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魅了魔法持ち王女は、女嫌いの皇帝に一途に溺愛される  作者: 青空一夏


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7 俯瞰視点

グラディス王国、王城の大会議室。

長大な楕円形のテーブルを取り囲むのは、宰相をはじめとする大臣たち、宮廷魔導士たち。

その中央の席で、国王は拳を固く握りしめていた。


だが、それは娘を案じるゆえではない。

胸に渦巻いていたのはどす黒い、どうしようもない喜びだった。


(……ついに来た。ようやく、あの母上の“影”を払える時が……)


アウレリア王女――王太后エレオノーラに生き写しの第一王女。

民も貴族も、未来の女王として讃えた王女だ。

その存在は、国王にとって “生涯消えぬ劣等感の象徴” だった。


しかし、アウレリアが“魅了魔法持ちの悪女”という忌まわしい存在に墜ちたとき、彼の胸に走ったのは、悲しみでも恐怖でもなく、歪んだ安堵だった。


(これで……もう比較されずに済む。もしかしたら、母上も魅了属性の魔法を持っていたのかもしれん。あの方はヴァルステラ帝国の皇女だったから、この国の魔力鑑定を受けたことはなかったが……)

 

しかし、その本心を悟らせぬよう、 国王は眉間に皺を寄せ、“苦悩する父親”の仮面をかぶった。


「……皆の者。魔力鑑定の結果、アウレリアに魅了魔法が確認された。これからどうすべきか、意見を述べよ」


 真っ先に立ったのは宰相だった。

「陛下。魅了魔法は数百年前、“王太子を巻き込み高位貴族の子息たちを破滅させた大事件”の象徴。それを王族が持つなど言語道断!あれは怪しげで破廉恥な魔法です」


「……まさか、アウレリア王女殿下にそんな魔法が使えるとは……」


「このまま野放しにすれば、必ず国が混乱いたしますぞ!やがて、多くの高位貴族の子息たちを魅了し、虜にし、この国を破滅させましょう!」


声が次々と恐怖に染まり、嫌悪が連鎖していく。


「「アウレリア王女殿下は、稀代の悪女の再来です! 

あれから数百年たった今、またあの忌まわしい魅了の災厄が訪れるぞ!」」


 国王は、それを目を細めて聞いていた。


(言え……もっと言え。私が娘を“隔離”しても正当化されるようにな)


王妃が立ち上がった。


「……陛下。アウレリアをこのまま王宮に置くのは危険です。誰にも害を及ぼさないよう、しかるべき場所へ幽閉すべきですわ」


そして、国王の耳元にだけ届く声で囁いた。

「……お義母様の亡霊に、一生縛られるおつもりですか?この際、人目のない場所に閉じ込めてしまいましょう。そうすれば、私たちは誰とも比較されずに済むのですわ」


会議室は静まり返った。国王の胸が大きく脈打つ。


(そうだ……そうだとも。アウレリアを“排除”すれば、私はようやく母上の影から解放される。だが、無情な父親と思われるわけにはいかん……)


国王は深く息を吸い、“父親として苦悩している声”を作って言った。


「……アウレリアはまだ十歳だ。私の娘だぞ……? 娘を閉じ込めるなど……」


宰相が即座に重ねた。

「陛下、慈悲深さは美徳ですが、国の危険は見過ごせません」


鑑定に関わった宮廷魔導士が、冷たい声で言葉を添えた。

「魔導書庫の記録にはこうあります。“魅了持ちの者は、存在するだけで人の心を惑わす”と」


貴族たちが一斉に叫んだ。

「ならば封印を!隔離を!」

「北の塔が良い!あそこなら人目にも触れぬ!」


会議室は混乱の渦に巻き込まれた。

王妃が静かに催促した。


「陛下……ご決断を」

 

そして国王は、胸の底に湧き上がる喜びを押し殺しながら、ゆっくりと頷いた。

「……アウレリアを北の塔に移す。外部との接触を禁じ、徹底監視とせよ。

これは王命である!」


その瞬間、貴族たちは安堵の息をつき、魔導士たちは賛同の意を表し、王妃はにっこりと微笑んだ。




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