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追放されなかった男~二度目の人生は土下座から始まりました~  作者: あらまき
新天地を生きる二度目の男

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ドラウプニルの腕輪


 はじまってすぐ、格が違う事を理解した。

 長距離走なのに開始十秒で背中が見えなくなったのだから違うとかそういう話ではない。

 足に自信がある獣人クラスすらも軽々と追い抜き、そしてそのまま何時まで立っても順位が落ちてこなかったのだから、勝てる訳がない。

 それがわかっていても、イラは全力で走った。


 いつもは手を抜きそこそこでしか走らないにもかかわらず、今日だけは、精魂尽きるつもりで。

 らしくないとわかりながらも、振り絞ってみた。

 それでも、その背を見る事は出来なかった。

 それは、わかり切った結果でしかなかった。


 だが、それでも……。


「ああもう! めっちゃ悔しいですわ!」

 汗だくで起き上がる事も出来ず、顔をフェイスタオルで覆い床の上で倒れながらイラはそう叫んだ。

「……なんでそんなに頑張ったの? 貴女らしくない」

 上からの呆れ声。

 それはイラにとってそこそこ聞き覚えのある声だった。

「その声は、アンジェさんですか。貴女が私に話しかけてきたのなんて久しぶりですわね」

「私の方が可愛いって証明出来ましたからね」

「そうね。貴女とっても可愛いわよ。食べちゃいたい位」

「……それはどういう意味――って、やっぱ言わなくても良いわ。そんな状態なのに変わらないのね貴女は」

「それが私ですもの。……それで、本題は何?」

 イラの言葉にアンジェはしばらく沈黙した。

 親しくない訳ではないが、用事がなければ話さない様な仲。

 そんな仲のアンジェが話しかけて来たという事は、そういう用事があるという事に他ならない。

「……とりあえず、貴女が起きられる様になるまでは待つわ。シャワーを浴びるなら急いだ方が良いけどどうします?」

「普段ならそうしたいところですが……この後は戦闘訓練ですしまあ良いでしょう。ギリギリまで体力回復したいですし」

「でしょうね。とりあえず水でも持ってきますからしばらく倒れていなさい」

 アンジェはそう言い残しとてとてと早足でどこかに向かった。

「……あのご自分が世界一可愛いとおっしゃるアンジェさんが、可愛い以外に何もしないと豪語するアンジェさんが私の為にお水を? ……これは何か、面倒な話が来そうですわねぇ……」

 そんな事を考えイラは憂鬱になりながらも出来るだけ早く息を整える様深呼吸をした。




 白いラウンドテーブルで向かい合い、イラはグラスに注がれた冷たい水を一気に飲みグラスをどんと机に叩く様置いた。

「ご馳走様ですわ! それで、要件は何ですの? 早くおっしゃって下さいまし。私嫌いな物は先に食べる主義ですのよ」

「イラさん。態度や仕草がおっさんっぽいですわよ」

「はいはい。それで、私は色事以外で待つのは嫌な性質なんですけれど」

「えぇ。その……ですね……エリー様あ、いえ、エリーさんの事なんですけど……」

 おずおずと、どう切り出そうか悩みながらアンジェはそう言葉にする。

 その言葉の先を聞く前に、イラは手を前に出し拒絶を見せた。

「ストップですわ。エリーさんの過去の事なら何も聞きませんし知るつもりもありません。こんな時期の転入ですもの。話したくない事もあるでしょう」

「あ、そういう事ではありませんわ」

 アンジェからの予想外の返答にイラは首を傾げた。

「あれ? そういう話ではありませんの? 過去に色々あったから用心しなさいとか的な。何か知ってそうな雰囲気だったのでてっきり陰口の類かと……」

「違います。私そういう裏でコソコソするの嫌いですし。というか、あの方の過去について一切詮索するつもりはありません。むしろ私は、詮索すべきでないと声を大にしながら釘を差したい位です」

