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赤い瞳の少年

「陛下は操られている」


それを聞いても俺は決して驚きはしなかった。

俺も変わる前の陛下の事を良く知っていた。


私が子供の頃よくお見かけした陛下は、あんな人ではなかった。年々陛下はおかしくなって行く。


「また、暫く国を離れる。無駄な事かもしれないが、今の所、手がかりがデズロしかないからな・・・」


もう何年も前、ノア陛下がうわ言のように口にした名。


"カスバールにいる、デズロを連れて来い"


それを聞いた者は皆、混乱した。


誰もそんな人物の事など知らない。


しかもカスバールにそのデズロは居るという。

敵国の人間をどうやって連れて来いと言うのか。


目を覚ました陛下はその事を全く覚えていなかった。


その事を忘れかけていた頃エルハド様は頻繁に姿を消すようになった。その度に宮廷内は勿論大騒ぎだ。


そしてエルハド様を亡き者にし自分がこの国を手に入れたいと企む者共は、その裏で何度もエルハド様の命を脅かそうとした。だが、エルハド様は強すぎた。


「ああ?アイツ襲って来たからチョンして川に捨てといた」


無事に帰って来る度に死体の山が増えていく。

俺は呆れて何度も苦言を吐いた。


「いい加減にして下さい。貴方が動くと余計な死人が増えるんですよ。貴方は一体何がしたいんです?」


「何って。この国を救いたいんだが?」


そんな事が何年も続いていたある日、とうとう終わりはやって来た。


「エルハド様!!何ですかその姿!!それに隣にいる男は誰です!」


その日。

エルハド様は血塗れの状態で俺の前に現れた。

同じく、血塗れのマントを羽織った生気のない男と一緒に。


「カスバールの国王を殺して来た」


それを聞いた時の衝撃を、どう表現したらいいのか。

そんな事が有り得るはずない。


「コイツはデズロだ。デズロ・マスカーシャ。彼は本日をもって我が国の最強魔術師となり、何よりも優先的に守る対象になる。心得ろ」


その名を思い出したのは、それから暫くしてからだった。


彼が大樹に触れ話しかけると今まで豹変していたノア陛下は正気を取り戻し、そして・・・・病んだ。


自分がした過ちに耐えられず、もう立ち上がる事が出来なかったのだ。エルハド様は、その後直ぐに帝位を継承しこの国を立て直していった。



「ペシュメルか・・・護衛など必要ないと、言っているのだがな?」


「騎士団は忙しいのでたまにはこうやって休ませて頂けると助かります」


「ははは。本当に・・・お前は・・・面白い奴め」


この方の国を守りたかった。


ノア様。

私は貴方に出会えて、この国の騎士になれて本当に幸せです。貴方は沢山の人々を救って来ました。だから、どうかもう、苦しまないで下さい。


「お前に頼みがある。お前にしか、頼めない」


彼女は今どんな気持ちでいるのだろう。

真実を知らされ自分が愛されていた訳ではなかったと思い知る。けれど、最初から分かっていたはずなんだ。

そうでしょう?オリヴィエ様。


「お久しぶりですねマッティア様。その子が貴方のご子息ですか?」


「ああ、ペシュメル殿。ギャド、ご挨拶を」


赤い髪に赤い瞳。

ふっくらとした可愛らしい頬。

愛嬌のある、その顔が私の目に飛び込んで来た時、私は戦慄した。


この子は、間違いなくノア様の子供なのだと。


「初めまして!ギャド・マッカローニです!」


神は残酷だ。


この子は何も悪くない。

ただ生まれて来ただけだ。


この子にこれから降りかかる災難は、全て私達大人の世界の勝手な都合に過ぎない。


ノア様に生写しの愛らしいこの子供を奈落の底に落とすのは、間違いなく今目の前に立っている私だ。


「その子供は生かしておけば大きな災いになる。マッティアを騙しあの家を潰してくれ。そして、私の子供を殺して欲しい」


その、予定だった。


「お兄さんとても強そうですね?どうやったら強くなれますか?」


だが、私はギャドを見た瞬間、初めて陛下を裏切った。


私が仕えるべき方は本当はこの子だと、私の血が言っていたのかも知れない。


「知りたいのなら、いつでもお教えしますよ?サンチコアの宿舎にいらっしゃい」


()()()は死なせてはならない。


こんな小さい子供に私はそう思ったんだ。

おかしいだろう?







「自宅に温泉とかどんな贅沢・・・ふぁー」


「いいだろう?退職金使って建てたんだぞぉ?お陰で老後の蓄えが減って妻に叱られたがな」


「そう言えば泊まったのは初めてだな」


そうだな。お前達来ても顔見せるだけで直ぐ帰るからな!俺は結構寂しかったぞ!プンプン。


「まぁこの際だから暫く泊まっていけ。頑張って働いた所で給料は上がらない」


「「確かに」」


なんだ。相変わらずなのか?エルハド様は退位したんだろう?まだ若いのに勿体ない。


「ギャド。お前達は離れの部屋に泊まれ。マッジンは一人だから部屋狭くても構わんだろ?」


「うん、良いけどって・・・え?ギャド、セラ嬢と同部屋なの!?」


マッジン。お前中々ギャドに対して失礼な質問だぞ?

心底本気で聞いたなソレ。


「何か問題あんのかよ?」


「・・・・・アンビリーバボ」


何語だそれは。意味わからん。

ただ、ギャドを馬鹿にしているのは良くわかった。


しかし、ギャドお前立派になったな?

俺は待っていた。お前が決心するのを。


「安心しろ。俺は現役は退いて昔ほど強くないが、それでも並みの人間よりまだ強い。ここに変な輩が来たらちゃんと追い払ってやる。一晩ぐらい楽しめ!!」


「デリカシーねぇな!!余計な気遣いなんだよ!!」


そういう所が揶揄われる原因だと、いい加減気付いたらどうなんだギャド。お前は本当に子供の頃から可愛い奴だな。アッハハ!!

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