表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
紅き血に口づけを ~外れスキルからの逆転人生~   作者: りょうと かえ
ヘフランの攻防

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

201/201

ヘフラン①

 それから僕達は問題なく行進を続けた。

 モンスターとは数回遭遇した程度だったし、被害もなく通過できた。


 そしていよいよ、あと数日でヘフランにたどり着く。ブラム王国の軍勢も近くにいる。

 否応なく軍中の緊張は高まっていた。


「定石で言えば、ヘフラン駐留軍と僕達とで敵を挟撃……あるいは入城して守備に徹するかだよね」


 僕は天幕の中でイライザに尋ねた。

 ここからはひとつひとつの判断が重要になる。臨機応変に対処していかなくてはいけない。


「ええ、ジル様……斥候の報告では敵は城を遠巻きにしている様です。こちらの接近を警戒しているのでしょう」


「そういう場合は――入城した方がいいのかな。まずは兵を休ませることができるし、詳しい戦況も知りたい」


 僕の言葉にイライザが賛同する。


「そうですね、それがよろしいかと。あとは牽制する意味でも軍を二つに割って、ジル様と一軍が先に入城されては……?」


 それは考えていなかった。

 確かに符号を決めておけば連携もしやすいし、いきなり全軍で入城するよりは良いかもしれない。

 場合によっては城内と場外の連携攻撃もできるわけだ。


「それなら留守役はガストン将軍に任せれば、安心かな……あとはシーラやライラを残していけば、兵も心細くはならないだろう」


 残される側を思えば、相応の戦力を残す必要はある。各個撃破されては無意味だからだ。


 それに城でだらだらとするつもりはない。

 籠城側と軍議ができればそれでいいのだし。


 ただ、ひとつだけ懸念点があるとすれば。

 サイネスが納得するかだ。


「……サイネスは騒がないかな? レプリカははじめからアルマに見せるつもりだったらしいけど」


「ヘフランに到着すれば、指揮権は容易には動きません。サイネス様もここまできて騒ぎ立てることはないでしょう」


 ヘフランにはディーン王国最強の《三騎士》のひとり、ライオット卿もいる。

 ずっと地方の防衛に当たっていた人物なので僕も面識はない。宮廷政治にも興味がない、根っからの武人との評判だ。


 彼の傘下の将もそのような気質の者が多いと聞く。


「それよりも……ジル様、フィラー帝国の軍がすでに加勢に来ているようです」


「……わかってる。それは本当に問題はないよ。複雑でないと言えば嘘になるけれど……」


 ブラム王国に対するため、フィラー帝国の軍も参陣している。

 父を殺したフィラー帝国。

 恨みはまだあるけれど、教団と戦う中で共闘することになることはわかっていた。

 エステルの勝利は大陸全ての破滅を意味する。フィラー帝国も無関係じゃない。


「因縁があるのは僕だけじゃないし……ディーン王国の人間なら、大なり小なりフィラー帝国には敵対心がある。それは向こうも同じだろうけどね」


 激しい戦争を繰り広げてきたディーン王国とフィラー帝国の間には遺恨がある。

 今はより大きな脅威があるので手を組んでいる――ただ、それはフィラー帝国も同じだ。


 互いに出し抜くことを考えてないわけじゃない。それでも負けるよりは手を組むべき。

 その認識があれば、共に戦うことはできる。


 父も互いに憎しみあって、大陸が滅ぶことは望まないだろう。


「苦しいでしょうが……」


 イライザの声にも気遣いがある。

 わかっている……頭で考えていることと実際は違う。

 もちろん僕だけじゃない。僕の指揮下にいる兵もフィラー帝国と共に戦うなんて、去年には思いもしなかったろう。


 僕は息をゆっくりと吐く。肝に命じるべきことは多い。


「僕が大局を見失うわけにはいかないさ。うまく統率しなくちゃね」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