望まぬ来訪者
「朝早ぇなぁ」
「家畜達の世話があるからな?ほら、お前はこれを持て」
「・・・・眠い。俺もっと寝てたかった」
全くだらしない。
いい若いもんがダラダラと。お前らさては、俺があの宿舎から居なくなって好き勝手に暮らしてるな?
たるんどる!!
「ペシュメル様奥さんはどうしたんだよ?」
「ああ、アイツは今、実家に帰ってる。何でも姪の子供がもうすぐ産まれるらしくてな、その手伝いに行っている」
「へぇ。そりゃめでてぇな」
お陰で家の仕事が多くてかなわない。
お前達いいタイミングで現れたな。
存分にこき使ってやるぞ?
「やっぱりそんな甘くなかったかぁ。どこにいても働かされる運命の俺」
「何だ。マッジンの実家は相変わらずなのか?お前帰るとこき使われるんだろ?」
「そうなんっすよ。本当アイツら我儘放題で・・・だから結婚出来ねぇんだって誰か言ってくれないかな」
はっはっはっ!そんな恐ろしい事は言えんだろうな?
女性を本気で怒らせると怖いぞぉ?
しかも根に持たれるからな。やめておけ。
「終わったぞ?次は何する?餌やりでいいか?」
「ああ。あの餌箱に入れてくれるか?それが終わったら飯にするぞ」
「そういや、昨日のご飯はペシュメル様が作ったのか?結構美味かったよな?」
「そうだ。妻に教わった数少ない料理だぞ?煮込み料理なら何とかなるものだ」
お前ら急に来るから、あれしか用意出来なかったぞ。
まぁ事情が事情だから仕方ないがな。
「あれ?じゃあ朝ご飯は今から作るんすか?」
「いや?セラが作っているが?」
「「え!?」」
ん?なんだ二人共。何だか凄い顔色だが?セラが作ったらまずいのか?
「おい。なんでそんな事に?アイツ貴族のご令嬢だぞ?料理なんか作った事ねぇはずだけどな?」
「大丈夫かな?大丈夫なのかな?」
ほぉ!それは、面白そうだ!!
どんなものが出来上がるかな?
「あ、お帰りなさい」
「帰ったぞー!どれどれ?朝ご飯はどんな感じかな?」
「すみません。簡単な物しか用意できなかったのですけれど・・・」
「「・・・・・・・」」
二人共固まっているな。
うむ?確かに中々斬新な野菜の切り方ではある。
「あ、あの。私、実はあまり料理は作り慣れておりません、で、でも、あの、味はそんなに悪くないと思いますわ!」
「気にするな気にするな!腹に入れば皆一緒だ!ほら、お前達もさっさと座れ!」
「お、おう」
「・・・うん」
この香りはコーンだな。ほうほう、コーンシチューか?
中に芋やら鶏肉やら入っているな?お、これはハーブかな?
「チーズも少し分けて頂きました。ティファ様の様にはいかなかったですが、ちゃんと溶けていると思いますので、パンにのせて食べて下さい」
「こりゃ美味そうだ!では、頂こう!」
「いただきます」
「はい。召し上がれ」
ふむふむ?ん!具材は大きいがちゃんと火は通っているぞ?味もとても良いじゃないか!俺の作る物より美味いぞ?なんだ、料理出来るんじゃないか!
「・・・・・これ、この味・・・」
「え?何で?セラ嬢もしかして・・・」
「・・・・はい。実は時間の合間に私もイノリさんとティファ様に料理、教えてもらってました」
ん?ティファ様?誰だそれは?聞いた覚えがあるような、ないような・・・。
「料理の手順や食材の火の入れ方。切り方、味の付け方は覚えているんです。ただ・・・実際自分で物を切ったりするのは、まだ上手く出来なくて・・・見た目が悪くて、すみません」
「いやいや!凄いよセラ嬢。これちゃんとティファの味だ!めっちゃ美味い」
そうだな。さっきから固まっているが、ギャドもなんか言ってやったらどうだ?どうしたんだお前。
「ギャド様?お口に合わないですか?」
ん?お前顔が真っ赤だぞ?なんなんだ?
「・・・・セラ、お前・・・これ以上俺をどうしたいんだ。骨抜きにしたいのか?そうなんだろ?」
「ギャド?何を言って・・・・あ!!」
ん?なんだマッジン?俺は何の事か分からん教えてくれ!
「これ。私が一番最初に覚えた料理なんです。ギャド様が・・・・お好きだと聞いて・・・」
「「・・・・・・・」」
大人になれマッジン。
そこで二人を羨んではいけない。俺達は空気だぞ?今だけは空気に徹してやれ。・・・・それにしてもギャド。
お前いい歳してその反応。本当にお前は可愛いな!!
「凄く・・・・美味い」
「あ、ありがとう、ございます・・・」
うーーーーーん。あ、マッジン窓を開けてくれるのか?
気が効くじゃないか。若干室内が暑苦しいからな。
では、俺達も美味しく頂こう。
「心配して損した。惚気なら聞かないから」
「何も言ってねぇし惚気る気もねぇ!!なんなんだお前は!」
いやいや良かった良かった。
二人がここに着いた時は逃げ出さんばかりの雰囲気だったからなぁ。少しは休めたみたいで安心した。
「お前達それでいつ頃戻るんだ?あまりゆっくりもしてられないんだろう?」
「・・・・そうだな。最後かもと思って会いに来たけどよ。もしかしたら、また次もあるかもしれないからな。そろそろ帰るか」
そうだな。
やっと死ぬ事を諦めたか。
決心するのに結構時間がかかったな?まぁ仕方がないが。
「そうだね?お客様も来たみたいだし?」
そうだなぁ。
なんだか、懐かしい顔ぶれだな?
「・・・・ギャド。やはり、ここだったか」
「意外だな。親父自ら迎えに来るとは思わなかったぜ?」
ふむ。
その顔は・・・・全てを知ったのだな。マッティア。
「お前を迎えに来た。ギャド。お前はこの国の皇帝になれ」
「・・・・いいぜ?条件は一つだけだ。セラを必ず俺の妃に迎えると誓え」




