
ペクタンが覚醒スキル「無敵茸」の発動中のため、特技を使用した回復行動がとれない。
壁役のルバンカも倒されて、聖獣帝フイだけが回復役のため、一度の回復魔法の範囲に全員がいる必要があった。
だが、焦っているのは覚醒スキル「無敵茸」の持続時間は、ペクタンの幸運の1万分の1の秒数分しかないということだ。
今回の作戦の全容なアレンから託されているのだが、幸運をペロムスからスキル「幸運十一」によって60万ほど分けて貰った。
地上でメルスが戦っており、ネスティラド戦のように天使B「ラッキースロット」の効果で幸運を跳ね上げる余裕も時間もなかった。
結果、ロザリナやソフィーのバフも重なり、90万を超える幸運を手にし、覚醒スキル「無敵茸」は90秒強ほどの持続時間を誇る。
だが、そのうち30秒の時間が過ぎてしまっていた。
『時間がないぞ!!』
『分かっています! 針地獄!!』
シアの声に全身を陽炎のように揺らすゲンが応える。
走るのを止めたヤマアラシの獣人のゲンが背中を前方へ向けると背中の全ての針がギイ目掛けて発射される。
シアやゲンの連撃によってとうとうギイの目玉が大量の体液をまき散らし、爆散した。
『こ、こりゃいけねえぜ……』
『おい、逃げんのかよ!!』
『仕方ねえだろ。こりゃ、まずそうだ。回復役もいなくなったしな。ルプトよりも自分の命が大事だぜ』
ギイがやられたところでバスクの判断は早かった。
両足の足首にそれぞれ付けた足輪がバスクの魔力によって輝きを増す。
だが、何度も逃げてきたバスクがこのタイミングで撤退を試みるなど誰もが予想してた。
『逃がすかよ! 切裂大車輪!!』
『ああ、足輪を破壊しろ!双剣天空!!』
爪獣帝パズが両手のクロウを前に突き出し縦回転に、双剣獣帝セヌが双剣をそれぞれ握りしめて横回転に回り、巨躯のバスクの数メートルに達する足元へと襲い掛かる。
ガリガリガリッ
ガリガリガリッ
足輪にはめられた宝玉が輝きを失うほどの攻撃にバスクも驚愕する。
『やろう、このままじゃ……』
逃げるよりも攻撃を選択すれば、他の結果もあったかもしれないが、これも最初にギイを破壊したところから、ドゴラたちがバスクの行動を予想したことからすでに始まっていた。
『は!! 断絶斬!!』
パズとセヌが退避したところで剣獣帝ハチが鞘に納めていた神聖オリハルコンの剣身を横一線に超高速で振りぬいた。
2人の攻撃によってヒビが生じていた両足の足輪はとうとうハチの攻撃によって破壊される。
『よし! これで逃げられなくなったぞ!! 三限犀突!!』
斧槍獣帝ラゾが神聖オリハルコンのハルバードでバスクの腹目掛けて3連続の突きを繰り出す。
退避行動を許さずバスクを負いつめていくドゴラたちであった。





