ハート(後編)
剛腕と剛腕、馬鹿力と馬鹿力。
ぶつかりあったハートとソフィアを見て、ステラは小さな違和感を覚える。
自分が戦っていた時よりも、ハートが弱く見えていた。
ステラ特化型と考えても、ソフィアと対等である訳がない。
贔屓目に見てもハートの方が腕力は優れているというのに加え、今のソフィアは一目で限界とわかる程ボロボロなのだから。
言葉にするなら血まみれの聖女。
白い服は真っ赤に染まり、足元には常に血だまりが。
そこまで考えて、そして考える事を止める。
この違和感は自分では理解出来ない物だ。
そう、勘が囁いていた。
だからまあ、考えるべき事は違和感ではなくこれからどうするか。
ソフィアに庇われて数秒。
気づけば体は動く様になっている。
ソフィアが治療してくれたのだろう。
「ソフィア。大丈夫?」
「ステラさんこそ大丈夫ですか?」
「治癒してくれたソフィアが一番わかってるでしょ」
「わかってるから聞いてるんですよ。本当に大丈夫ですか?」
「……まって、私治癒前どんな感じだったの?」
ソフィアはしばらく、沈黙した。
そしてにっこりと、嘘っぽい笑顔をステラに向けた。
「言ったら体調悪くなりそうなので黙っておきますね」
「気遣いありがとう。聞かないでおくよ。それで、ソフィアは大丈夫なの?」
「問題ありません。この程度かすり傷です」
それが強がりであるというのは、考える間でもなくわかる。
それ以前に、ソフィアが負傷しているという事実の時点で相当の大問題であった。
あらゆる傷を一瞬で治癒出来るソフィアが負傷したままというのはよほどの事があったかよほどの事が起きている何よりの証拠なのだから。
「ソフィア、正直に言って」
心配するステラの声。
それを聞いて、ソフィアは少しだけがっかりした気持ちを覚えた。
ソフィアの戦略を読む力は勇者パーティーの中でも最下位である。
清らかなる聖女なんて役割もある為軍略や戦術という面に故意に触れなかった事も原因にあるだろう。
だがそれでも、そんなソフィアでも『今一番心配すべきなのはステラの状況』であると理解出来ていた。
「ステラさん。なるべく早く立て直して下さい。私が時間稼げるうちに、出来る事は全部やって下さい。時間はもうあまりありません」
そう言ってから、ソフィアはハートに向かい思いっ切り拳を振るう。
再び剛腕と剛腕がぶつかり合い、爆音が鳴る。
距離を取っていたステラが暴風に押され、二歩分飛ばされる程にその衝撃はすさまじかった。
ソフィアと対峙するハートは焦っていた。
感情がある訳ではないが、緊急事態への即時対処の模索を繰り返すというのは、『焦っている』としか呼べない状況であった。
とある一点がアラミタマにとって最悪の状況を示唆している。
ハートの拳とソフィアの拳はぶつかりあっているという事は、ソフィアに透過が通用していない事を意味していた。
ここにいるハートは『コア』、つまり負けた瞬間にアラミタマの敗北が確定する。
そんな状況に現われた、コアに干渉出来る存在。
緊急事態でない訳がなかった。
すぐさま優先順位を変更し、ソフィアの殺害を最優先事項とし計画を変更する。
だが即座に計画は実現困難と判断され破棄される。
ハートはステラを葬る事に特化している為、ソフィアを殺害するのはコストがあまりにも大きすぎる。
繰り返しの計画修正の末、計画そのものをダウングレード。
ソフィアの排除を最優先とし、ハートは行動を開始する。
だがその前に、ハートは役割遂行の為己にある機能が必要ではないかと考えた。
何度も計画を修正し、次なる緊急事態の対処の為に、それが。
計画立案、修正もそうだが計画破棄が一番辛い。
そういった事を行う機能をハートは持ち合わせていないから、此度判断に時間と多大なリソースを消費してしまった。