「まあ、そうですわよね。貴女が可愛い勝負を諦める位ですものね」

「諦めてはいませんよ? どこかそれ相応のイベントの時にそっと静かに迷惑にならない程度に勝負を申し込むつもりですわ。何なら新聞で人気調査でも構いませんし。ただ迷惑にならない様にしようと考えただけで」

「……諦めないのも凄いですが、そのやり方であのエリーさんに勝てると思う貴女の自意識過剰も凄いですわね」

「まあ、それが私ですもの。というわけでそういう事ではなくてですね……。その……きっと大変でしょうから気にかけて欲しいなと」

「はい? どういう事ですの?」

「私はクラスメイトではないですが、それでも同族として気にしてはいるんですの。ですから……」

「ちょっと待って下さいまし。アンジェさん。はっきり言いますよ? あの持久走の結果で考えまして、エリーさんは私達よりも遥か格上のお方ですわ。それはわかりますよね?」

「ええ。もちろん」

「そんな私達が気に掛けるって、どういう事ですの?」

「……イラさんは、初等部からいらっしゃいましたよね?」

「ええ。そうですが……」

「では、初等部で私がどう呼ばれていたか覚えていらっしゃいますか?」

 アンジェの質問に、イラは言葉に詰まった。


 幼かったから。

 そんな言葉が許されない程には、初等部時代のアンジェは苦しんだ。

 その位は、イラは知っている。

 知った上で、その時は気にもしなかった。

 幼さ故の無知。

 それでも、それが許されない事だとわかっている。

 だからこそ、イラは何も言葉に出来なかった。


「やっぱり、覚えていらっしゃいますね。その理由とか、ご存知ですか?」

「……いえ。ただ、アンジェさんが酷く見下されていた事しか……」

「それだけ覚えて頂けたら十分です。……確かに、エリーさんは私達と比べ桁外れに強いですわ。ですが、例えそうだとしても、この学園においてその力は発揮出来ません。少なくとも、しばらくは……」

 そう言葉にし、アンジェはイラにエリーの不安な部分を、自分の過去と照らし合わせながら伝えた。




 そこはある種幻想的とさえ感じる程に不思議な光景だった。

 広い部屋に六つのステージがあり、そのステージを周囲や二階から観察できるようになっている。

 そしてその六つのステージ、戦闘訓練用のエリアは正方形の透明な何かに覆われていた。

 ガラスとも異なる、透明な何か。

 その透明な何かの中で少女達は各々武器を持ち、生徒同士で踊る様戦う。


 剣に槍に斧に魔法銃に。

 全く異なる武器でありながらも、それらのデザインにはどこか統一感が見られた。

 その戦闘はお互い傷が付く事もなく、また正方形状に区切られた空間から外に弾丸や魔力が出る事もなかった。


「説明の時間が足りなかった為急な事となりますが、今よりこれについてお伝えしたいと思います」

 フレイヤはその言葉と共に、身に着ける金色の腕輪をエリーに見せた。


 見慣れぬ文字らしき模様が刻み込まれた金色の腕輪。

 それはここにいるエリー以外の全員が身に着けていた。


「ここでは魔力の使用は厳禁だと話したのは覚えていますか?」

 エリーは頷いた。

「はい。長距離走の前辺りに」

「その理由は何だと思いますか?」

「理由……ですか? 防犯の為です? それとも他生徒を怪我させない様にとか。または肉体を鍛える為に」

「いえ。魔力使用はあらゆる場面で禁止です。例え戦闘中であっても……」

「え? でも……」

 そう言葉にし、エリーは六つの戦闘エリアに目を向ける。

 狭いエリア内で空を駆けたり魔法銃を放ったりと、明らかに魔力を行使して戦闘をしていた。


「私達が魔力を使う事が禁じられた理由は未来予知の為です。未来予知は不確定な現象が増えれば増える程精度が下がりますので。それは私達イディス内にいる魔物の魔力使用も例外ではありません。私達はイディスの未来予知を行う方々の守護者。その私達が未来予知の足を引っ張る事など許される訳がありませんわね」

