第15話(改稿前 前後に矛盾があります)
家に帰ると、俺は彼方と颯人に連絡をとった。
グループの男子LANEには既に2人のメッセージが書かれていた。
『HAYATO 今日マジで楽しかったな』
『空野彼方 ああ』
『HAYATO このグループかわいい子ばっかだしな』
『空野彼方 お前そればっかりだな でも楽しかったよ』
その後も、メッセージは続いていた。
2人とも、楽しんでくれたみたいで良かった。
だからこそ、2人にも花音のことを分かってもらわないといけなかった。
『慎一 今から3人で通話いいか?』
俺は、今日夢乃と2人で花音から話を聞いたこと、花音が泣きながら困っていたこと、それを俺たちでどうにかしたいことを話した。
「それマジかよ。神城の野郎、前から気に入らなかったけど、こんな最低な奴だったのか。ぜってー許せねぇ」
颯人は本当に許せないという様子だった。この正義感が強いのが颯人のいいところだよな。
「その先輩は知らなかったけど、許せないね。みんなで花音を助けよう。俺にできることなら何でもやるから」
彼方は落ち着いて話していたけど、明らかに怒っていることが伝わってくる。怒っている彼方をこれまでほとんど見たことがなかったから、それだけ許せないってことだろう。
「2人とも、ありがとう。花音が勇気を出して言ってくれたんだから、このことはグループ外には言わないでほしい。俺と颯人で、陸上部内の聞き取りをしよう。俺に考えがある。彼方は、夢乃と一緒に花音を見守ってくれないか」
「ああ」
「当然だろ」
2人とも、本当に頼もしい。グループができてからまだ数日なのに、みんな仲間のことを思ってくれている。名ばかりのリーダーな俺だけど、誇らしく思った。
「今、愛瑠が情報を集めてくれているはずだから、とりあえずはそれを待とう。夢乃は花音の話を聞いてくれている。みんなでこの問題を解決して、楽しい夏にしよう」
そう言って、通話を終えた。
さて、どうやろうか。大事なのは神城を懲らしめるとか、そういうことじゃない。花音に、陸上部に二度と近づかないようにすることだ。そのためには……。
考えていると颯人から通話が来る。きっと来るだろうと思っていた。
「なあ慎一、神城を別れさせるって言っても、どうやってやるんだ?」
「そうだな。例えば、部活のみんなの前で神城のラインの内容をばらせば別れはするだろうけど、それじゃあ花音が傷ついてしまう。花音がこれ以上傷つくのは絶対にダメだ」
そう、それだけは絶対に避けなきゃいけない。だからこそ、慎重に考える必要があった。
「確かに、お前の言うとおりだな。でも、じゃあどうやってやるんだ? 口で別れろって言うだけじゃ、あいつのことだからしらを切って逃げる可能性が高いぞ」
当然、それは想定していた。
うまくやる考えがなくはないけど、まだ話せる段階じゃないな。
「とりあえず、今日の夜夢乃と話してみるわ。あっちは花音と話してるだろうし。あとは、愛瑠の情報収集を待ってからかな。明日の部活までにはどうするか決めるから」
「わかった。そこはリーダーのお前に任せるから。俺は、陸上部内で後々うまくいくよう動いてみる」
颯人はリーダーシップがあり、陸上部内での信頼が厚い。颯人ならやってくれそうだ。
「ああ。頼んだぞ」
夜になって、俺は夢乃に電話をかけた。
普段なら絶対に自分から電話なんてしないけど、今は緊急時だ。そんなことは言ってられない。
「もしもし、慎一だけど」
「慎一? ちょっとびっくりした。それで、どんな話をしたの?」
俺は男子3人で話したことを夢乃に伝えた。
「そっか。みんな優しいね。みんなで、花音を守りたいね」
夢乃は、すこしほっとしたような口調だった。
