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第14話(改稿)

 俺と夢乃、花音は花岡南駅までの自転車で、今日のオフ会のことを話していた。

 「ほんと、颯人ってわかりやすかったね。でも、なんか憎めないよね、ね慎一」

 夢乃が右側から、俺の顔を面白そうに見ている。何が言いたいんだ?

 「ちょっと、一緒にしないでくれよ。俺は、水着一緒に買いに行こうなんて言わないし思ってもないから」

 「へえ~。じゃあ、私が一緒に行こうって言ったらどうする?」

 ガクン!

 俺は思いっきりハンドル操作が乱れ、危うくこけそうになったのをなんとかこらえて元に戻した。

 ちょっと、やめてくれって。とんでもないこと言ってんな、夢乃。

 「あのさ夢乃、自転車の運転中になんてこと言うんだよ。こけそうになったんだけど」

 俺は言葉が尖らないよう、冗談めかして言った。

 夢乃はクスクスと笑っている。絶対面白がってるよな、これ。

 「愛瑠の相手でも精一杯なのに、夢乃まで小悪魔化したら俺の身が持たないって。勘弁してくれよ」

 「ふふふ。どうしようかな~?」

 「夢乃、それぐらいにしてあげたら?」

 花音が左側から優しい声でそう言う。あー花音様、天使だわ。

 「花音ってほんと慎一に優しいよね。やっぱり陸上部だから?」

 夢乃がそう言うと、一瞬花音の自転車がよろけた。運動能力の高い花音がよろけるって、一体どうしたんだ?

 「そ、そんなことないよ」

 え、何その反応。俺に気があるのかと一瞬思うじゃん。

 いや、ないって分かってるんだけどね。ただの友達だし。

 でも、ちょっとしたことで「自分に気があるのかも」って思っちゃうのが男子の性なんだよな。

 「そういうこと言って花音を困らせるなよ、夢乃」

 そんなことを言っている間に駅に着いた。

 電車の中では、今日あったことについて夢乃と花音が楽しそうに話している。

 「私、夢乃と話す前は緊張してて」

 「どうして?」

 「だって夢乃、ほんとにかわいいし、明るいし。私と話合うか気になってたんだ」

 「そうなんだ。私も花音と話すまでは、慎一からしか話を聞いてなかったから、もっとクールなのかなって思ってた。すごくかわいいよね、花音って」

 「……そういうこと言わないでよ~。うれしい、けど恥ずかしい」

 花音は顔を真っ赤にしている。

 何て言うか、陸上やっているときのりりしい花音と、こういう女の子っぽい花音はギャップがあって、いいよね、男子的に。

 「ちょっと慎一。何かだらしない顔してない? 花音かわいいな、とか思ってたんでしょ」

 何で分かるわけこの人? でも、決して認めるわけにはいかなかった。

 「え、は? だらしない顔って、ちょっと言い過ぎだろ」

 「でも、かわいいな、とかは思ってたんだ」

 だから、小悪魔ムーブはやめてくれよ、夢乃。なんて言っていいか分かんないだろ。

 花音はうつむいて顔を赤くしている。

 「ちょっと、花音が困ってるって」

 その時、電車がひむか市駅に着いた。

 「……そんなこと、ないよ。じゃあ、またね」

 恥ずかしそうに、だけど最後は爽やかな笑顔で、花音は電車を降りていった。

 「楽しそうだったね、花音。これからもっと仲良くなれそう」

 夢乃は本当にこれからが楽しみだ、という表情をしていた。

 「そうだな。俺も、みんなともっと仲良くなれそうだと思うよ」

 そのまま西園寺駅に着き、駅から出て自転車に乗った。

 通学してると、家から最寄り駅までの自転車と、花岡南駅から学校までの自転車で2つ必要なんだ。

 「じゃあ、慎一の家まで一緒に帰ろっか」

 夢乃の家は俺の家から少し北に行ったところにある、はずだ。当然行ったことないけど。

 って何言ってんの。そんなことしたら、そこら中から注目浴びちゃうでしょ。

 それに、家に奏美いたらヤバいことになるって。あいつ、何口走るか分かったもんじゃないからな。

 「い、いや、俺、ちょっと寄るとこあるから。じゃあ、また」

 「そっか。またね!」

 そのまま、俺たちは別々に家路についた。俺は寄るとこなんてあるはずなかったけど、とりあえず帰りたかった。

 必死でペダルをこぎながら思った。

 夢乃って、なんでそんな自然に帰ろうとか言えるんだ?

 俺のこと、なんとも思ってないってことか。そりゃそうだよな。

 でも、もしかしたらって、考えちゃうよな。

 うーん、いかん。俺は美少女達の友人Aだ。俺もみんなも、いい友達でいることを望んでるはずだ。

 せっかく6人で楽しくなりそうなのに、ここで間違ったら()()()の二の舞だ。思い出したくもないし、それだけは嫌だった。




 家に帰りつくと、俺は真っ直ぐに自分の部屋に向かった。


 途中、1階のソファ-から「お兄ちゃん今日何かあったの?」という奏美の声が聞こえてきたけど、俺は聞こえないふりをした。


 奏美に何か話しでもしたら、俺のことだからぼろを出して根掘り葉掘り聞かれそうだったからだ。


 俺は部屋に入って荷物を机の横に置き、ポケットからスマホを取り出した。


 今日のことを、男子だけで色々話したかったからだ。


 俺は右手でスマホの画面を操作して、彼方と颯人をグループラインに招待した。


 グループ名は迷った結果「男子」にした。我ながらネーミングセンスはない。分かってるけどなそんなこと。


 でも、自分で「しんいち会」とか恥ずかしくて無理だろ。


 ほとんど間を置かずに2人がグループに入ってくる。男子LANEにはすかさず2人のメッセージが映し出された。


 『HAYATO 招待ありがと 今日マジで楽しかったな』


 『空野彼方 ああ そうだな』


 『HAYATO かわいい子ばっかだしな』


 『空野彼方 颯人ってそればっかりだな でも楽しかったよ』


 2人とも、楽しんでくれたみたいで良かった。これからも楽しみだよな。


 俺は3人で通話したくなった。


 『慎一   今から3人で通話しないか?』


 『HAYATO  いいぜ!』


 『空野彼方 ちょうど話したかったんだよ』


 俺はグループ通話のボタンを押した。彼方と颯人が仲良くなってるのを感じて、グループの一員として嬉しかった。これから、もっともっと仲良くなろう。


 「プププ、プププ」という機械音が、今後の俺たちの関係を深めてくれる期待感を込めたリズムに聞こえていた。


 

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