 その言葉の直後、フレイヤはその腕輪を光らせ、形状を変槍に変化させた。

「唯一の例外がハイロウ――正式名称ドラウプニルの腕輪。これだけです」

 フレイヤは槍を器用にくるくると体の周りを回し、形状を剣に変化させ、そして腕輪に戻した。

「色々な武器になるんですね」

「はい。エリーさんの分もありますが……渡す前にもう少し詳しく説明しますわね」

 フレイヤの言葉にエリーは頷いた。




 魔法の使用や魔物独自の能力使用は行う毎に未来を不確定な物に変えていく。

 それは基本的に、未来予知の難易度をあげるだけの行為に他ならない。


 だからこそ、未来予知に影響を与えない戦う手段がヴァルキュリアには必要だった。

 その為用意されたのが、このドラウプニルの腕輪。

 アシューニヤ女学園の生徒達が光輪(ハイロウ)と呼ぶこの腕輪にだけ、ヴァルキュリア並びに見習いは魔力を流す事が許されている。


 この腕輪は事前にイディスの未来予知計算に組み込まれている為、どれだけ使おうとも未来予知に影響を与える事はない。


 このハイロウ自体の能力は実はそこまで高くない。

 剣や槍等近接武器は当然魔法銃であっても普通に買える代物より少しマシ程度。

 つまり腕輪が凄く強い武器なのかと言えば全然そんな事はなく、むしろ同価格帯と比べるなら各段に弱い武具に入る。

 かなり高価な代物であるこれを使う位なら、自分にあった剣なり銃なり買った方が確実に戦力になる。


 それでも、ヴァルキュリアはこの武具を使わなければならない。

 少なくとも、このイディスの敷地内では。


 そんな高価低性能なハイロウであっても、未来予知に変動を与えない以外にもちゃんとしたメリットは存在する。


 一つは自由な形状に変化させられる事。

 先程フレイヤが行った様に剣から槍、銃、盾など戦況に応じ自在に変化させられる。

 技量と訓練次第では剣の刀身から別の剣を生やしたり空中に盾を設置したりと本来あり得ない様な戦術も可能となってくる。

 そこまで行けば奇襲用の武器としてみれば破格の性能だろう。

 腕輪一つあれば全ての武器が使え、あらゆる場面で通用すると考えるならこの性能でも値段相応と言っても良い。


 続いて、他武器種と比べ自分に合わせた調整が容易い事。

 腕輪形状でのチューニングにより近接に特化させたり銃に特化させたり、硬度に特化させたり軽量化させたり何なら変形形態を一種に絞ったりと自身の戦闘スタイルに合わせ変更出来る。