「そっちはどうだった?」
夢乃は、花音の話を聞いていてくれたはずだ。
「うん。さっきまでいろいろ話してたんだけど、花音は少しは落ち着いたみたい。でも、嫌なメッセージがたくさん来てすごく怖いって。だから、とりあえずLANEはブロックするように言ったよ。土曜日に決着がつけばいいけど、最悪の場合は、親に相談して先生に言ってもらうって」
「そっか。ありがとうな夢乃。花音が少しでも安心できたのは、夢乃が話を聞いてくれたからだよ」
俺は素直な感謝の気持ちを告げた。
「ううん。そんなことないよ。花音が強いから、だよ」
夢乃の、少しだけ嬉しそうな声色が伝わってくる。
「ああ。でも、花音もできれば親や先生には相談はしたくはないはずだよな。心配かけるし」
「そうね。今回の件、あんまり多くの人に知られたくないんじゃないかな」
だったら、方法をちゃんと考えないとな。
しかも、1回でケリをつけないと。2度と、神城が花音に近づかないように。
「うん。ある程度、俺に考えがあるから、そこは俺と颯人に任せてほしい。あとは、愛瑠の情報待ちかな。愛瑠から情報をもらってから1番いい方法を考えるよ」
「そうね。陸上部のことだし、任せたから慎一。頼りにしてるよ、いつも」
こういうこと夢乃に言われると、つい勘違いしたくなってしまう。何かあるんじゃないか、って。
でも、こういうときこそ俺の友人Aスキルが試される時だよな。
「ほんとに、俺なんかを頼りにしてもいいわけ? でも、俺にやれることはやってみるから」
俺は少しだけ冗談を言った。夢乃を笑わせたかったし、「頼りにしている」と言われた恥ずかしさをごまかすためだ。
「ふふっ。分かった。またね」
「ああ。またな」
そう言って俺たちは通話を終えた。
花音は、夢乃が対応してくれるから土曜日までは大丈夫だろう。
あとは、愛瑠の情報だな。どんな情報が来るのか気になるけど、今は待つしかない。
そんなことを考えていた、俺は全く気がついていなかった。
「お兄ちゃん、今の通話相手って夢乃先輩? 嘘だよね?」
部屋のドアが少し開いていて、妹の奏美が目だけこっちに見せていたことに。
えっと、何やってんのお前? 怖いんだけど。
「おい、お前また人の通話盗み聞きしてんのかよ。趣味悪いって。夢乃と電話してたけど、何か悪いかよ」
俺の口から「夢乃」という単語を口したからか、奏美はうわーっという顔をして両手を口に当てた。
「え、まさか本当に夢乃先輩? しかも、今夢乃って呼び捨ててなかった? もしかして、お兄ちゃん夢乃先輩の弱みでも握ってるの? そうじゃなきゃ、お兄ちゃんが夢乃先輩と電話なんて……」
こいつ、こっちが黙っときゃ言いたい放題言いやがって。遠慮とか知らないのかよ。
「弱みとか握ってるわけねーだろ。普通に友達同士の電話だよ。最近いきなり部屋に入ってくること多いけど、なに、お前反抗期のフリして、ほんとはお兄ちゃんこと気になってんの?」
奏美、お前って反抗期の生意気盛りな妹じゃなかったのかよ。最近、なんか俺のこと気にしてて調子狂うんだけど。
奏美はすぐに整っている顔を嫌そうに歪ませた。
「うわー、マジでキモいんだけど。ただご飯だって言いにきただけなのに、お兄ちゃん自意識過剰ー。夢乃先輩から電話が来たぐらいで、すーぐ勘違いして好きになりそうだし」
いつもと違う低いトーンでそう言うと、奏美はバタンと思い切りドアを閉めてドタドタと1階へ降りていった。
どっちがキモいんだよ。人の電話を盗み聞きの方がどう考えてもやばいだろ。
まあ、夢乃と話してたことをこれ以上ツッコまれなくて良かったけど。
いや、電話したぐらいで勘違いなんてしてないけどな! 妹よ、俺の友人A力をなめんじゃねーぞ。




