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第21話(改稿前 前後に矛盾があります)

 花音との通話を終えた後、俺は何かが気になっていた。ただ、何が気になるのかよく分からなかった。


 迷った結果、奏美に聞くことにした。


 俺の部屋と奏美の部屋は隣同士で、向かいに扉がある。


 その扉に向かって俺は言った。


 「奏美、入るぞ」


 「え、お兄ちゃん? 何?」


 ガチャ。


 扉を開く。


 奏美はスマホを持ってベッドに寝転んでいた。


 奏美の部屋は女子中学生らしく、ピンクっぽい何かで覆われているような感じだった。


 壁紙もかわいい色をしているし、アイドル? か何かの写真も貼ってある。ベッドには大きなぬいぐるみもあった。


 休みの日にはよく同級生が遊びに来ているみたいだった。みんな奏美と同じ陽キャな感じの女子で、楽しそうな笑い声が俺の部屋まで聞こえてきた。


 そういう時俺は、イヤホンをつけて音楽を流し、なるべく遭遇しないよう部屋にこもってたけど。


 奏美はベッドから起き上がり、少し怒っている様子だった。


 「ちょっとお兄ちゃん! 部屋に入るときはノックしてって言ったじゃん。キモ」


 「キモとか言うなよ。ちょっと、お前に聞きたいことがあってさ」


 俺がそう言うと、奏美は少し興味がありそうな目をした。


 「私に聞きたい? お兄ちゃんが? 何?」


 語尾がちょっとだけ嬉しそうだ。


 「あのさ、友達に明日花岡中央駅に行こうって言われたんだけど」


 そう言うと、奏美は露骨に態度を翻した。


 「え、相談ってたったそれだけ? 行ってくればいいじゃん。じゃあね」


 と言って扉を閉めようとする。俺は慌てて押し戻した。


 「何? 話終わったよね?」


 奏美は明らかに不服そうだった。仕方ない、話すか。


 「それがだな、相手が女子なんだよ。行かないかって誘われて、行くことになったんだ」


 言った瞬間、それまで興味がいないという感じだった奏美の目がぱっと光りだした。


 「え、女の子と? マジで?」


 そう言うと、奏美は扉を開けた。


 「それ早く言ってよ! え、ちょっと待って。まさか、夢乃先輩じゃないよね?」


 奏美の目はキラキラ輝いている。期待に添えなくてごめんな、妹よ。


 「いや、夢乃なわけないって。花音っていう部活が同じ子なんだけど」


 「まーそうだよね。夢乃先輩ってお兄ちゃんと仲いいってだけで、デートなんてするわけないからね。で、花音さんってどんな人なの? 写真とかない?」


 いや、花音ともただ出かけるだけなんだけど。ていうか、やたら食いついてくるな、奏美の奴。


 仕方ない、あの写真を見せるか。


 「これ見て。この間友達と集まった時の写真。俺の手前にいるのが花音って子だ」


 俺は、第1回のしんいち会で集まった時、愛瑠が撮った集合写真を見せた。


 花中ジャイファルの店内で、左の手前から颯人、愛瑠、彼方、右の手前から花音、俺、そして夢乃だ。愛瑠は颯人の後ろに思いっきり体を出して手を伸ばしていて、颯人は嬉しそうな顔をしている。


 見た瞬間、奏美の目が信じられないくらい大きく見開いていく。


 「ええーー!!」


 「うわ、声でかいよおい」


 「これがお兄ちゃんの友達? ウソだよね? お兄ちゃん以外の男子はイケメンで、女子はかわいい子ばっかじゃん。お兄ちゃんちょっとこれどういうこと?」


 奏美は俺以外のメンツの見た目に驚いている。でも、普通に友達なんだからしょうがないよな。


 「どういうことって、普通に友達だけど。一応俺がこのグループのリーダーで、『しんいち会』って言うんだぞ。勝手に名前つけられて、勝手にリーダーにされただけだけどな」


 俺がそう言うと、奏美は更に目を見開いて、床に膝をついた。


 「……ねえ、お兄ちゃん大丈夫? なんか、悪いことしてないよね? じゃなきゃ、陰キャのお兄ちゃんがこんなキラキラした高校生活送れるわけないし……」


 何てこと言うんだ、この妹は。


 「失礼だな。別に俺は陰キャのままだけど。普通にクラスとか部活で仲良くなって、たまたま全員俺の友達ってだけだから。俺を通してみんな仲良くなったんだよな」


 「信じらんない……。お兄ちゃんがちょっとだけすごく見えたかも」


 「ちょっとだけって何だよ。で、相談に戻るんだけど、明日この花音と出かけるんだ。俺、女子と出かけたことなんてないから、どうすればいいか分かんなくってさ。何か気をつけた方がいいこととかあるか?」


 奏美は彼氏はいないはずだけど、こういうことについては兄の俺よりはるかに詳しいはずだった。


 「え、花音さんって、このかわいい人とお兄ちゃんが出かけるの? しかも、花音さんから誘われたって、それデートでしょ」


 はあ?


 「デート? デートな訳ないだろ。別に付き合ってないんだし」


 「付き合ってなくても、男女で出かけたらデートなの。デートなら~」


 そこから、奏美のホントかウソか分からない怒濤のレクチャーが始まった。

 




 次の朝、俺は西園寺駅のホームにいた。


 日曜日はハナコーは部活動がほぼ休みのため、学校に行く人の姿はほとんどない。いるのは勉強をしに行く制服姿の3年生くらいだ。


 俺は、奏美に「とにかく清潔感!」と言われ、自分なりに清潔感のありそうな服(といっても、Tシャツにズボンだけど)を選んだ。


 バッグはいつも学校に持って行くものと同じだ。と言うのも、花音が「勉強したい」と言っていたからだ。でも、花岡中央駅のどこで勉強するんだろうか。


 いつもどおり3分ほど電車に揺られると、ひむか市駅に着いた。


 ドアが開くと、花音が入ってくる。


 まただ。また、私服の花音が入ってきた瞬間、電車の中で感じるはずのない、爽やかな夏の風が吹いた気がした。


 花音は、薄黄色の足首近くまである長いワンピースを来ていた。上着には水色のシャツを羽織っていて、ワンピースの下にはボーダーのシャツが見える。肩には薄いバッグがかかっていて、かわいいサンダルと帽子が夏を演出していた。


 清潔感って、こういうことなのか。


 「おはよ」


 花音は、心なしか恥ずかしそうに声をかけながら近づいてくる。


 「お、おはよ」


 俺は、右手を小さく挙げて手を振る。


 「今日は、花岡中央駅のどこに行くの?」


 「うん、駅のそばのアンクローズってとこ。勉強できる図書館もあるし、本屋もあるし、スニバだってあるんだよ」


 花音は楽しそうに話す。


 どうしてだろう。


 話している花音を間近で見ると、なぜだか分からないけど、すごく緊張してきた。


 図書館に、本屋に、スニバ。女子と2人で?


 やっぱ、デートってやつなんだろうかこれ。


 そして、2人の長くて短い1日が始まった。

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