 とは言え、ある程度以上の調整には工作知識や技術が必要となるが。


 そして最後のメリット。

 それは、規格性。

 可変というギミックにより武器種は無限に等しい程広く、戦略、戦術の幅を狭めない。

 その状態であるにもかかわらず、武器はしっかりと規格が取れており全員がほぼ対等な条件で訓練を行える。

 多少の差はあれど一年生と五年生でも武器による差は極小に等しい。

 腕輪が起動さえできるなら、魔力の大小による戦力差すらほとんどない。

 誰であれ武器の差は気にならず、知恵と努力、技術だけで上を目指せるという事だ。


 それは学園という箱庭での訓練において非常に強力なメリットとなっている。

 だからこそ、走る事の重要性を見いだせない様な甘えの混じった生徒であっても、実験形式の訓練の練度だけなら十二分な物となっていた。




「大体こんな感じです。本来なら腕輪が使用出来る魔力があるのかテストもするのですが……エリーさんには必要ないですよね?」

 フレイヤの言葉にエリーは頷いた。

 精霊である身で魔力が足りないなんて事になれば世の大半の魔物がその武器を使えない。

 そんな事ある訳がなかった。


「では、どうぞ」

 そう言って、フレイヤはドラウプニルの腕輪をエリーに手渡す。

 ずりしと来る金属の重み。

 それなのに、金属特有の冷たさはなくむしろ熱い位に熱を帯びている。

 そして刻まれた文字は、チカチカと発光する様輝いていた。

 その腕輪を手を突っ込むと、エリーの腕に自動的に腕輪は固定された。


 大きさが変化したという訳ではないはずなのに腕にぴったりと吸いつく様くっつき、そして同時に重さは一切感じなくなった。


「えと、これで良いです?」

「はい。大丈夫ですよ」

「それで、使い方はどうすれば?」

「今回はプリセットした武器が起動出来る様準備してますので簡単ですよ?」

「プリ、セット?」

「事前に決まった武器が出る様になってますので魔力を通せば大丈夫です」

 エリーはその言葉に頷き、若干の緊張と期待を込め、腕輪に魔力を流してみる。


 直後、腕輪は強い輝きを示しその形状を細長い棒状に変化させる。


「お……おおー。……おお?」

 エリーはちょっと予想と違う形状に、そっと首を傾げた。

 確かに、形は変わった。

 だが、やけに曲がって持ちにくい持ち手。

 かろうじて剣には見えるだどちらかと言えば棍棒に近い形状の刀身。

 デザインはどんな武器種でもある一定の規格性があり、そこそこ美しい姿であるはずなのに、明らかにおかしい程の不格好さ。

 はっきり言って周囲から完全に浮いていた。


「……あ、あれ?」

 それはどうやらフレイヤにとっても予想外な事だったらしく、少し困った顔で首を傾げた。

「すいませんエリーさん。ちょっと調べてみますので一旦腕輪に戻してもらっても良いですか?」

 エリーは頷き腕輪に戻し、腕輪を外しフレイヤに手渡す。

 フレイヤはそれを触り、いじり、起動する。


 それは確かに、きちんとした細身の剣に変化していた。

 金を中心とした、まるで金属製の工芸品かと思える位の美しい剣。

 それを振るうだけで舞踏の様にさえ感じる程、綺麗だった。


 再度手渡されたエリーはそれを起動してみるが……今度はさっきよりもひどく、刀身がぐにゃぐにゃと軟体動物の様になってしまっていた。

 当然、綺麗さなんて欠片もない。

 これを持ってダンスをすれば間違いなく頭を疑われる。

 同じ曲がった物ならバナナでも持って踊った方がまだマシだろう。


「……あれ?」

「あれ?」

 エリーもフレイヤもその現象に理解が出来ず、揃って首を傾げた。


 プリセットされた武器を出すのなんて魔力を流すだけで良い。

 躓くポイントでもなく、ここで困ったなんてフレイヤは聞いた事さえない。

 そんな誰でも出来る事が出来ないなんてのは、フレイヤとしても完全に想定外の事態だった。


「……やっぱり、そうなりましたか……」

 その様子を見て、赤い髪の少女は残念そうに呟いた。

「もしかしてイラさん。こうなった理由をご存知なのですか?」

「ええ。知っていますわフレイヤさん。……まあ、正確に言えば、聞いたと言った方が正しいのですが……」

「一体どなたから?」

「アンジェさんから。心配しておられた様ですので」

「アンジェリアさんが知っているという事は……精霊という種族に何かあるという事ですか?」

「ええ。アンジェさんも同じ様困ったそうです」

「では、対処方法があるという事ですわね。今アンジェさんはそういう事に困っているどころか一年生トップに君臨していらっしゃるのですから」

 そうフレイヤは安堵を混ぜた表情で言葉にする。

 だが、イラの表情にはその反対で陰りが強く含まれていた。


「……エリーさん。良く聞いて下さい。ハイロウは優れた武器であるとは言えませんが、非常に良く出来た武器である事は確かです。それこそ、女性であれば誰でも使えるでしょう。多少魔力があればそれこそ人間でも。ですがそんな武器でも……精霊に向いているとは言えないんです」