だから、それを判断する機能が、つまり『知性』が必要であると、彼は考えた。
数秒の攻防の末、ソフィアはハートに殴り勝っていた。
ソフィアは純粋な戦闘技術、技能、知識を持たない。
だから技量の高い戦士や魔法使いが彼女にとっての天敵となる。
逆に言えば、ハートの様な低知能こう戦闘力タイプは非常に得意であった。
純粋な筋力勝負で並び、神聖魔法という極めて強力かつ阻害出来ない治癒能力を持つ彼女は筋力系戦士の天敵であるとさえ言っても良いだろう。
だからこの結果は当然であった。
ソフィアにとってだけでなく、ハートにとっても。
だから当然――対策を取ってある。
「すまない。こんな卑怯な手段しか取れなくて」
唐突に男性の声が聞こえ、ステラとソフィアは驚き目を見開く。
目の前にいたハートは依然ゴリラのまま。
だが全体的にバランスが整い、足が真っすぐになって……どことなく人らしくなっていた。
直後にソフィアの足元から光の柱が立ち、柱がソフィアを外に出れない様拘束する。
慌てて柱の壁に拳を叩きこむソフィアだが、衝撃は柱の中に吸い込まれ霧散した。
手に全く衝撃が伝わらない程に拘束力が高い。
神聖魔法での攻撃も叶わない。
魔法でさえない、何か別の理屈が働いている様だった。
死ぬ事はないだろうが、代わりにどこか遠くに飛ばされるだろう。
「ここまでですね。ステラさん。いけますか?」
振り向き、ソフィアは尋ねる。
こうなる事は予想出来ていた。
これは、こいつは、自分が戦う相手ではない。
この試練は、ステラが突破しなければならない。
だからソフィアは最初から、ステラが戦える様になる時間を稼ぐ事に集中していた。
「ステラさん。貴女は、神殺しの刃と成れますか?」
求める事は、それ。
敵が神と同一かそれに準ずる存在であると聖女であるソフィアは気付いた。
ハートを、アラミタマを殺す事は神を殺す事となる。
ドラゴン殺しよりも更に上の英雄になる覚悟が、それを為す覚悟があるかという問いに――ステラは首を横に振る。
「ううん。私には無理だよ」
神殺しの刃。
それが出来るのは、きっと宗麟の様な本物の刃だけ。
自分じゃあ……研ぎ澄ませた刃にはきっとなれない。
「だけど……アレを倒すだけなら出来るよ」
ステラは言い切った。
刃となれない己でも、使命を果たす事は出来ると。
「……ですか。わかりました。信じましょう。……今の貴女の顔、とても素敵ですから。クロスさんに見せたい位に」
それに感謝すれば良いのか照れて良いのかわからずステラは困った顔を見せる。
そうして、ソフィアはどこかに跳ばされ消えた。
「すまない。卑怯とは思うが、それしか手がなかった」
「当たり前の様に話すね」
しゃべるゴリラに面食らったステラとしては、普通に話しかけられる事に困惑しかなかった。
「その必要があったからな。改めて名乗ろう。俺はハート。お前達の絶滅を使命とする者だ」
「は、はぁ。ご丁寧にどうも。ステラです」
「自己紹介痛み入る、ステラ。つまるところ、俺はお前達とは決して共存出来ない。望もうと望むまいと種の根絶を賭けた戦いをするしかない。だからこそ、せめて俺は生きる意味と意義が必要であると考える。つまり……誇り高い戦を望んでいる」
そう言葉にし、ハートは拳を構えた。
「悪いけど、私正々堂々とかそういうの得意じゃないよ? 趣味でもないし」
「構わない。生きる為全てを費やしに抗う事。それもまた気高き戦だ」
「だったら大丈夫。私、死にたくないから」
「ああ、それで良い。それでこそ、俺が俺である意義が出る」
ハートは静かに、だけど力強く拳を振るう。
今までの様な荒々しさはなく洗練された拳。
その一撃を、ステラは剣で受け止めた。
