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エルハドは知らない

嘘だろ。

それはない。

エルハド様。


「帝位をセルシス様に譲った?」


しかも、そのままカスバールに行っちまったって・・・。

まずい事になった。


どうすりゃいいんだ、俺。


「ギャド様?どうしました?」


「え!?あ、ああ。すまんちょっと疲れてて」


いや、でも。

俺の事は誰も知らない。


俺と元団長と()()()だけだ。

バレたりはしない。

だが、もし、あいつが暴走したら?


俺に、止められるのか?



「おいギャド?なんでお前まで顔色悪いんだよ。珍しいな?働き過ぎじゃね?」


「・・・・ヨシュアか」


しまった。

こいつに勘づかれるとか俺ヤベェな。

気を引き締めて仕事しねぇと。もうすぐセラが手伝いに来るしな。


「ティファが心配してたぞ?お前もハイトも最近帰ってこねぇし。アズラエルの門開いた犯人の取り調べもあるし、コン詰めてんじゃねえのか?」


異空間の割れ目を作ってた犯人な・・・全くアイツらの所為で仕事が倍に膨れ上がった。


おまけに世代交代の手続きで人手をあちらに取られちまってるからな。でも、それぐらいでいい。


忙しくしてないと、余計な事ばかり考えちまう。


「ひと段落ついたら宿舎にも顔を出す。ハイトの方が限界なんじゃねぇか?ティファの飯食べれてないんだろ?」


「・・・・アイツというか、アイツの周りで働いている奴等がな。今、離職者を出されるのは困る。俺も中々手が離せねぇから・・・もう少し大人になってもらいたい」


は!そうだな。でも、アイツの仕事振りを目にしたら文句なんて言えねぇよ。俺が仕事を三山残している間にアイツはそれを終えてもう三山に取り掛かってるぐらいの差が出てるからな。本当に、申し訳なく!!


コンコン。


「あ、じゃあ俺も行くわ!無理すんなよ!!」


「あら?こんにちはヨシュア様」


「ギャドかなり参ってるっぽいから助けてやってな?じゃあな?」


余計なこと言うんじゃねぇ!!

心配かけちまうだろうが・・・・。


「ギャド様。少し休憩して下さい。その間に私書類整理しますから」


「いや、俺も一緒にやる。この量は流石にな」


あの後、事件を起こした首謀者は無事エルハド様に取り押さえられ牢に入れられた。


ベロニカは半端強制的に毎日フィクスと宮廷医療で延命の術をかけに来てる。


エルハド様とデズロ様がティファの義父親と義妹のメリルを連れて来るまでなんとかベロニカを保たせる為に。


エルハド様はそこまで予測して動いていたのだろうか?


「ギャド様?本当に、少し休まれたら如何ですか?」


気付かれて、いない筈だ。


この事はササラにも言った事がない。


「ギャド、様?」


セラ。お前にも言えない。言いたくない。


「じゃあ、少し休む」


「え?ギャドさ・・・きゃ!?」


手放さなきゃいけない。

このままじゃ駄目だ。

このままじゃいつかセラに知られる。

あの人が、黙って俺を解放する訳がない。


「ん!んん?」


どうして思い出したんだろうな。

忘れたままでいたかった。

いっそ出会わなきゃよかった。・・・セラ。


「・・・・・はっ・・・ギャド、さ、ま・・ここでは・・駄目」


「なんだよ。ここじゃなきゃ良いのか?」


「ひぇ?!ギャ、ギャド様?」


セラ。俺は・・・・。


バーーーーーーン!!!


「・・・・おい。このクソ忙しいのに余裕だね?騎士団長殿?」


「・・・・いや、これは。一瞬休憩してたというか・・」


やべぇ。俺も今一瞬トリップしてたわ。我を失ってた。

あは、あははは。働き過ぎか?やっぱ。


「え?それを余裕って言うんじゃないの?その書類の束見て、休憩とかほざいてる時点でお前の頭はお気楽筋肉マンなんだよ。そんだけ余裕ぶっこいてんだから勿論、今日中にその束終わらせれるんだよね?余裕だよね?こっちに仕事が回ってきた時点でお前の休暇は永遠に取れないと覚悟しておけ」


「・・・・・仕事します」


バタン!!


「「・・・・・・」」


すまん。本当に申し訳ない。変な空気になっちまって。


「しょ、書類分けてもらっていいか?とりあえずこっちの山終わらせてねぇとハイトに仕事が回っちまうからな」


「は、はい!!」


ずっとこのままでいい。

それで、一年たったらセラとは婚約を解消する。

だから、俺はこれ以上セラを振り回してはいけないんだ。









「ペシュメル。すまないな、無理を言って」


「構いません陛下」


ずっとおかしいと思ってた。


「ギャド、顔を見せてくれ」


「・・・・へいか」


俺と同じ赤い髪に赤い眼。前髪が長くてその顔をハッキリと見た事はなかった。()()()()()


「気付いたのだろう?言い訳をするつもりはない。どんな理由があろうとお前は生まれた」


今までその事がバレなかったのは、親父の髪も赤毛だったからだ。でも、この人の、若い頃の顔を見た事がある者がいたなら、すぐバレていた筈だ。エルハド様は子供の頃、この人の側にあまり居なかったらしい。だから、知らなかった。


「お前は、私とお前の母オリヴィエの間に産まれた正当な王家の血を継ぐ子供だ。そして、エルハドの腹違いの弟になる」


その言葉を聞くまで俺は、何処かで希望を抱いていたんだと思う。実は全部勘違いで、全て馬鹿馬鹿しい俺の妄想に過ぎないと。


「決して誰にも知られるな。お前が生き残る為、そして、お前の家族を守りたいのなら。もし、オリヴィエがこの事を口にしようとするようなら、ギャド・・・・」


絶望は、こんなにも簡単にやって来る。


「殺せ。お前の手で」

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