 イラはそのまま、アンジェに聞いた情報を口頭で伝える。


 誰でも出来る事がエリーに出来ない理由。

 ハイロウを扱うにおいて不都合となる精霊特有の要素が、二点存在する。


 一点は、精霊という種族は魔法を扱う事が出来ない事。

 魔力を直接行使する事が出来る特性の代わりに精霊は魔法を生成、行使する事が出来ない。


 例えるなら、肉体を使うのは誰よりも得意だが道具を使うのが不器用なのが精霊。

 そして、ハイロウはその道具側に位置する。


 もう一つは、その魔力に起因する。 

 魔力が少ないという訳ではない。

 むしろその逆。


 精霊は魔物種族の中でもトップクラスに魔力が多く、その上肉体の大半が魔力で構成されている。

 つまりどういう事かと言えば、ハイロウに必要な微弱な魔力のコントロールが、精霊には不可能であるという事だった。


「えっと、つまり、どういう事でしょうかイラさん」

 理解が追い付かないエリーはそう単純に尋ねた。

「ぶっちゃけますと、魔力の流しすぎですわ。プリセットの形状を維持する事が不可能な位に……」

「だったら魔力を少量だけ流せば良いのですか?」

「その通りですが……エリーさん出来ます? 今でも魔力を大量に流すという意識すらせずにそれだけの魔力が流れていますのに」

 とりあえずでエリーは試してみたが……上手くいかない。


 自分では最低量を流しているつもりでも、その魔力量は膨大であり結局剣が不格好な棍棒の様になるのが関の山だった。


「……イラさん。アンジェさんが知っていたという事は、アンジェさんも今のエリーさんと同じだったという事ですよね?」

「ええ。そうですわね」

「では、対処方法があるという事ですよね? 専属のチューナーを用意するのですか? それとも教師に特別性を注文するとか……」

「いいえ。もっと単純ですわ。初等部もこの学園にいた生徒なら一度は聞いた事があると思いますわ。『無能のアンジェリア』という言葉は」

 そんなイラの言葉を聞き、訓練をせず盗み聞きしていた数名のクラスメイトがびくっとし気まずそうに顔を反らした。

「……すみません。中等部から入ったので私は何とも……」

 フレイヤは申し訳なさそうにそう呟いた。

「要するに、アンジェさんは死に物狂いで努力しただけですわ。初等部の間、様々な方に散々貶され、蔑ろにされ酷い目に合いながらもずっとずっと」

「じゃあ努力で何とか――」

 フレイヤの言葉を遮る様、イラは声を荒げた。

「ええそうですわね! ゲヘナの如き苦痛を味わったアンジェさんが三年ずっと努力し続けてようやくというレベルの努力を、簡単な言葉にして良いのなら努力で何とかなると言っても良いでしょうね!」

「……すみませんイラさん。言葉が悪かったですね。決して簡単だと言うつもりでは……」

「ええ。フレイヤさんが生真面目で面倒見が良い事はわかっています。その上で、エリーさんはその想定以上に苦しむという事をご理解下さい。幼少時のアンジェさんと比べ、年齢的にも能力的にもエリーさんは優れているそうですから」


 それは、決して誉め言葉ではない。

 精霊として優れているという事は、尚ハイロウと相性が悪いという事になるのだから。


「結局のところ、私は凄く頑張らないといけない……という事ですよね」

 エリーの言葉にイラは頷く。

 誰でも出来る事を死に物狂いでしなければならないなんて状況であっても、結局のところそれだけ。

 何度も繰り返し自分で理解するしか意味がない。

 そうしなければいけなかった。




 それから三時間。

 授業の終わりまでエリーはフレイヤとイラとの協力の下腕輪が扱えないか延々と試してみるが何一つ進歩は見えず、一度たりとも模擬戦を行わず時間だけがただ過ぎ去った。


ありがとうございました。

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