その剛腕による馬鹿力で全身悲鳴をあげる。
それでも、刃がすり抜け一方的であったこれまでとは大きく状況が変わった。
「……もう、対処出来る様になったのか」
「ソフィアのおかげでね」
「そうか。仲間は良い。俺に理解出来ない感覚だがそれが事実であるとお前を通じ理解出来る」
「……悪いけど、本気で戦いたいから黙ってくれない?」
「気が削がれるか?」
「その真っすぐさにね」
「なるほど。その様に造られたからそうなるか。わかった。では……ここからは本気で行こう」
ハートは口をチャックする仕草をした後、ラッシュを叩きこんで来た。
気づけば大分ハートの姿は変化し、かなり人に近い外見となっていた。
何故わざわざゴリラを止めたのか。
その理由はきっと、正々堂々と戦う為だろう。
使命を己の意思で背負う為に、誇り高く生きる為に。
そう、ハートは生きていた。
まるで、人の様に。
飛び交う拳を躱し、弾き、蹴りを受け流し、一進一退の攻防を繰り返す。
戦うハートの様子は真剣で、同時に微笑にも見える程楽しそうだった。
後悔なき様に、全力で正々堂々と。
誰かに似ている事が、とても苦しかった。
刃が鈍りそうになる位に。
「おい」
ハートは唐突に戦闘を止め、ドスの聞いた声でステラに話しかけた。
「何?」
「腑抜けるな」
「その方が都合が良くない?」
「使命を果たすだけならな。俺は誇り高く戦いたい。お前がその様子では果たせない」
「だったらどうするの?」
「泥を被ろう。俺が卑怯者となりお前の戦う理由を創る事で」
そう言って、ハートはどこからともなく小さな腕を取り出した。
肘より上に切断面のある真新しいそれを、ステラの方に放り投げる。
大人としたらあまりにも細く小さく、子供にしたら育っている腕。
成人女性の物としても大分小柄なそれに、ステラは見覚えがあった。
「メリーに……何をしたの?」
「少しはやる気になってくれたか?」
「ええ、まあね」
ハートは笑った。
「そうか! だったら良かった。もう二度と俺に口を開かせないでくれ。これ以上穢れたくない!」
叫び、そして戦闘が再開された。
ステラはこれで殺意を宿してはいても憎しみは宿していない。
ハートの嘘に気付いているからだ。
この腕がメリーの物である事は間違いないだろう。
だけど同時に偽物である。
怒らせる為にわざわざ作ったのだろう。
それに気づいているからこそ、ステラは本気で戦うしかなかった。
このメリーの腕の偽物は、それが実行できるという証明であり、そして次は本気でメリーの腕を奪うという忠告であるからだ。
卑怯者になりたくない。
そのハートの言葉に、嘘はなかった。
やり辛い。
相手の真っすぐさが、正直さが刃を鈍らせる。
そう思いながら、ステラは剣を振る。
防ぐのが精一杯で、ハートの体に刃をまだ通せない。
だがそれももう時間の問題であった。
相手の拳を剣で弾き、斬る事数度。
ハートの半透明な赤い肌に、一閃の傷が生じた。
「ふ……ふふ。流石だ! 流石はステラ! 君ならいつか出来ると信じていた!」
ハートは一旦距離を取り、そうして赤く半透明であった状態から通常の肉を持つ体にシフトした。
「一方的な無敵モードなんて退屈だからな! これで良い! やっとだ! やっと俺は……俺は生を実感出来る!」
狂気にも等しい笑みを浮かべながら、ハートはステラに迫って来た。
「随分人間染みて来たね」
「らしくなったと言って貰いたい!」
「そうね」
会話を区切り、一閃。
不可視の刃がハートの左腕を切断する。
それに怯む事もなく、ハートは跳び、かかと落としをステラに叩き込だ。
一歩下がって躱し、距離を取るステラ。
その隙にハートは落ちた左腕を拾い、接続しなおして左腕で殴りかかって来た。
ステラの強さには限界がある。
それはステラの目指した極地が『戦う力』ではなく『現象』であるからだ。
宗麟は刀である事が極地であった。
それは戦う為に造られた道具であり、その為に己を使う事に抵抗はない。
故に、磨かれる強さに際限はない。
一方ステラは、宗麟以上に斬るという事に特化している為、戦う事から既に外れている。
雨が酷くなったら雷が落ちる。
天気が続くと植物は枯れる。
そういった起きる事が当たり前の事象。
あまりにも純度が高すぎた故の弊害である。
つまり、純粋たる『斬撃の概念』は戦う為の道具から逸脱してしまっているのだ。
今はまだ通用する。
だがそれは今だけであり、これから周りが成長すれば追い付かれるだろう。
そしてアリスがクロスの想像通りの存在なら、アリスには既に通用しないはずだ。
通用しないどころか、自分が死ねば連座でクロスも死ぬから単なる足枷である。
わかりやすく言えば、少し前のハートと一緒なのだ。
見えない斬撃であっても予兆さえ見逃さなければ避ける事は叶う。
戦う為の極地でないから、その程度の事でしかない。
通用しなくなる、追いつかれる、追い抜かれる、置いて行かれる。
それはもうほぼ確実である。
極地である斬撃を極め成長する事は出来る。
そうして起きるのは、たぶん剣がなくとも物が斬れるとかもっと遠くまで斬撃が飛ぶとか、そういう類の事。
破壊力は上がるだろうが、直接戦力を上昇される様な事は期待出来ない。
だが、それでは困るのだ。
後はもうどうでも良い。
未来周りに追い抜かれて弱者となる事に抵抗なんてない。
未来ではなく今。
今、力が必要なのだ。
クロスを助ける為に、クロスを死なせない為に。
だからこそ……その為の方法を考えていた。
どうすればこの極地の斬撃を最大限生かせるのか。
どうすれば……強くなれるのか。
かつてクロスが苦しんだ様に、才能の壁に躓いた。
道なき強さを求める苦悩を叩きつけられた。
そうして悩んで悩んで考え続けて……ステラは、原点に到達する。
それはクロスや宗麟とステラの大きな違いと言えるだろう。
戦闘中、テンションが上がりまくっているハートと異なりステラのテンションはどんどん冷え込んでいく。
ただただ罪悪感に募らされていた。
「どうした! 俺に勝つのではないのか!? 剣に迷いが見える、揺らぎが見える、殺意も消えた! どうした!? 何がしたいんだ!? 俺を黙らせるのではないのか!」
叫ぶハートにも反応を示さない。
そうして高まり切った罪悪感が、口から零れた。
「ごめんね」
その言葉と共に、ステラはこれまでと動きを変え、拳を剣で軽く払って流した。
そのまま動きを止めず、ハートの懐にまでもぐりこむ。
そうしてすぐ傍のパンチさえ安易に出せない距離で、互いに最も苦手な距離で、ステラは拳銃を取り出した。
「……あ?」
それはハートにとって、想像さえしていない事だった。
いや、ステラ以外の誰も想像していないだろう。
これを用意したラグナ以外は。
メルクリウスの血液を多量に流用した龍血火薬と圧縮された特殊魔導金属による特注の大型魔物殲滅特化弾。
これでもかと予算度外視で書きこまれた儀礼術式の入ったバレル。
使用者の魔力を許される限り吸い込む吸血鬼の様な銃本体。
極大口径礼装拳銃『猟犬』。
その外見は狂気じみた程おぞましく、それでいて禍々しい。
無骨という言葉に殺意を着飾った様なあまりにも重厚過ぎるその外見は、とても女子供が持って良い物ではない。
一目で『相手を壊し殺す為の道具』であるとわかる。
粋がったチンピラだってこれを見れば一瞬で泣いて逃げ出すだろう。
これが、クロスや宗麟とステラの明確な違い。
ステラは別に、剣に拘りはない。
何なら強くなる事にだって大した拘りもない。
ただ、勝てれば良かった。
「ごめんね。ちゃんと戦ってあげられなくて」
我慢出来ず、呟く。
今にも泣きそうな顔にまでなっていた。
対してハートは優しく微笑を浮かべていた。
それに撃たれたらどうなるかわからない。
だが、彼女が確信している以上結果はきっと……。
敗因はシンプル。
彼女には剣しかないと思い込んで、透明化を解除した事。
ただ、それがなくてもハートは最初から、彼女に勝てるとは思っていない。
負ける公算が高かったから、ハートは誇りに拘った。
「誇れ、勝者。お前は俺に勝った。仲間を護ったのだ。だから誇れ。それが勝者の責任だ」
「ええ、誇りを持って、貴方を滅ぼすわ。ハート」
「――ありがとう。それで良い」
引き金は、その外見と見合わず恐ろしく軽かった。
マズルフラッシュが炸裂し、あまりにも激し過ぎる轟音にてステラの鼓膜が一時的に機能を失った。
ついでに言えば握っているはずの右腕に握っているという感覚は消えた。
何なら肩とか肘とかめちゃくちゃ痛い。
更に言えば貧血に近い立ち眩みを覚えている。
念の為最大火力でぶっ放した事が原因だろう。
それでも……。
ステラは先程ハートが居た場所を見る。
そこには姿形が全く見えない。
周辺の地面事、総て抉り消滅させていた。
それと同時に、周囲全方向の遠近から赤い煙が立ち込める。
ハートの消滅による、アラミタマ現界不能となった証の煙が。
直感がなくとも理解出来た。
自分が勝ったと……いや、生き残ったと。
正直、全く勝った気がしなかった。
特にその人間性が。
自分はあそこまで人間でいられているだろうか。
そう、ステラは悩まずにはいられなかった。
「あっさり終わっちゃいましたね、アリス」
覗き見していたクィエルの言葉にアリスも困った顔で頷いた。
「そうね。もうちょっと粘ってくれると思ったけど。まあ、最低限の仕事はしたわね」
「最低限の仕事と言いますと?」
「最初から様子見って言ってるじゃない。相手の戦力分析よ。ついでに多少の手傷と負荷は与えられた」
「じゃあ、成功ですか?」
「んー……六十点って感じ? ……これはこれでちょいと味気ないわね」
「じゃあ、どうするんです?」
「そうね。せっかく全員揃って弱ってくれてるわけだし、もう少し様子見続行しましょう」
「じゃあVOID送ります?」
「いや、ここは私に任せて頂戴」
「アリスが仕掛けるんですか?」
「ええ、まあね。当然あっちに行く訳じゃないけど」
アリスは右手を上げ、静かに魔法を詠唱する。
普段のアリスは詠唱なんかほとんどしない。
その必要性がないからだ。
更に言うなら魔法発動の補助を目的とした祭壇化も終わっているからこの場所に居れば無詠唱でもよほどの事が出来る。
その状態で長期の、それも集中詠唱というのは中々に見る事もない物だった。
「何をするのか教えて貰っても?」
クィエルの言葉を無視し、詠唱を続ける。
普段吐血している病弱とは思えない程早い。
機械の耳であるクィエルでさえ聞き取る事が困難な程であった。
尚詠唱速度は向上し、気づけば同時に三つの詠唱を重ねていた。
「まるで口が三つあるみたいですね。どうやってるんです?」
一瞬睨んだ後、無視し続行。
そうして大体二十秒位だろうか。
アリスが詠唱終わった瞬間だった。
画面向こうのクロス達が映る空。
そこにあり得ない程巨大な……周辺地域一体全てを飲み込む巨大な魔法陣が浮かび上がる。
そしてその魔法陣の中から、魔法陣とほぼ同サイズの隕石が顕現された。
クロス達が見上げてすぐの傍、天使達が飛んでいた位の低い空に唐突に現われ堕ちて来る超巨大質量の隕石。
最悪の奇襲だった。
「どう、ちょっとは面白そうでしょ?」
何でもない事の様にそう言って、アリスは嗤ってみせた。
ありがとうございました。




